医薬品評価委員会 2008-09 理事長による実施医療機関の長の業務の実施

関連分類:その他

初回公開年月:2008年08月
改訂公開年月:2021年03月

質問

医療法人の医療機関の場合、GCPにおける実施医療機関の長とは、理事長と病院長のどちらが適切でしょうか。あるいは、どちらでも良いのでしょうか。

背景

ある医療法人の実施医療機関は、かつてはA病院長+B副院長の体制であり、この当時に治験受託のための実施体制の構築(院内SOPの作成等)に着手しました。

治験実施体制構築着手と同時期に、医療法人化に伴い、A理事長とB病院長へと体制が変更になりました。院内SOPでは、契約、治験審査委員会(院外)への審査依頼や治験依頼者・治験責任医師への通知等、GCP上で言う「実施医療機関の長の業務」を行う者は病院長と記載されていましたが、実際にはA理事長が全ての「実施医療機関の長の業務」を実施しておりました。治験依頼者は、治験実施体制と院内SOPとの矛盾にしばらく時間が経過してから気づいたため(治験の書類上は全て、病院長Aとなっておりました)、事実関係と適切な対応方法について実施医療機関と協議しました。実施医療機関としては、GCP上で言う「実施医療機関の長の」の責務は、A理事長が果たしており、本来であれば、院内SOPにおける実施医療機関の長を、病院長ではなく理事長と記載すべきであったとの見解でした。このため、治験依頼者より院内SOPにおける病院長を理事長へ改訂すること及び誤記載について治験依頼者へ報告文書を提供することを要請致しました。

一方、GCP上の実施医療機関の長は、理事長ではGCP違反となる可能性があり、病院長とすべきであるから、A理事長の業務を速やかにB病院長へ移行すべきとのお考えで対応を要請されている他の治験依頼者もあるようです。

私は、GCP上で言う「実施医療機関の長」は、GCP上の責務が果たせるのであれば理事長、 病院長いずれでも良いと考えています。しかし,医療法上の理事長と病院長の責任の違い、権限の違いなど良く分りませんが、医療法上の病院長でなければ、GCP上の実施医療機関の長の責務は果たせず、結果として理事長はGCP上の実施医療機関の長には不適切というようなことはあるのでしょうか。

製薬協見解

GCP省令では「実施医療機関の長」の定義は明確には規定されておりません。

一方、医療法では「医療機関の管理者」(第4章 病院、診療所及び助産所 第2節 管理 第10条等)及び「理事長」(第6章 医療法人 第3節 機関 第5款 理事 第46条の6)がそれぞれ規定されており、「理事長」は医療法人の役員です。また、両者の役割について、「医療機関の管理者」は第10条等に、「理事長」は「理事長は、医療法人を代表し、医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」(第46条の6の2)とそれぞれ規定されています。

治験を実施する上での実施医療機関の長の役割につきましては、GCP第36条等に規定されていますが、その内容は医療法による「理事長」というよりは「医療機関の管理者」に近いものと考えられます。また、当該医療機関におきまして治験審査委員会が設置されていた場合、「理事長」が実施医療機関の長として治験審査委員会の設置者となると、医療法人が設置した治験審査委員会とみなされる可能性があります(医療法人設置治験審査委員会はGCP省令では認められておりません。過去の見解2007-04参照)。

したがいまして、GCP省令上は、「理事長」が実施医療機関の長となることについて明確には規定されておりませんが、上記のような点を考慮しますと、B病院長が実施医療機関の長としての役割を担うことが望ましいと考えられます。

見解改訂理由

医療法の改正に伴い、参照する条項及び見解文の一部を変更しました。

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