公的医療保険下における製薬企業の競争環境と研究開発
中西 悟志(日本福祉大学経済学部経済学科 助教授
兼医薬産業政策研究所 主席研究員)
丹藤 信平(医薬産業政策研究所 主任研究員)
(No.6:2001年03月発行)
本研究では我が国におけるRゾーン方式の導入が医薬品市場の価格支配力や研究開発投資の資源配分に与えた影響を評価する。公的医療保険の基準薬価制度を簡単にモデル化し、Panzor-Rosse検定を用いて市場の競争環境に与えた影響を実証分析する。その結果医療保険の基準薬価算定方式が改訂された1992年以降、医療用医薬品市場は顕著に競争的に変化しているとの結論が得られた。また基準薬価の変更と製薬企業の研究開発行動の関連について、企業の資金配分・予算決定の観点から同時方程式モデルを作成し実証分析を試みた。その結果、薬価算定方式の変更は製薬企業の研究開発行動に影響していないが、基準薬価自体の引き下げは既存薬剤の収益性の悪化を通じて、企業の新薬開発性向を高めさせる効果を持っているとの結論を得た。