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血液臨床検査項目の共用基準範囲設定について
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九州大学大学院 医学研究院 臨床検査医学分野 教授
九州大学病院 検査部 部長

康 東天

頻用される血液検査項目に関して、日本全国で共通して使用することが可能な共用基準範囲が、検査関連の諸学会、団体の協力を得て設定されました。ここでは共用基準範囲の設定に至った背景、どのような方法で設定されたかを概説し、併せて治験に与えるインパクトについて説明します。


はじめに

 頻用される血液検査項目に関して、日本全国で共通して使用することが可能な共用基準範囲が検査関連の諸学会、団体の協力を得て設定されました(表1)。血液検査などの検体検査データは客観的な医学的情報として患者の診断や治療方針の決定になくてはなりません。その臨床検査値の結果解釈や判断の基準となる重要な指標として基準範囲があります。基準範囲とは、ある検査項目に関して、一定の基準を満たした健康な人(臨床検査医学用語では基準個体)の95%が含まれる検査値の範囲です。残念ながらその設定や利用においては施設ごとにさまざまな方法が採用されているのが現状です。各施設の事情によりデータ集計・統計的算出で求められた施設固有の基準範囲に加え、試薬メーカーの推奨、外部委託先衛生検査所の値、教科書の記述などに基づく値などがあります。
 これまで、臨床検査データは特定の患者が特定の病院で治療を受けるのに利用されることがほとんどであり、基準範囲が施設内に限定されていても大きな問題はありませんでした。ところが、近年の医療経済的な必要性と医療の分業体制の進行とともに、医療の地域連携システムの構築と個人を生涯にわたって健康管理できる医療システムの構築が急がれています。医療情報は患者とともに病院から病院へと移動していくことが当然の時代となっています。
 また、現在の疫学研究では10万人規模の集団を10年以上にわたって追跡することも稀ではありません。このような調査では、臨床検査を単独の施設で実施するのは困難であり多施設共同にならざるを得ませんし、新薬の開発には最終的には多施設の患者を対象とした治験を経なければなりません。そこで常に問題になるのが、新薬の治験時と市販後の薬の安全性と有効性をいかに迅速にかつ正しく評価するかです。
 このように、患者診療においても、臨床研究においても、臨床検査データは時間的空間的にまたがって、ますますビッグデータとして蓄積されていますが、これらの臨床検査情報を正確かつ有効に利用するためには、検査値の時間的空間的比較性の保証とその判断基準の統一が必須であります。このような理由から、医療機関の間で検査情報の共有を担保するための基準範囲の共用化が望まれていました。

    表1 共用基準範囲
表1 共用基準範囲
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