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「医療健康分野のビッグデータ活用研究会報告書Vol.4」のご紹介
PHRの活用~「個人を軸としたデータ流通プラットフォーム」と「活用データの広がり」~
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個人を軸としたデータ流通プラットフォーム

PHRに関しては、医療機関等の事業者がデータの管理や流通を行うのではなく、個人が自らのさまざまなデータを自分の意思で管理・流通・活用させる「個人を軸とした新しいデータ流通プラットフォーム」が登場しています。このデータ流通のスタイルでは、従来の医療機関等が作成・管理するデータ流通と比較して、患者さん(個人)が医療機関で診察・検査・処置することでデータが生み出されるところは変わりませんが、その「個人が自身に関するそれらのデータを、他の個人にかかわるデータも含めて、自らの意思で仲介者を介してデータ利用者に提供する」という点において大きく異なります。この流通プラットフォームでは、たとえば複数の医療機関にまたがるデータや、ヘルスケアデバイス・サービスのデータ等、さまざまなデータを本人の意思をもとに連結することで「多様なデータを統合しやすい」という特徴があります。また、データの提供に際して個人と仲介者が直接つながっていることから、データ利用者が個人にアクセスしやすいというメリットが生じます。この「個人にアクセスしやすい」という特徴によって、たとえば「個人のデータに基づいたサービスの提供」を行うことや、「追加のデータ取得を依頼」することも容易となります。
 個人を軸としたデータ流通プラットフォームが登場している背景には、データポータビリティに関する注目度の高まりがあります。データポータビリティ(権)とは、「(1)データ管理者から本人が自らのデータを扱いやすい電子的な形式で取り戻す権利、(2)あるデータ管理者から別のデータ管理者に移行させる権利」のことを指すと定義されています。2018年5月に施行されたEUのGDPR(一般データ保護規則)や中国のサイバーセキュリティ法の個人情報規則でも規定されており、日本においても今後、制度や仕組みの整備が進められていくと想定されます。
 このような「多様なデータを統合しやすい」「個人にアクセスしやすい」という性質は、図2のようにさまざまなメリットを製薬企業にもたらすと予想されますが、前提としてデータポータビリティの進展が必要であり、国民の理解促進とデータ提供者に対する利便性等も含めたインセンティブ設計も重要となります。加えて、医療健康分野におけるデータは「公共財」としての側面ももち合わせており、本人のためだけでなく、医学薬学の発展、同様の疾患をもつ患者さんや将来の国民のためにも役に立つという側面もあることを広く認知してもらうことが必要です。こうしたデータ駆動型社会の環境整備に向けて、行政だけでなく医療ヘルスケアにかかわる企業・アカデミア・医療従事者が協力して取り組むことが重要であると考えます。

図2 プラットフォームの特徴
図2 プラットフォームの特徴

製薬産業における活用データの広がり

PHR活用に関する2つ目の大きなトレンドは、「活用データの広がり」です。近年は医療機関以外で取得されるデータの活用に対する注目も高まりつつあります。
 たとえば、創薬の対象が個別化医療、予防・先制医療へと拡大していくことが見込まれる中では、発症後の医療データだけでなく発症前のデータが必要という認識が高まっています。報告書では、米国「All of us」や、日本の取り組みとして東北メディカル・メガバンク機構による健常人を対象とした前向きゲノムコホート研究、弘前大学COI(センター・オブ・イノベーション)研究推進機構の推進する超多項目(約2000項目)の健康ビッグデータを紹介しています。また臨床開発・メディカルアフェアーズ(MA)の領域では、患者さんの状態をより詳細に把握・理解することへのニーズが高まっており、ウェアラブルデバイスを活用したデータ取得や臨床試験における評価指標としての活用、ウェブサイトやモバイルアプリを利用することで医療機関への来院負担を軽減し、臨床試験の効率化と患者エンゲージメントを高めようとする“Virtual”Clinical Trialの試みも注目されています。さらに上市後領域では、発症しながらも受診していない潜在患者さんが存在したり、さまざまな理由によって治療を中断してしまうことで重症化につながったりすることが課題とされており、こうした課題の解決に対してはウェアラブルデバイス等のIoTデバイスやAIを活用したソリューションの開発が国内外で取り組まれています。

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