WTOにおける知的財産の保護義務免除の議論について

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2022年05月11日
日本製薬工業協会
会長 岡田安史

2022年5月3日、WTO事務局がCOVID-19に関する各国の知的財産保護義務の免除(TRIPSウェーバー)に関する欧州連合、インド、南アフリカ、米国による非公式な議論の結果に関する文書をTRIPS理事会に提出しましたが、これは日本製薬工業協会及びメンバー企業の意見とは異なるものです。

発展途上国と先進国の製薬企業によるCOVID-19ワクチン生産量は、最初のワクチンが承認されてから1年以内に120億ドーズに達し、現在毎月10億ドーズ以上のワクチンを生産することができます。生産不足の問題は先進国や発展途上国の多くの企業が関与する前例のない協力のおかげで解決されました。かかるワクチンの開発や生産拡大のための協力は国際的な知的財産保護を前提としてなされたものです。
ワクチンの生産には生産設備、原材料調達、ノウハウなど解決すべき多くの技術的課題があり、TRIPSウェーバーによってワクチンの生産拡大が可能になる訳ではありません。
TRIPSウェーバーはCOVID-19ワクチンがまだ承認されていなかった2020年にワクチン生産を促す策として提案されましたが、COVID-19ワクチンへのアクセスに知的財産が障壁になっていないことは上述のように既に明らかであり、TRIPSウェーバーがCOVID-19ワクチンの生産不足の解決策として間違ったものであること、さらに十分な生産量が得られている現状では時機を失した不要な解決策であることが明らかです。

現在の課題は、ワクチンの生産不足ではなくワクチンを必要とする人々にどのようにワクチンを届けるかにあります。生産不足の問題が解決している現在、TRIPSウェーバーの提案は見送られるべきであり、ワクチンを必要とする人々にワクチンを届けるための課題である薬事行政、流通、医療従事者等のインフラ改善に議論を集中すべきです。

我々製薬企業は、一日でも早く新型コロナウイルス感染症が収束し、一人でも多くの命を救うために、各国行政機関をはじめ関係者の皆様とより緊密な連携を図りながら、引き続き全力で取り組んでまいる所存です。

以上

お問い合わせ先

日本製薬工業協会 広報部

電話
03-3241-0374

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