財務データからみた製薬企業の10年 収益構造・コスト構造の変革
櫛 貴仁(医薬産業政策研究所 主任研究員)
藤原 尚也(医薬産業政策研究所 主任研究員)
山本 光昭(医薬産業政策研究所 主任研究員)
(No.13:2003年10月発行)
医薬品を取り巻く環境はこの10年間で大きく変化している。刻々と進歩する創薬研究や非臨床・臨床試験の厳格な実施に伴い、研究開発費は高騰し、それに要する期間は長期化している。また、度重なる薬価引き下げにより国内医薬品市場が伸び悩むなか、外資系企業の本格参入等によって競争は激化している。その一方、製薬産業の今後を展望すると、高齢化の急速な進展、医学・医療の進歩などにより新しい医薬品へのニーズは増大しており、製薬産業の潜在的な成長性は高い。また、日本経済の再生を担う産業として、知識集約型・高付加価値型の製薬産業への期待も高まっている。
このような中で、この10年間に日本の製薬企業がどのような企業行動をとり、どのような成果をあげてきたのかについて、財務データを中心に分析した。その結果、国際展開製品の開発と積極的な海外展開、経営効率化への取り組み、研究開発への継続的な重点投資を行うことによって競争力強化を図ってきたことが明らかとなった。また、各社個別にみると業績格差は10年前に比べ拡大している。