医薬品評価委員会 2009-12 治験審査委員会における「報告」の位置づけ(その1)

関連分類:治験審査委員会

初回公開年月:2009年07月

質問

ある実施医療機関において、初回手続きから現在までは、軽微な変更に関しては迅速審査が実施されていました。SMOが治験事務局、CRC業務を支援している実施医療機関です。その実施医療機関において、2009年4月にSOPが改訂され、迅速審査の項目以外に、委員会報告という項目が増えました。内容は以下のとおりです。

治験審査委員会は、既に承認された進行中の治験に関する事務的な変更(治験依頼者の組織・体制の変更、実施医療機関の名称・診療科名の変更、治験責任医師の職名変更、モニターの変更等)又は治験実施計画書等の誤植の訂正(訂正内容が治験の実施に影響を及ぼす場合は除く)については、治験審査委員会での報告事項として取り扱うことができる。ただし、報告事項に該当する場合であっても、院長より調査審議を求められた場合(治験審査依頼書の提出があった場合)、又は委員長が調査審議の必要があると判断した場合はこの限りではない。

このSOPを改訂したSMO(事務局担当者)に理由を問い合わせたところ、GCP運用通知第28条2項2(7)<2>(以下条文参照)が、IRBにおける報告対応が可である根拠との返答でした。

被験者に対する緊急の危険を回避するため等医療上やむを得ない場合、又は変更が事務的事項に関するものである場合(例:略)を除き、治験審査委員会から承認の文書を得る前に治験実施計画書からの逸脱又は変更を開始しないよう求める規定を定めること。

  1. 1.
    GCP運用通知第28条2項2(7)<2>の内容は、IRBの審査・報告を規定するような部分ではないと思うのですが、SMOのいう報告対応が可との根拠となるのでしょうか。
  2. 2.
    GCPにおいて、IRB報告という対応方法は、存在しないとの認識でしたが、報告対応で問題ないのでしょうか。
  3. 3.
    軽微な変更(被験者に影響を与えない変更)について、審査不要であるとの病院の対応であった場合、モニターとしては、どのような行動を実施すべきでしょうか。

製薬協見解

  1. 1.
    GCP第28条第2項ガイダンス2(7)<2>は、治験審査委員会(以下、IRB)の設置者が作成する手順書の内容について規定したものであり、緊急の危険回避のために医療上やむを得ない場合、又は変更が事務的変更である場合以外にはIRB審査で承認の文書が出る前に治験実施計画書からの逸脱又は変更を開始しないよう求める規定を作ることが求められているものです。つまり、IRB審査が不要な範囲や審査方法について規定しているものではなく、報告対応が可との根拠とはなり得ません。
  2. 2.
    実施医療機関の長からの依頼により、IRB審査が行われる内容としましては、大きく分けて「治験を行うことの適否」(GCP第30条)と「治験を継続することの適否(「継続審査)」(GCP第31条)の2つがあります。また、審査方法としましては、会議による審査と迅速審査とがありますが、「報告」という審査方法はGCPに示されていません。
    実施医療機関の長は、治験期間を通じて、IRB審査の対象となる文書を最新のものにする必要があり、治験依頼者から提出されました最新の文書をIRBにも提出することになります。この際、この最新の文書の内容がGCP第31条に該当する内容であったり、又は同第2項で規定されていますように「その他実施医療機関の長が必要であると認めたとき」に該当する内容であった場合、IRBは継続審査を行う必要があります。これに対しまして、ご質問のような治験依頼者からの事務的変更に係る最新の文書提出に対しまして、実施医療機関の長の判断により、IRBに最新の文書を提出するという対応だけが行われるケースもあるかと考えられます。
  3. 3.
    継続審査の内容につきましては、GCP第31条に規定されています。この規定のうち、「その他実施医療機関の長が必要であると認めたとき」としまして、GCP第31条第2項ガイダンス3には「治験の実施に影響を与えるもので、被験者に対する精神的及び身体的侵襲の可能性があり、被験者への危険を増大させる変更をいう。」と規定されております。したがって、軽微な変更に対します継続審査の必要性については、実施医療機関の長が判断することになります。
    治験の変更が事務的変更に該当する場合には、モニターは当該変更を実施医療機関へ通知する(又は通知されていることを確認する)ことで十分かと思われます。しかし、被験者の人権の保護、安全性確保の面から治験依頼者としまして、IRBの意見を聞いた方が良いのではないかと考えている変更の場合、実施医療機関の長の判断について確認しておく必要があると考えられます。

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