医薬品評価委員会 2011-54 原本が感熱紙である原資料の取扱い

関連分類:記録の保存

初回公開年月:2012年04月
改訂公開年月:2021年12月

質問

心電図など感熱紙に印字される原資料は長期の保存に適していないので、通常コピーをとって保管しています。感熱紙に印字された検査結果をオリジナルと考え、医師が検査結果を確認した記録として感熱紙に直接署名をいただき、署名後のコピーを保管しています。

治験依頼者さんの中には検査結果のコピーを作成し、コピーに医師の署名を求める方がいらっしゃいます。当院の対応は間違っているのでしょうか?

製薬協見解

ICH GCP 4.3(下記参照)では、治験責任医師又は治験分担医師(以下、治験責任医師等)の被験者に対する医療上の責任について規定されています。この規定を踏まえ、治験責任医師等が医学的評価を行った証拠として、検査チャートや検査報告書に治験責任医師等が日付と署名を付すことが国際共同治験ではよく行われています。よって、感熱紙に直接署名をいただくことは間違っていません。

一方、GCP第2条ガイダンス6にも記載されていますように、「原資料」とは「治験の事実経過に係る情報」を指し、原則的には原本(オリジナル)が保存対象となります。しかしながら、感熱紙のように長期保存に耐えない記録に対しては、「正確な複写であることが検証によって保証された複写物(ICH GCPでは"Certified copy")」も原資料として見なすことができます。この「正確な複写であることが検証によって保証」する具体的な方法については、GCPに示されていませんが、当該複写物に関係者が日付と署名を付す方法が一般的に用いられています。

原本が感熱紙である原資料に対して、certified copyを作成し、且つICH-GCP 4.3へ対応する方法としましては、統一された方法はなく、以下の方法が考えられます。

方法1

  • 原本(感熱紙)に、「医学的評価を行ったこと」を示すために、治験責任医師又は治験分担医師が日付と署名を付す。
  • 上記の日付と署名が付された原本より写しを作成し、「原本と相違ない写しであること」を示すために、当該写しに当該写しを作成した者(治験責任医師、治験分担医師又は治験協力者に限らず、正確な複写であることを保証する者)が日付と署名を付し、原本とともに保存する。

治験責任医師又は治験分担医師による医学的評価の前に、原本(感熱紙)の写しを作成する場合は、次の方法も考えられます。

方法2

  • 医学的評価を行った時に、その旨及び「原本と相違ない写しであること」の両方を示すために、当該写し(又は両方)に治験責任医師又は治験分担医師が日付と署名を付し、原本(感熱紙)はcertified copyとともに保存する。

院内の写作成の手順に応じて、良い方法を治験依頼者と協議してください。

参考:ICH-GCP 4.3 被験者に対する医療

4.3.1

医師(場合によっては歯科医師)の資格を持つ治験責任医師又は治験分担医師が、治験に関連する医学(又は歯学)的な全ての判断に関する責任を負うものとする。

4.3.2

治験責任医師/治験実施医療機関は、被験者の治験参加期間中及びその後を通じ、治験に関連した臨床上問題となる臨床検査異常等の全ての有害事象に対して、十分な医療が被験者に提供されることを保証するものとする。

見解改訂理由

GCPガイダンス(令和2年8月31日 薬生薬審発0831第15号)発出に伴い、見解文を一部変更しました。

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