医薬品評価委員会 2007-08 関連医療機関2施設で一つの治験を実施する場合の契約
関連分類:その他
初回公開年月:2008年01月
質問
「外来専門のクリニック」を併設している医療機関とどのように契約を結ぶべきか、ご意見をいただきたくご連絡差し上げました。
ある医療機関では、外来と入院をそれぞれ別名の医療機関(仮に、A病院とBクリニックとします)として経営しています。外来で診察に来る患者様は、まずBクリニックで診察を受けます(Bクリニックは外来専門のクリニックで、A病院と併設されています)。入院が必要な場合は、A病院へと転院していただき、以降はA病院にて治療を受けます。外来の患者様は、初めからA病院に行く事はなく、まずBクリニックを経由してからA病院へと転院される流れとなっています。A病院とBクリニックは、電子カルテを共有しており、双方からカルテや検査結果などを閲覧できるようになっています。そこで、「入院の治験」をこの医療機関で行いたい場合、
- A病院と治験依頼者の二者契約
- A病院とBクリニックと治験依頼者の三者契約
のいずれの形態が適当なのでしょうか?
Bクリニックでは、以下の業務を行います。
- 対象疾患かどうかを診断するための検査
- 対象疾患かどうかの診断
- 適格性確認(適格性のある患者様にのみ、治験の説明を行うため)
- 治験概要の説明(同意説明文書は用いず、簡単な口頭による紹介のみ)
Bクリニックで紹介を受けた患者様は、A病院へ転院され改めて、「同意説明」「同意取得」という流れで治験に組み入れられます。
Bクリニックでは、同意説明・取得は行っていませんが、適格性確認のための検査データはBクリニックに残されており、モニターがSDVを行う際は、Bクリニックの電子カルテを参照することとなります。
このため、二者契約ではなく三者契約とし、Bクリニックも契約上治験に参加していることを明記すべきでしょうか?しかし、その一方で、治験薬の搬入はA病院のみであり、実質的な治験の開始(同意取得)もA病院で行われます。もし三者契約とすると、スクリーニングのみを担うBクリニックが治験実施医療機関として治験届に記載されなければならず、施設選定や安全性報告等の業務が二つの医療機関に対して二重に発生してしまいます。
上記のようなケースは、いくつかの医療機関で報告されております。GCP上、クリティカルな問題とはならないかもしれませんが、ご意見をいただければと存じます。
製薬協見解
A病院とBクリニック間での検査機器、測定方法等の違いが、治験実施計画書に抵触しないとの前提で、ご質問にお答えします。
同意取得から治験薬の投与をA病院で行うことから、A病院が治験実施医療機関となります。しかし、Bクリニックも当該治験に関与していますので、Bクリニックに来られた患者さんがA病院で治験に参加することの妥当性について治験審査委員会で審査されるとともに、以下のような対応を行う必要があると考えられます。
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(1)Bクリニックで実施する検査が、日常診療の範囲内として行うことができない検査を実施する場合には、当該検査は治験のための行為であり、Bクリニックでの検査実施前に文書による同意を取得する必要があります(GCP第50条)。Bクリニックでも治験行為を実施することになりますので、治験実施医療機関として治験届への記載、治験依頼者との契約が必要となります。
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(2)
Bクリニックで実施する検査が、日常診療の範囲内として行われる検査である場合には、Bクリニックは治験実施医療機関とはなりません。しかし、そのような場合でも、以下の点については留意/対応しておく必要があります。
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1.Bクリニックで実施された検査の結果が治験データとして用いられること、及び治験依頼者等が当該Bクリニックのデータを直接閲覧することが説明文書に記載されていること。
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2.被験者の適格性確認は、(A病院の)治験責任医師及び治験分担医師の責任であること(GCP第44条)。
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3.Bクリニックで実施された検査に関する原資料が、GCP第41条第2項で定める期間保存されること。
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4.電子カルテ情報がA病院とBクリニックで共有されており、Bクリニックでの検査結果は、A病院と治験依頼者の二者契約では直接閲覧を行うことはできないため、Bクリニックも含めた三者契約を締結すること。
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契約については、直接閲覧以外にも、原資料の保存、守秘義務、治験依頼者のモニタリング・監査、治験審査委員会及び規制当局の調査を受け入れる旨、健康被害補償(侵襲的検査を実施する場合)、費用の負担などに関する項目を盛り込むべきと考えられます。
なお、以上のような煩雑な手順等による被験者をはじめとした関係者の負担を最小限にするためにも、最初の検査からA病院で実施することを再度検討されてはいかがでしょうか。