くすりの情報Q&A Q55.近い将来、どのようなくすりが期待されていますか。

回答

これまでに決定的な治療薬が開発されていないアルツハイマー病や糖尿病合併症、がん、免疫疾患などのくすりの開発が期待されており、その期待に応えるために、現在、製薬産業は開発への取り組みに力を入れています。

解説

現在、新しいくすり(新薬)をつくり出すことのできる国は、世界をみても数か国しかありません。日本はその数少ない国のひとつです。

日本を含めて、アメリカ、イギリス、スイスといった新しいくすりをつくり出す国々は、わずか100年という近代的なくすりの歴史の中で技術革新を繰り返し、画期的とも呼べるくすりを次々に生み出してきました。それらのくすりは世界中の人々の健康と医療の発展に大きな貢献をしてきました。

次のページのコラムは、医師にアンケート調査をおこない、各種の病気に対する治療の満足度と、くすりの貢献度の関係について、図で表したものです。全体として、医師が満足のいく治療ができたと感じるのは、くすりの貢献度が高い場合であるという傾向がみられます。

たとえば、アレルギー性鼻炎、喘息(ぜんそく)、糖尿病、てんかん、脂質異常症などは、くすりの貢献度も治療の満足度も高くなっています。

しかし一方では、治療が必要とされながら、そのニーズ(治療への要望)が満たされてない病気も数多く残されています。膵(すい)がん、アルツハイマー病、糖尿病性神経障害や糖尿病性腎症(じんしょう)などの病気です。これらは、くすりの貢献度も治療の満足度も低いままです。

製薬産業では、これらの病気に対する革新的なくすりを開発することが、重要な使命と考え、開発に力を注いでいます。

くすりの貢献度が低い病気に対する新しいくすりは、約70品目が開発中(2013年1月現在)であり、近い将来、治療に使われるようになることが期待されます。その実現により、くすりによって治(なお)る病気がひとつでも増え、ひとりでも多くの患者さんの治療や健康に貢献することを目指しています。

MINIコラム 治療満足度別にみた新薬の開発状況

治療満足度について2005年のデータと2010年のデータを比較すると、新薬の発売により、関節リウマチや骨粗鬆(こつそしょう)症、脳梗塞(のうこうそく)などの多くの領域で治療満足度と治療に対する薬剤の貢献度が向上しました。しかし、新しく開発中もしくは承認される予定のくすりのうち、12.6%(42品目)は、未だに病気の治療に対するくすりの貢献度も、治療に対する医師の満足度も低い領域(左下の象限)のくすりです。

製薬産業は、これからも満たされていない医療ニーズに応えることができるようなくすりの開発に取り組んでまいります。

  • 治療満足度は2010年、新薬の開発状況は2013年1月調べ
    ○の中の数字は、国内医薬品売上高上位20社の新薬開発品目数(Ph1~申請中)。

治療満足度・薬剤貢献度(2010年)別にみた新薬開発件数(2013年1月)

出典:「政策研ニュースNo.38」(2013年3月)より引用。

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