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臨床薬理学会海外研修を終えて
~ドイツで “お茶” に関する研究~
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薬理学研究所の外観
研究所の外観

エアランゲン大学臨床薬理学講座における臨床試験実施の現状について

私がエアランゲン大学臨床薬理学講座への留学を希望した理由の1つは、薬物相互作用に関する臨床試験を実施していることでした。あくまで私見ですが、臨床薬理学分野に限っては薬物相互作用、特に薬物トランスポーターを介した相互作用の臨床研究はドイツで盛んに行われているように思います。主な研究機関としてエアランゲン大学のほかにグライフスヴァルト大学、テュービンゲン大学、マインツ大学などが挙げられます。私はこの留学を通して現在ドイツの大学における研究者主導の臨床薬理試験の実情について学んできたいと思っていました。
 ドイツではほかの欧州連合(European Union、EU)諸国と同様にいわゆるEU臨床試験指令(EU clinical trial directive)[1]の施行に伴い、健常人を対象とした規模の小さい薬物動態試験であっても治験と同様の法規制を受けるようになりました。そのため、それ以前とは試験実施のハードルが格段に高まったとのことでした。前述のEU臨床試験指令の詳細について本稿では省略しますが、現状として私が感じたことを一言で述べると、大学の1講座単位において臨床試験を実施するには人材が不足している、ということになります。
 私がエアランゲン大学に行った当時、臨床薬理学講座では前述のMüller氏が主任研究者となって臨床試験を実施していました。彼はエアランゲン大学に赴任する以前、医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization、CRO)に勤務していて治験業務の経験があったためそれが可能でした。しかし、薬物投与や採血など臨床試験の実際の遂行のみならず、マネジメントに関するほぼすべてを同氏および一緒に研究していた学生の2名で引き受けていたため大変な負担だったようでした。この試験は無事終了し論文[2]となっていますが、終わった直後同氏は相当疲弊しており、秋も深まりだした10月に遅い夏期休暇をとっていました。
 同氏のようにEU臨床試験指令に則った臨床試験を実施することのできる医師は大学のみならず製薬企業にとっても非常にニーズが高く、アカデミアにおける若手研究者の不安定な雇用状況下において、企業と大学とで人材獲得の競争が生じたとき、大学はかなり不利になっているようでした。これらの背景に、実施のためのコストの問題も加わりドイツにおいて研究者主導の臨床試験実施数は近年減少傾向にあるようです。
 このことは、昨年の第35回日本臨床薬理学会学術総会の国際シンポジウムにおいてハイデルベルク大学臨床薬理学講座のWalter E. Haefeli教授も講演で指摘していました。なおこうした現状を踏まえて、2014年に新たにEU臨床試験規則[3]が成立し、試験のリスクに基づいて実施要件が一部簡略化されるようになることから、今後はドイツのアカデミアにおける臨床試験もまた変わっていくと予想されます。私はエアランゲン大学の方々と連絡を密に取りながら、これからもドイツにおける臨床研究に関心を寄せていきたいと思います。

mark [1]
European Commision. Clinical trials - Directive 2001/20/EC. http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-1/dir_2001_20/dir_2001_20_en.pdf



mark [2]
Müller, F., Pontones, C. A., Renner, B., Mieth, M., Hoier, E., Auge, D., Maas, R., Zolk, O., and Fromm, M. F.: N1-methylnicotinamide as an endogenous probe for drug interactions by renal cation transporters: studies on the metformin-trimethoprim interaction. Eur J Clin Pharmacol, 71: 85-94 (2015).
mark [3]
European Commision. Clinical Trials Regulation (CTR) EU No 536/2014. http://ec.europa.eu/health/files/eudralex/vol-1/reg_2014_536/reg_2014_536_en.pdf


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