医療健康分野のビッグデータ活用研究会報告書 vol.3
森田 正実(医薬産業政策研究所 統括研究員)
杉浦 一輝(医薬産業政策研究所 主任研究員)
(2018年05月発行)
当研究会では、製薬産業におけるバリューチェーン横断的な検討を行い、医療健康分野のビッグデータ活用における重要な課題について提言を行うべく調査研究を進めてきた。今年度、様々な課題がある中でも最重要と考えられる「医療データの活用」をメインテーマとし、製薬産業のバリューチェーンにおいて、現状ではどのような医療データがどのように活用できるのか、またその活用をする上での課題は何かを検討した。
製薬産業における医療データの活用において、創薬を目的とする医療データと、情報提供活動や流通管理の中で必要となる医療データでは、その内容や量、質は大きく異なる。創薬研究などのバリューチェーン川上では、サンプルサイズはそれほど大きくなくとも詳細な、狭く深いデータが求められ、情報提供活動や流通管理などの川下では、情報内容は詳細でなくとも悉皆性の高い、広く浅いデータが求められる。
既に、国・行政やアカデミアを中心として、様々なデータベースの整備が進められつつあるが、各データベースの内容・質・量のレベルは異なる。データ活用促進のために、活用目的を広く捉えるとともに、内容・質・量の視点から多くのデータベースは更なる整備が望まれるが、予算や労力、時間などは有限であるため優先度の観点が必要である。
本報告書では、上述の内容についてまとめるとともに、製薬産業という立場から「医療データの活用」を進める上で優先度の高い項目として、業界内外に向けて5つの提言をまとめた。