医薬品評価委員会 2022-16 治験における残余検体の将来の研究への使用について

関連分類:その他

初回公開年月:2022年11月

質問

(背景)
ある国外企業の治験において、治験実施計画書に記載のない「将来の研究のための血液検体の残りである残余検体を保管し、研究に使用すること」について、治験参加のための説明文書依頼者案に記載したものを提供してきました。治験実施計画書に記載がないことを実施することはできないと認識していますが、治験依頼者は、治験実施計画書に記載しないし、予定もないということでした。さらに、治験実施計画書に記載のない事項について実施することは認められないと治験依頼者に伝えたところ、レターを作成するということでした。
治験依頼者は、治験実施計画書に記載のない将来の研究について実施することを治験実施医療機関として認め、治験参加のための説明文書に記載しない限りは治験実施施設の取下げとすると言ってきました。

(質問)
①治験実施計画書に記載のない将来の研究を実施することは可能なのでしょうか。
②レターは、治験実施計画書と同等の位置づけになるのでしょうか。
③治験実施計画書に記載のない研究について、治験参加のための説明文書に記載することは可能なのでしょうか。

治験実施計画書は、基本中の基本であると信じて実施してきたので、その根本を覆される思いでいます。どうぞご教示ください。
 

製薬協見解

背景情報にある「将来の研究のための血液検体の残りである残余検体を保管し、研究に使用すること」について、研究内容の詳細がわからないため、ゲノム薬理学を利用した治験を前提に回答をさせていただきます。

① 治験実施計画書に記載のない研究の実施について
「ゲノム薬理学を利用した治験について」(平成20年9月30日薬食審査発第0930007号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)、「別添ゲノム薬理学を利用する医薬品の臨床試験の実施に関するQ&A」及び「ゲノム試料の収集及びゲノムデータの取扱いに関するガイドラインについて」(平成30年1月18日薬生薬審発0118第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知)より、将来の研究のための血液検体の残余検体を保管し、研究に使用するケースでは、治験実施時に対象や実施時期が具体的に特定されていない場合でも、被験者からの同意を文書で得ておくことで試料の提供を受けることは可能です。
この場合、治験実施計画書において、予め規定されることも、あるいは規定されないこともあります。
ただし、「医薬品開発においてゲノム試料を採取する臨床試験実施に際し考慮すべき事項」(RSMP vol.9 No.2, 103-109, May 2019)には、「ゲノム解析の内容が具体的に明らかになっていない場合であっても治験依頼者は解析計画の概略を可能な範囲で治験実施計画書に記載すること」とあるとおり、将来的な研究の可能性については、すべてを治験実施計画書に記載することは困難であっても、可能な範囲で治験実施計画書に記載することが望ましいと考えます。

② レターの位置づけについて
「ゲノム薬理学を利用する医薬品の臨床試験の実施に関するQ&A」のA4に、「ゲノム薬理学の検討に係る計画を治験実施計画書とは別に作成することも可能であるが、この場合には、治験実施計画書に別で定める旨記載し、当該計画も治験実施計画書の一部として治験審査委員会の審査が必要となる。」とあるため、必ずしも治験実施計画書に当該研究を予定されている旨を記載する必要は無いと考えますが、必要に応じてレター等を作成し、治験実施計画書と同様に責任医師の合意を得たうえで治験審査委員会で審査するべきものと考えます。

③ 治験実施計画書に記載されていない研究を治験参加のための説明文書に記載することについて
先に記載した通り、将来的な研究のために、検体の残渣等を保存し転用する場合は、被験者に対して、その目的で解析を予定していることや、その時点で想定される解析対象遺伝子の範囲等をわかりやすく文書で説明し、ゲノム・遺伝子解析の実施に関しての同意を文書で得ておくことが必要です。ゲノム・遺伝子解析の実施に関しての同意については、治験の実施に関する同意の中又は別に取得することのいずれも可能です。
なお、ゲノム解析等で、個人情報への配慮が必要な研究を実施する可能性がある場合、個人情報保護法に抵触しない対応も必要と考えます。
 

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