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米国新政権始動による日本国内製薬産業への影響
─オバマケアと薬価見直しを中心として─
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・以下の(1)〜(3)に該当する医薬品は収載しなければなりません。
(1) HIV感染/エイズ治療薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、痙攣性疾患に用いる鎮痙薬、免疫抑制剤および抗腫瘍薬に分類されるすべての医薬品
(2) 購入可能なワクチン(但し、パートBで償還可能なワクチンを除く)
(3) メディケア対象者が一般によく処方を受ける医薬品分類(Medicare Prescription Drug Benefit Manual, Chapter 6 – Part D Drugs and Formulary Requirements, Appendix D)に該当する薬剤で、少なくとも1種類以上のブランド医薬品とジェネリック医薬品
一方、抗肥満薬、美容目的の医薬品等メディケアでは償還してはならない医薬品群も規定されています[14]

米国内で外来処方される全医薬品に対する支払い支出のうち、プライベート健康保険による支出分のシェアが最も高く(約43%)、次いでパートDによる支出分の約29%となっており、その額は約940億ドルに上ります(2014年実績)[15]。パートDが償還する医薬品の購入価格は、プランを販売する保険会社と製薬会社間の交渉により決定され、プラン販売前に行政当局の許可を得る仕組みとなっています。米国の薬価が他主要先進諸国と比べて相対的に高いことはよく知られていますが、パートD向け医薬品に対して平均で約17%の値引きを引き出していることがCarleton Universityと非営利アドボカシー団体Public Citizenとの共同調査により報告されています。すなわち、米国内で外来処方される医薬品の工場出荷価格レベルでの加重平均価格を1とすると、パートD が償還する医薬品では0.83に相当します。同じ報告の中で、OECD加盟国の平均購入価格(中央値)は0.42に相当することが示されているように[16]、まだ高値感が強く、いっそうの価格低減の必要性が議論されてきました。一例としては、パートDが本運用開始された2006年以降、毎年政府の価格交渉権を求めて、その法令化を目指した法案が提出されており、2007年には下院の承認を得たものの、その後法令化には至っていません[17]
 トランプ大統領が就任前より表明してきた米国内の薬価引き下げ、という公約は、ややもすると自動車産業に続き製薬産業の現行ビジネスのあり方に対して新たに批判を展開しているかのようにみられがちです。しかし前述したように、実は、政府に対して多大な経済的負担を強いていると論評されてきた医薬品コストの低減という、政府にとっての積年の課題であり、また、オバマケアの制度設計段階において、より具体的に検討された重要な政策課題で、オバマケアの見直しの一環と言えるものです。今後、APD法案審議の中で、パートDのフォーミュラリに収載されているブランド医薬品を中心に、それらの購入価格の大幅引き下げにつながる制度に関する議論が進められることは大きなビジネスリスクと言えます。また、APD法案には、バイオ医薬品のデータ保護期間の短縮をはじめ、医薬品の独占販売期間の短縮に関する条項も規定されており[12]、今後の議論を注視する必要があります。

mark [15]
10 Essential Facts About Medicare and Prescription Drug Spending, Kaiser Family Foundation, Jul 07, 2016. http://www.kff.org/infographic/10-essential-facts-about-medicare-and-prescription-drug-spending/(参照日:2017/01/31)
mark [16]
Marc-Andrè Gagnon and Sidney Wolfe;Mirror, Mirror on the Wall: Medicare Part D pays needlessly high brand-name drug prices compared with other OECD countries and with U.S. government programs, Carleton University Policy Brief, July 23, 2015 http://carleton.ca/sppa/wp-content/uploads/Mirror-Mirror-Medicare-Part-D-Released.pdf(参照日:2017/01/31)

日本企業への影響

米国内でブランド医薬品の自販体制を有する製薬協会員会社が被り得る薬価引き下げの影響についての初期検討を、2015年度の実績値に基づいて行いました。
 米国内にブランド医薬品の自販体制を有する9社中、製品ごとの売上高実績を公表している6社の44製品の2015年度における純売上高合計は、1兆4700億円でした。6社中、パートDのフォーミュラリ収載製品を販売していない1社を除く5社に関しては、販売製品の79%から100%の製品がパートD対象製品で、合計で全38製品、売上高合計は約1兆2400億円でした[11]
 製品ごとの売上高のうちのパートDで公費償還される割合を知ることはできないため、全米で外来処方される全医薬品支出に対する平均割合である29%を適用し、さらに新政権下での価格引き下げが、オバマ政権下で検討されていた最大50%の値下げ幅で断行されると仮定すると、約1800億円相当の減収になると概算されました。これは、5社の連結売上高合計の3.5%に相当し、また、個社ごとの引き下げ率は3.1%から6.5%となり、売上収益への無視し得ないネガティブインパクトとなり得ることが示唆されました。

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