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医療機関の治験業務に対するKAIZEN活動
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■ 解説

リスクに基づくモニタリングを支える、施設の自発的なKAIZEN活動

データサイエンス部会 小宮山 靖

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ICH-E6(GCP)の改定が進められ、リスクに基づくモニタリングが、いよいよGCPに記載される時代を迎えつつあります。本稿が公表される2016年1月は、ICHのステップ2合意に至った新GCP案のパブリックコメントの募集が締め切られるころです[3]
 筆者は、2013年9月の製薬協ニューズレターに「【ホットな話題をわかりやすく解説】リスクに基づくモニタリングとは」[4]を寄稿しました。これは、品質管理の基本的な考え方をバックボーンとして、リスクに基づくモニタリングを解説したものでした。もし施設側で業務を行う方々が、「データの誤り、文書等の不備、プロトコルからの逸脱などは、問題があれば誰かが指摘してくれ、それを正せばよいのだ」と考えているのだとしたら、またモニタリング業務を行う方々が、「データの誤り、文書等の不備、プロトコルからの逸脱を見つけなければならない」と考えているのだとしたら、「出口管理」に主眼をおいた旧態依然とした品質管理システムの立派な一員です。そうではなくて、業務に従事するすべての方々が、自らの仕事の品質確認を行い、問題が起こりにくい業務プロセスを事前に作り込み、それでも起きてしまった問題を発見したら、根本原因を分析し、問題を繰り返し起こさないための予防措置を講じるという「プロセス管理」に移行すべきだというのが、前回の記事の言わんとしたことでした。前回の記事に欠けていた“本物の実践例”を示してくれたのが、聖路加国際病院の石橋氏、平山氏です。施設内で働く人々が協力し合い、自発的にKAIZEN活動を行い、問題が起こりにくいプロセスを作っていくその姿は、かつて世界の中で日本にだけ根づいたQCサークルを彷彿させるものです。自発的なKAIZEN活動を根づかせた施設は、異なった治験であろうと、質の高いデータを繰り返し生み出せる力を持つことになるでしょう。その先にある究極の姿は、「実地モニタリングを行っても、問題など見つかるはずもなく、実地モニタリング自体が無駄な作業だと思える状態」です。プロセス管理を通じて“検査”をなくすことが品質管理の究極の目標ですから、まさに王道のアプローチだといっていいでしょう。
 自発的なKAIZEN活動には、ほとんどお金がかかっていないことも注目すべき点です。「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」[5]が制定され、侵襲(軽微な侵襲を除く)を伴い、介入を行う研究について、研究責任者に対し、モニタリングや必要に応じた監査の実施が求められることになりました。臨床研究のコスト(特にモニタリングのコスト)が増大することに懸念を持たれる医療関係者が多くいるようです。お金のかからない自発的なKAIZEN活動を通じて、モニタリングが最小化できる、あるいは不要になるような体制を作ることを検討されてはいかがでしょうか。
 今回の記事には「リーンシックスシグマ」という言葉が出てきます。しかし、恐れることはありません。読めばすぐにわかることですが、彼らが実践していることは、どの施設でもできるはずですし、明日からでも始められることです。「リーンシックスシグマ」は、KAIZEN活動に、考える道筋や、整理・分析をするためのツールを提供してくれます。しかし、根本原因を考え、プロセス改善のアイデアを出すのは、仕事に従事し現場を知っているあなた自身です。


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