医薬品評価委員会 2017-61 同意撤回被験者の有害事象情報の提供

関連分類:副作用等報告

初回公開年月:2018年02月

質問

治験参加に対して同意撤回をした患者の、同意撤回後に発生した有害事象情報を収集したいと治験依頼者より要求されている事案があります。

該当の患者が同意撤回をする際、追跡調査(該当試験は抗がん剤の試験で生存調査があります)も含めて同意を撤回したいとの気持ちを確認しており、カルテに記録をしています。該当の治験では同意撤回書を作成しており、追跡調査についても撤回とするかを選択するようになっています。該当の患者は遠方の方であり、原疾患の悪化で当院に通院できなくなったため、主治医が電話で同意撤回の意思を確認しカルテに記録しました。

治験依頼者は、同意撤回をしていたとしても、副作用報告が義務づけられているので、実施医療機関が日常診療で得る情報の範囲でかまわないので有害事象情報を収集したいと言っており、協議をしても一貫して意見が変わらない状況です。

治験責任医師及び治験事務局としては、同意撤回をしている患者のその後の情報を出すことは、治験の倫理に反すると考えており、該当患者の情報を提供することはできないと考えています。それを受けて、治験依頼者は、被験者への説明文書に予め「追跡調査を含めた同意撤回をしたとしても、その後の有害事象を収集することがある」旨記載しておいて同意をとれば、同意撤回後の有害事象情報の収集に際して問題はないとし、説明文書の改訂を要求してきています。

当院としては、同意撤回をした患者のその後の情報を治験依頼者に提供することには問題があると考えていますが、上記の治験依頼者からの要求はGCP上妥当なものでしょうか?

製薬協見解

ご質問の事例では、被験者が治験実施医療機関への通院が困難となり、治験参加を取りやめる旨の被験者の意思が確認され、その際に今後の追跡調査も併せて協力しないことが確認されています。

当該被験者は来院できないため、電話にて可能な範囲で安全性情報の収集を行い、治験依頼者へ提供することも一方法であると考えます。その際には、被験者に対して治験として安全性情報の収集を行うことの重要性を十分に説明し、情報の収集および提供に関する同意を得ることが必要ですが、それでもなお被験者の同意が得られない場合は、GCP第1条ガイダンス2(3)「被験者の人権の保護、…が最も重要であり、科学と社会のための利益よりも優先されるべきである。」に鑑み、治験依頼者はこの方法による情報収集を断念せざるを得ないと考えます。

仮に当該被験者が現在通院している他院から診療情報の提供を受ける場合、当該他院は情報の使用目的を明確にした上で、当該被験者から要配慮個人情報の取得及び第三者提供に関する同意を取得した後に情報を収集しなければなりません(個人情報保護法第17条第2項及び第23条第1項)。

したがいまして、被験者が同意撤回後の情報収集への協力の意思がない限りは、治験依頼者が安全性情報を収集することはできないと考えます。

被験者の意思は十分尊重する必要がありますが、安全性情報を収集することもまた治験の実施においては極めて重要なことであります。被験者の理解・協力を得るために治験実施医療機関には最大限のご協力をお願いしたいと考えます。

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