医薬品評価委員会 2004-06 治験中に被験者が受診した他の医療機関からの診療情報収集

関連分類:その他

初回公開年月:2004年12月
改訂公開年月:2021年12月

質問

当院で治験実施中の患者さまが他の医療機関を受診された場合,その医療機関における必要な患者情報を入手するために,主治医に書面やお電話で情報提供をご依頼したのにもかかわらず,思うように結果が得られないことがあります。

何度か情報収集に努めたにもかかわらず,十分な情報が提供されなかった場合,その時点で得られた情報のみを報告すればよいのでしょうか。

また,他の医療機関に対して,臨床試験における情報収集の目的で,カルテの開示を求めることは可能でしょうか。

そのような場合には,法律を守るためにどのような手続きをとればよいのでしょうか。

臨床試験における,カルテ開示に関する法的手続きなどを含めてお教えいただきたく,よろしくお願い申し上げます。

製薬協見解

医療機関の間での診療情報提供について、現在調査した範囲では、医療法第1条の4第3項、保険医療機関及び保険医療養担当規則第16条の2、及び診療情報等の提供に関する指針(平成15年9月12日 医政発第0912001号 「診療情報等の提供に関する指針の策定について〔医師法〕」の別添)の10にありますが、いずれも提供する情報の範囲については明記してありません。

治験の安全性、有効性を確認(特に、被験者の安全性を確保)する上で、治験中の他の医療機関による診療情報は重要です。

他の医療機関に診療情報の提供を依頼する手順として以下のことが考えられます。まず、被験者の方から文書で同意を得た上で、その同意文書を添付して治験責任医師が文書で依頼します。依頼をされる際に、治験に参加していただいている被験者の安全性確保に他の医療機関の診療情報が重要であること、必要とされる情報の範囲を明確にすると他の医療機関も診療情報の提供について理解し、提供していただきやすいと考えます。提供された情報及び被験者の方から得た情報(他の医療機関で薬剤が処方されている場合は、その薬を持参してもらい内容を確認します)の範囲で症例報告書に記載することになります。

なお、想定はできませんがご質問にあります、他の医療機関の診療録の内容を確認する必要性が生じた場合、他の医療機関の診療録の内容を確認することが必要と判断された場合は、被験者の方の同意を文書で得た上で、治験責任医師が上記と同様にして依頼することになります。ただし、診療録の第三者への開示については、法的に定められた手続きは調査した範囲では見当たりませんので、相手の医療機関とご相談の上、その院内手続きを尊重して行うことになると考えます。また、診療録の開示は通常患者本人又は患者が死亡の場合は遺族にのみ認められていること、及び個人情報の保護に十分留意されることが必要と考えます。

いずれにしても、診療録に適宜これらを記録し、また、診療情報の提供の依頼及び情報の受領は文書で行い、原資料の一部として保管するようお願いします。

見解改訂理由

関係法令の整備に伴い、見解文を一部変更しました。

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