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「第38回環境安全講演会」を開催
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「第38回環境安全講演会」が、2014年4月18日にアルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)で開催されました。同講演会では、警察大学校 警察政策研究センター 教授の樋口晴彦氏が「組織の失敗学」、東京都市大学 環境情報学部 教授の涌井雅之氏が「自然を守れば自然が守ってくれる」と題して講演をし、製薬協会員会社の約60名が聴講しました。その講演の概要を報告します。



齋藤 みのり 氏

組織の失敗学

警察大学校 警察政策研究センター 教授 樋口 晴彦

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失敗学とは
 「失敗学」とは、過去の事件・事故における失敗の原因を解明し、それを未然に防ぐ対策を提供することです。今回の講演においての事例は、皆さんの仕事と直接関係ないかもしれませんが、「他山の石」となり得ます。重大な不祥事の背景には、組織的・構造的な問題が存在しているケースが通例で、事業が異なっていても、こうした問題には共通している点が少なくありません。ポイントとなるのは、自分の状況に置き換えて教訓をつかもうとする姿勢が重要ということです。


[事例1] 東京電力福島原発事故
 東北地方太平洋沖地震により、福島第一原子力発電所で稼働中の1〜3号機は自動停止しました。原子炉停止後も核燃料は崩壊熱を出し続けるため、冷却する必要があります。同原発では外部電源が途絶するとともに、所内の非常用発電施設も被害を受け、電源喪失状態に至り、核燃料を冷却できずにメルトダウンに至りました。外部電源の喪失は、津波の襲来とは関係なく、もっぱら地震の揺れによって引き起こされました。「外部電源がつぶれても、原発に非常用発電施設があるから大丈夫」という心理があり、非常用発電という「最後の砦」に寄りかかり、外部電源の安全対策を突き詰めることを怠りました。


[事例2] 三菱重工客船火災事故
 2002年10月、三菱重工長崎造船所で建造中の客船「ダイヤモンド・プリンセス」で火災が発生し、36時間後に鎮火するまでに、船体床面積の約4割を焼損、損害額は300億円を超えました。デッキで行われた溶接作業の熱が階上に伝わり、家具などの可燃物に引火したことが出火原因でした。溶接箇所は天井部の梁とされていましたが、天井面に溶接する「直溶接」の実施に必要な申請を出さず、上層の可燃物を除去しないまま作業を行いました。本事故に先立って、本船内では4件の失火事件が発生(初期消火に成功)しており、そのすべてが直溶接する際の確認ミスを放置したことが原因となっています。造船業界では韓国との受注競争が激化しており、利潤の高い豪華客船分野への進出が急務となっていました。三菱重工は、海外の海運会社から豪華客船の発注を受けたのは今回が初めてで、このプロジェクトを成功させて市場を開拓したいと懸命となり、本船の引き渡しを予定より2ヵ月も早めていました。その組織的な焦燥が本件事故の背景にあり、三菱重工が市場開拓のために重ねた無理が今回の火災事故を引き起こしました。


結び
 現場では『事情』があって不適切な行為に至りました。不祥事をなくすにはこの『事情』=原因メカニズムを解消することが必要です。「現場にコンプライアンス意識がないからだ」という結論ありきの発想では、何も学べません。同種の違反行為が散発している場合、社内制度や管理手法に問題があることが多く見受けられます。一時の間に合わせの策に満足せずに、不祥事の背景要因となった組織的・構造的問題を直視することが大切です。

環境安全委員会 環境部会 平野 靖幸



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