医薬品評価委員会 2010-41 身元が明らかでない者の治験への組入れ

関連分類:同意の取得

初回公開年月:2011年01月
改訂公開年月:2021年03月

質問

緊急状況下(例えば、心筋梗塞とか脳梗塞)において救命的処置が必要で病院に搬送される患者さんには、その時点で身元が明らかでない患者さんもいることが考えられます。GCP第55条ガイダンス3(緊急状況下における救命的治験)に「被験者の身元が明らかでない者を治験の対象としないこと」と記載されています。

「身元が明らかでない者を治験の対象(あるいは被験者)としないこと」とは言わずにこのような表現されているのはどういうことでしょうか。そのため、この文言について、以下の(1)のように解釈すべきか(2)のように解釈すべきか迷っております。

  1. 搬送時に「身元が明らかでない患者さん」を被験者としない(このような患者さんには被験薬を使用しない)。
  2. 搬送時に「身元が明らかでない患者さん」において、一旦、緊急状況下における救命的治験の被験者として被験薬を使用し、その後も身元が明らかでなかった場合は、治験の対象から除外する。

「被験者の身元が明らかでない者を治験の対象としないこと」の意味は、上記の(1)と解釈すべきでしょうか、(2)と解釈すべきでしょうか。

製薬協見解

GCP第55条第1項には、第1項各号のすべてに該当する場合に限り、被験者となるべき者及び代諾者となるべき者の同意を得ずに当該被験者となるべき者を治験に参加させることができる旨が規定されています。これは治験への参加は文書同意が必須となりますが、第1項各号に該当する場合は、ひとまず、患者の救命を優先して治験に参加させることが出来るという趣旨です。

このような場合、同条第2項に規定されていますように、治験責任医師等は、治験参加後、速やかに被験者又は代諾者となるべき者に対して当該治験に関する事項について適切な説明を行い、当該治験への参加について文書により同意を得なければなりません。

この第2項規定に対して、「被験者の身元が明らかでない者」であった場合、治験参加後に、被験者又は代諾者となるべき者に説明することができません。そのため、緊急搬送された患者の身元について何ら情報がない(身元情報を得られる可能性が全く考えられない)場合、治験への参加は見送るべきと考えられます。

見解改訂理由

GCPガイダンス(令和2年8月31日薬生薬審発0831第15号)の発出に伴い、質問文の軽微な記載整備を行いました。

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