医薬品評価委員会 2008-10 治験責任医師不在中の重篤な有害事象報告

関連分類:副作用等報告

初回公開年月:2008年08月
改訂公開年月:2021年03月

質問

背景

被験者の家族からCRCに電話が入り、昨日、被験者が外出中に倒れ、他院に救急車で搬送されたが、死亡、死因は脳梗塞と診断されたと、CRCからモニターに連絡が入った。

2008.6.9(月)

被験者の主治医は治験分担医師であった。治験責任医師は海外出張中であった。治験分担医師から搬送先の主治医に電話をしていただき、入院時の状況、処置内容、治験薬との因果関係に関する参考意見などを聞いていただいた。

2008.6.10(火)

治験分担医師に「重篤な有害事象に関する速報」を作成していただき、Faxにて受領した。

2008.6.11(水)

治験実施計画書によると、治験責任医師は当該SAEを知ってから5暦日以内に詳細報「重篤な有害事象に関する報告書」を治験依頼者及び実施医療機関の長に提出しなければならないことになっている。しかし、治験責任医師は2008.6.18まで帰国しない。

  1. 1.
    治験依頼者の情報入手日はCRCから連絡が入った日か、治験分担医師が他院から情報入手し、その情報(速報)を治験依頼者がFaxで受領した日か?CRCは医学的判断を伴わない業務に限られると思いますが、薬事法施行規則では治験依頼者が重篤な有害事象を知ったときから報告期限が設定されています(副作用だった場合)。
  2. 2.
    報告者は治験分担医師でもよいか?
    GCP第48条によれば、重篤な有害事象発生の医療機関の長及び治験依頼者への報告は治験責任医師の責務となっています。しかし、上記の場合、治験責任医師が帰国するまで待つと、重要な安全性情報が速やかに伝達されないことになってしまいます。
  3. 3.
    治験実施計画書に治験責任医師が重篤な有害事象に関する報告を行うと記載されている場合、治験分担医師が治験責任医師に代わってこれを行うことはGCP第46条の医療上やむを得ない逸脱などに相当しますか?

製薬協見解

1.のご質問について

治験依頼者が重篤な有害事象(SAE)の情報を入手する情報源としましては、情報提供者の医学的資格の有無は問われていません。したがいまして、ご質問のケースでの治験依頼者における情報入手日は、情報源がCRC/治験分担医師であるかに関わらず、治験依頼者がはじめて情報を知った日になります。

2.のご質問について

ご質問にも記載されていますように、SAE発生の報告は治験責任医師の責務です。しかし、安全性情報報告の緊急性を優先して治験分担医師から治験依頼者及び実施医療機関の長に報告していただくこともやむを得ない対応と考えられます。ただし、治験分担医師は、海外出張中の治験責任医師に必要な情報を提供するとともに必要な判断について、適切に確認しておくことが必要と考えられます。さらに、治験責任医師は、帰国後、速やかに治験分担医師による報告内容を確認し、その旨を治験依頼者及び実施医療機関の長に報告することも必要と思われます。なお、これら治験分担医師と治験責任医師とが協議・確認したことは記録に残しておく必要があります。

3.のご質問について

今回のケースは、GCP第46条第1項に規定されています「被験者の緊急の危険を回避するためその他の医療上やむを得ない理由により治験実施計画書に従わなかった場合」には該当しないと考えます。

なお、GCP第42条に「治験責任医師は、次に掲げる要件を満たしていなければならない。(中略)3)治験を行うのに必要な時間的余裕を有すること」と規定されていますように、治験責任医師は、治験中は学会や海外出張の際もGCPに定められた治験責任医師の責務を果たす義務があります。そのため治験期間中に、国内・海外に出張される場合には、その間の対応について治験分担医師、CRC及び治験依頼者と十分に協議しておくことが重要と考えられます。

見解改訂理由

厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課及び医薬安全対策課からの事務連絡(令和2年12月9日)「E2B(R3)実装ガイドに対応した市販後副作用等報告及び 治験副作用等報告に関するQ&Aの改正について」の発出に伴い、見解文の一部を見直しました。また、薬機法の施行(平成26年11月25日)に伴い、質問文に軽微な記載整備を行いました。

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