くすりの情報Q&A Q46.ゲノム創薬とは、どういうものですか。

回答

ゲノム(遺伝子情報)がつくるさまざまなたんぱく質の構造や働きを解明することで、今までにない新しいくすりが誕生する可能性があります。これをゲノム創薬といいます。

解説

ゲノム(遺伝子情報)とは、ある生き物がもっている遺伝子の情報のすべてを意味します。ヒトゲノムはもちろん、動植物から微生物までのあらゆる生物を研究の対象とし、新しいくすりの開発に活かそうというのが、ゲノム創薬です。

ゲノム創薬には、数多くのメリットがあります。

たとえば、現在のくすりの開発では、くすりの候補となる物質を発見すると、その作用を調べるために膨大(ぼうだい)なスクリーニング(選別試験)を繰り返しおこなう必要があります。そこでは経験や偶然が、くすりの開発を大きく左右します。

しかしゲノム創薬の場合には、遺伝子のもつ情報をもとに、あらかじめ研究の対象(一定の病気にかかわるたんぱく質など)が特定されるので、論理的かつ合理的な方法でくすりの開発に取り組むことができます。その分だけ開発期間を短くし、開発費用も減らせる可能性があります。

また病気には、複雑な段階を経(へ)て発症するものも少なくありません。たんぱく質の働きなどから、病気の発症する詳細なプロセスが解明されれば、さまざまな段階を対象としたくすりの研究が可能となります。それだけくすりの開発の幅が広がり、同じ病気でもいろいろなタイプの治療薬をつくることができるようになります。

あるいは病気の原因を特定できれば、原因そのものに直接作用するくすりや、原因物質をつくらせないくすりの開発も可能です。それは効き目を向上させ、副作用の少ないくすりの開発にもつながります。

さらにゲノム創薬により、患者さんごとの遺伝子情報をもとにした、一人ひとりに合ったくすりの開発もできるようになると考えられています。

同じ病気でも、患者さんごとの体質や病態に応じた効率的なくすりの使用ができるわけです。それは「オーダーメード医療」(Q47参照)の可能性をひらくものともいえます。

Q47

図表・コラム

46|ゲノム創薬

コンピュータ上で、病因の遺伝子の探索やたんぱく質の構造を再現し、それらに作用するくすりの候補を探し出します。

ゲノム創薬(拡大)

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