目で見る製薬産業 世界売上高上位医薬品の創出企業の国籍 2018年の動向

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医薬産業政策研究所 主任研究員 澁口朋之

はじめに

医薬産業政策研究所では、医薬品世界売上高上位100品目について、各品目の基本特許1)を調査し、出願時の医薬品創出企業を調査・報告している2)-6。今回、2018年の世界売上高上位100品目の企業国籍の動向を調査した。

2018年売上高上位100品目7)の概要

IQVIA World Review Analyst 2019による2018年の医薬品市場は1兆1,982億ドルで、昨年から5.2%増加した。医薬品売上高上位100品目(以下、上位品目)の売上高合計における市場占有率は約30%であり、2017年から変化は見られない。また、今回の100位に該当する医薬品の売上高は約15.1億ドルで2017年の100位品目よりも高く、年々上昇傾向にある。

上位品目の薬効分類(ATC code Level 1)をみると、2017年と同じく、抗悪性腫瘍薬・免疫調節薬が28品目で最も多かった。

続いて消化器官用剤及び代謝性医薬品、中枢神経系薬、一般的全身用抗感染薬がそれぞれ17品目、15品目、10品目であった。2018年の上位品目は、2017年から11品目の入れ替えがあった。ここで全身用抗感染症薬(ATCコード:J)は5品目増3品目減であり、2018年において入れ替えが激しい領域であったことが分かる。

有効成分の技術分類(低分子医薬品とバイオ医薬品)では、低分子医薬品が59品目、バイオ医薬品が41品目となっており、2018年の調査(それぞれ63品目、37品目)よりもバイオ医薬品は4品目増加した。2017年からの低分子医薬品の品目の入れ替えは6品目増10品目減であり、バイオ医薬品の品目の入れ替えは5品目増1品目減であった8)

2018年の上位品目の売上高合計は3,775億ドルであったが、その内バイオ医薬品は41品目で1,868億ドル(49.5%)を占めており、品目数、売上高ともに年々増加していることが分かる(図1)。

図1 医療用医薬品世界売上高上位100品目に占めるバイオ医薬品の売上高推移

特許から見た医薬品創出企業の国籍別医薬品数

上位品目について、各医薬品における基本特許を調査し、出願時の企業国籍別医薬品数を円グラフで示した(図2)。

2017年の調査と比較すると、アメリカは品目数は減少したものの、48品目で最も国籍別医薬品数が多かった。日本は2品目減って10品目となり、順位の変動はないものの、スイスの10品目と並んで2番手となった。イギリスは2品目増で9品目となり単独4番手となった。ドイツは昨年同様7品目であり、以降品目の増減はあったものの、順位の変動はほとんどなかった。また今回、イタリアおよびオーストラリア起源医薬品が1品目ずつランクインした。

図2 医薬品創出企業の国籍別医薬品数

医薬品創出企業の国籍別医薬品数年次推移

2003年以降の調査結果6)、9と比較し、今回の調査でもこれまでの傾向に大きな変化は無く、アメリカが最大の医薬品創出国であり、近年は日本とスイスが2番手を競っているという傾向が続いている。2018年は再びイタリアおよびオーストラリア起源医薬品がランクインしたため、上位品目の創出国は13か国となった(図3)。

図3 医薬品創出企業の国籍別医薬品数年次推移

技術分類毎の国籍別医薬品数

先述の通り2018年の有効成分の技術分類では、低分子医薬品が59品目、バイオ医薬品が41品目となっている。その国籍別医薬品数を図4、5に示す。

図4 医薬品創出企業の国籍別医薬品数

図5 医薬品創出企業の国籍別医薬品数

日本起源医薬品10品目中8品目が低分子医薬品であり、バイオ医薬品は2017年同様2品目であった。また、イギリス起源医薬品は2品目増加したものの、2017年同様にすべて低分子医薬品であった。

一方、スイス起源医薬品は10品目中バイオ医薬品が8品目、低分子医薬品が2品目と、2017年よりもバイオ医薬品が増えている。また、デンマーク起源医薬品は今年上位品目に新たに加わった1品目含め、6品目すべてがバイオ医薬品であった。アメリカ起源医薬品については48品目中19品目がバイオ医薬品であった。

上位品目の売上高合計に占める国籍別割合

上位品目の売上高合計に占める医薬品の国籍別割合を図6に示す。

上位品目の売上高合計においてアメリカ起源医薬品が48品目で49%を占めている。日本起源医薬品は10品目で8%を占めているが、ドイツ起源医薬品は7品目で日本よりも多い15%を占めている。ドイツ起源医薬品は売上高上位10位内に3品目入っており、それらの影響が大きい。

図6 上位品目の売上高合計に占める国籍別割合

主販売企業の国籍別医薬品数

最後に主販売企業の国籍別品目数を図7に示した。ここで言う主販売企業国籍とは、IQVIA社のデータにおいて1製品を複数の企業が販売している場合にその販売額が最も多い企業の国籍とした。創出企業国籍と同様にアメリカ(50品目)が特に多かった。2017年から1品目増えたイギリス(12品目)が2番手となり、3番手は1品目減ったスイス(11品目)となった。日本は2017年から1品目減って6品目で4番手であった。その他の国々についてみると、ドイツ、デンマーク、フランス、ベルギー、アイルランド、イスラエルは変わらなかった。一方、新たにオーストラリアとカナダが1品目ずつランクインしている。

2018年では日本起源医薬品は10品目あるが、日本国籍の主販売企業が販売する医薬品数は6品目と少ない。このうち4品目は自社創製品、残り2品目はアメリカ起源であった(製品導入、企業買収各1品目)。一方、日本起源医薬品の残りの6品目はアメリカ企業(2品目)や欧州企業(4品目)が主販売企業となっている。これまでの調査2)-6と同様に、依然として多くの日本起源医薬品が、海外での販売を海外企業に依存していることがわかる。

図7 主販売企業の国籍別医薬品数
  • 1)
    本調査における基本特許とは、物質特許や用途特許等、各品目の鍵となっている特許を示す。
  • 2)
    医薬産業政策研究所「国・企業国籍からみた医薬品の創出と権利帰属」政策研ニュースNo.42(2014年07月)
  • 3)
    医薬産業政策研究所「世界売上上位医薬品の創出企業および主販売企業の国籍-2014年の動向-」政策研ニュースNo.47(2016年3月)
  • 4)
    医薬産業政策研究所「世界売上上位医薬品の創出企業および主販売企業の国籍-2015年の動向-」政策研ニュースNo.50(2017年3月)
  • 5)
    医薬産業政策研究所「世界売上上位医薬品の創出企業の国籍-2016年の動向-」政策研ニュースNo.52(2017年11月)
  • 6)
    医薬産業政策研究所「世界売上上位医薬品の創出企業の国籍-2017年の動向-」政策研ニュースNo.55(2018年11月)
  • 7)
    IQVIA World Review Analyst 2019掲載リストのうち、後発品・バイオシミラー・診断薬を除いた上位100品目を対象とした。
    Copyright© 2019 IQVIA. IQVIA World Review Analyst 2017, 2018をもとに医薬産業政策研究所にて作成(無断転載禁止)
  • 8)
    バイオ医薬品は日本における承認情報において抗体等一般名に遺伝子組換え(Genetical Recombination)とある品目、また、血液製剤やワクチンなど添付文書に特定生物由来製品、生物由来製品と記載されている品目とした。日本で承認されていない品目はFDAの承認情報や各社HP等で個別に調査した。
    PMDA HP, Accessed on Sep. 19th, 2019
    FDA HP, Accessed on Sep. 19th, 2019
  • 9)
    医薬産業政策研究所「製薬産業を取り巻く現状と課題 第1部」産業レポートNo.5(2014年2月)

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