製薬協について 製薬協について

政策研のページ

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
189号タイトル
政策研のページカテゴリ画像
前へ123456END
革新的医薬品創出の担い手に関する調査
―世界売上上位医薬品の起源分析より―
line03 line03 line03

おわりに

大阪大学ベンチャーキャピタル投資部第3グループ調査役の西角文夫氏は、2008年から2017年の間に承認された日米欧における新有効成分含有医薬品を対象とした調査により、高鳥氏らと同様にベンチャー企業(1975年以降に設立された企業と定義)、それに加えて大学が新薬創出機関として存在感を強めていると報告しています[8]
 本調査により、世界売上上位100位までの医薬品に関し、それぞれの創出起源企業の企業特性から、主に新規創薬基盤技術をベースに創薬を行うバイオテックと、すでに製薬ビジネスの基盤が確立したファーマに分類し、2003年から2017年までの時間経過の中で、世界で広くアクセスされている有用性の高い革新的医薬品の創出に対するバイオテックの創薬活動の貢献度が確実に高まっていることを示唆する結果を得ました。これは、高鳥氏らの調査結果が、その後10年経過した時点でも同様に持続していることを明らかにしたものであり、西角氏の報告にも矛盾しません。
 今回新たに、バイオテックに分類される企業を、その設立時から創出した新薬の世界初上市時までの期間が20年を超えたか否かで、スタートアップ・バイオテックとエスタブリッシュド・バイオテックに分け、創出医薬品のモダリティ分布を調べました。その結果から、2003年、2008年当時は、バイオテック起源医薬品の主流はバイオ医薬品でしたが、積極的に新規創薬基盤技術を駆使した疾患標的分子の探索や疾患メカニズム等の研究も進めていく中で、医薬品として最適なモダリティを選択した結果として、低分子医薬品を製品化するに至ったケースや、バイオテックの成長あるいはビジネスの成熟にともなって、各社のトップラインのドライバーとなる製品のポートフォリオから見たビジネスモデルがファーマ型に近づいていく様子がうかがえました。
 加えて、ファーマが創出起源となった売上上位医薬品のモダリティ分布の推移を検討したところ、抗体医薬品の動向等から、創薬に関するリスクが高い段階での新たな技術分野への参入におけるスタートアップ・バイオテックの存在意義と、その成功に裏打ちされたベストプラクティスによる新規技術の浸透や、M&Aを通じた技術継承の促進(スピルオーバー効果)の点における役割の重要性が示唆されたものと考えます。
 「未来投資戦略2018」を引き合いに出すまでもなく、近年、日本の成長につながる経済全体の生産性向上と活性化のために、スタートアップ・バイオテックのような設立から長期間が経過していない、新規技術をベースとしてイノベーション活動を行う企業(「経済財政運営と改革の基本方針2018」や「未来投資戦略2018」の中ではベンチャー企業と呼称)の活性化支援の必要性が強く認識されています。特に医療、健康分野では、厚生労働省がベンチャー等支援戦略室を2017年4月に設立し、具体的に医療系ベンチャー企業の振興を進めているところです。本調査の結果は、製薬産業において、上述した施策の重要性を確認するとともに、それが奏功する可能性を期待させるものと考えます。




mark [8]
大阪大学ベンチャーキャピタル サイエンスレポート「業界展望 ―創薬」(第4、5、6回)
https://www.ouvc.co.jp/topics/627 (参照:2018年10月5日)

謝辞

本調査で用いた売上上位医薬品の基本特許に関する情報の大多数は、医薬産業政策研究所の佐藤一平主任研究員が作成したデータベースを利用したものです。利用許諾に関して深謝します。

医薬産業政策研究所 統括研究員 村上 直人

前へ123456END
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ