政府出資事業と共同研究開発 医薬品機構出資事業のケーススタディ

医薬産業政策研究所 主席研究員 岡田羊祐
医薬産業政策研究所 主任研究員 櫛 貴仁

(No.16:2004年02月発行)

本稿では産業投資特別会計を通じた厚生労働省所管の「医薬品機構出資事業」について、その事業スキーム、組織形態、ガバナンス、共同研究のあり方が事業の成果や出資企業の研究開発に如何なる影響を与えたかを、独自に行ったアンケート調査に基づき検討している。アンケート調査および研究開発費・特許等の関連データと組み合わせたわれわれの実証分析によれば、出資事業の成果を左右する要因として、政府出資比率および出資企業による派遣従業員数の事業会社の全従業員に占める比率、すなわち政府や出資企業によるコミットメントの程度が、出資企業の研究開発投資あるいは出資事業会社による特許出願件数、またアンケート調査で得られた事業会社への評価指標に対して有意な影響を与えていることが明らかになった。医薬品機構出資事業では、研究開発費の節約を意図した出資企業は少数派であり、むしろ政府支援によって出資企業の研究開発投資が増加した企業が多く、研究開発へのコミットメント効果が有意に検出されたといえる。ただし、政府出資事業が出資企業本体の研究開発投資に与えた影響は軽微であり、また、政府出資比率は事業会社による特許出願にネガティブな影響を与えていた。これは、政府出資比率が高いことによって研究成果の専有化が困難となる事情があったためと推測される。いったん事業会社によって特許が取得されると、政府はその研究成果を広くあまねく利用させようとすると考えられるからである。また、アンケートに基づく出資企業による事業会社への評価は、政府出資比率や派遣従業員比率と正の相関を持っていた。これは、政府あるいは出資企業のコミットメントが強かった共同研究に対して、出資企業の評価が高かったことを示唆する。

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