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6.くすりの役割と未来

Q47がんの治療薬の効果や副作用を予測することができる検査があるようですが。

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遺伝子の検査をすることで、特定のがんの治療薬の効果が出るかどうかを検査できるようになりました。患者さん個人のくすりに対する反応性を治療の前に検査することで、くすりが有効であるかどうかだけでなく、副作用の可能性も確認できます。

解 説

特定のがん患者さんの体内のがん関連遺伝子を検査することで、そのがんの治療には、どのくすりが有効なのかを判断する検査です。

従来のがんの治療薬は、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃し、吐(は)き気やおう吐(と)、髪の毛が抜けるなどのさまざまな副作用を発生させていました。そのため、治療薬の使用を控えるケースも多くありました。

現在では、がん関連遺伝子の研究から、特定の分子だけを狙って攻撃する治療薬(分子標的薬 Q48 参照)も開発されています。

この分子標的薬は、従来のがん治療薬で問題となってきた、全身性の副作用問題の解決につながるくすりとして期待されています。

たとえば、乳がんの原因のヒト表皮細胞成長因子受容体(HER-2)をターゲットにした治療薬「トラスツズマブ」、大腸がんのK-ras 遺伝子変異をターゲットとした治療薬「セツキシマブ」、非小細胞肺がんのEGFR遺伝子変異をターゲットとした治療薬「ゲフィチニブ」「エルロチニブ」などがあります。いずれも、ターゲットの遺伝子の存在が確認できた場合には、これらの薬剤の使用が可能となります。正常な細胞を攻撃することなく、がん細胞だけを攻撃でき、副作用についてもある程度は予測され、その症状も軽減されます。

さらに、薬剤の効果や副作用を予測する「コンパニオン診断薬」と呼ばれる診断薬も、開発されるようになりました。この診断薬を使えば、特定のがん治療薬が効く可能性の高い患者さんを選別できるため、高い治療効果が期待され、無駄な治療もしなくて済みます。コンパニオン診断薬は、がん治療薬と同時に開発され、前述の「ゲフィチニブ」や血液がんの治療薬「モガムリズマブ」、肺がん治療薬「クリゾチニブ」には、それぞれコンパニオン診断薬があります。これらの治療薬や診断薬の研究開発が、個人に最適な治療を実現する「オーダーメード医療」につながるものと期待されます。

また、がんになりやすい遺伝子をもっているかどうかを確認するために、遺伝子検査をおこなうケースも増えてきました。血縁者にがん患者が多い場合、遺伝子を検査することで、どのようながんになる可能性があるのか、がんにならないようにするには、どのような生活を送ればよいのかなど、がんに備えることが狙いです。

図表・コラム

47|遺伝子を検査し、使用するがん治療薬

調べるものと薬剤

病名 薬剤 調べるもの 効果の予測
乳がん トラスツズマブ
(ハーセプチン)
HER-2たんぱく たんぱく量が多い人は治療効果が高い
ラパチニブ
(タイケルブ)
非小細胞肺がん ゲフィチニブ
(イレッサ)
EGFR遺伝子 遺伝子変異があると効果が高い
エルロチニブ
(タルセバ)
大腸がん セツキシマブ
(アービタックス)
K-ras K-ras遺伝子に変異がないと効果が高い
※K-ras遺伝子に変異がなくてもBRAFに変異があると治療効果がない。
パニツムマブ
(ベクティビックス)

EGFRファミリー以外

病名 薬剤 調べるもの 効果の予測
慢性骨髄性白血病 イマチニブ
(グリベック)
Bcr-Abl 融合たんぱくが検出されていると効果が高い
大腸がん イリノテカン
(カンプト、トポテシン)
UGT1A1遺伝子 UGT1A1遺伝子多型であると副作用が出やすい
くすりの情報Q&A55

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