くすりの情報Q&A Q45.これからのワクチンは、どのようになるのでしょう。

回答

今までワクチンがなかった疾患に対する新規ワクチン、乳幼児の肉体的な負担軽減のための混合ワクチン、少ない抗原(こうげん)量で十分な免疫反応を得るためのアジュバント技術など、多くの新しいワクチンの研究開発がなされており、ワクチンの可能性は広がっています。

解説

現在、混合ワクチンのニーズが高まっています。ワクチンで予防できる病気の種類が増えるにつれて、子供、特に乳幼児が受ける予防ワクチンの数は増えています。

混合ワクチンは、一つのワクチンで複数の病原体の感染を予防できますので、多くのワクチンを短時間で受ける必要がある子供たちにとって大きな負担の軽減になり、近年では積極的に開発が進められています。

子供だけでなく、高齢者や女性向けのワクチンも開発されています。

女性向けの代表的なものが子宮頸(けい)がんの予防ワクチンです。子宮頸がんの90%以上は、発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発症することがわかっています。HPVは、もともと「いぼ」をつくるウイルスで、多くの人が感染しますが、このウイルスの中でも高リスク型といわれるウイルスに感染した女性の中の少数が、ウイルスを体から排除できずに細胞の異常、前がん状態を経(へ)て子宮頸がんになってしまいます。子宮頸がんのワクチンは長期間にわたって抗体をつくり、HPVの感染を予防するといわれています。

また、ワクチンそのものではありませんが、ワクチンの効用を補強するものも開発されています。近年に開発されているワクチンの多くが、アジュバントといわれる免疫(めんえき)反応を強める物質を含んでいます。アジュバントの利点は、ワクチンの成分である病原体の量が少なくても病気と闘うのに十分な免疫が得られることです。

たとえば、新型インフルエンザの流行の初期段階では、ウイルスの型が判明していないため、ワクチンはありません。ウイルスが判明してから初めてワクチンの生産が可能になります。一方で病気の流行は待ったなしで進みますので、一日も早く国民がワクチンを接種できるようにするために、一人あたりの量が少なくて済むアジュバント技術を組み合わせることにより、短期間で全国民分のワクチンをつくることが可能になります。

近年、がんを治療するためのワクチンの研究が世界各国で進められています。がん細胞の表面には、正常な細胞と比較して特徴的なたんぱく質が多くみられる場合があります。このたんぱく質を標的にして、がん細胞を攻撃するのが、私たちの体内にあるキラーT細胞などの免疫細胞です。私たちの体はこのような仕組みでがん細胞が増殖するのを抑(おさ)えています。この性質を利用した、がんの治療が期待されています。

今後、注射に頼らなくてもよい「食べるワクチン」や「皮膚に貼(は)るだけのワクチン」など、利便性を高めたさらにいろいろなワクチンが登場してくることでしょう。

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