くすりの情報Q&A Q36.日本で開発され、世界で注目されているくすりはありますか。

回答

新薬を創出できる国は世界にそう多くはありません。その中で、日本の製薬企業は世界で3番目に多くの新薬を創出する力を持っています。これまでに、多くのくすりが日本の製薬企業によって開発され、国際的に高い評価を受けてきました。その例をいくつかご紹介しましょう。

解説

高血圧治療薬

  • カンデサルタン
  • オルメサルタン

この2つはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(じゅようたいきっこうやく)(ARB)という分類のくすりで、高血圧治療の第一選択薬の一つとして世界的に広く処方されています。昇圧物質アンジオテンシンⅡと拮抗することにより血圧降下作用を示します。1970年代にARBの基本骨格を日本の製薬企業が創製し、その後、最初の国産のARBカンデサルタンが1997年に、2番目のオルメサルタンが2004年に登場しました。

前立腺がん治療薬

  • リュープロレリン

リュープロレリンは1985年に開発され、前立腺がんに内分泌(ホルモン)療法という新たな道をひらきました。その後リュープロレリンは、1か月にわたり少しずつくすりを放出するマイクロカプセル製剤技術を活用した注射剤も開発・販売されました。(現在では一度の注射で3か月間効果が持続するタイプもあります)。

脂質異常症治療薬

  • プラバスタチン
  • ロスバスタチン

スタチンは、体内でコレステロールが合成されるのを阻害することで、脂質異常症を改善するくすりの総称です。1973年に日本で青カビから最初のスタチンが発見されて以来、8種類のスタチンが日本や世界から販売され、脂質異常症治療を大きく変えました。日本発のスタチンとして、プラバスタチンが世界各国で2万例を超える臨床試験を経て1989年に誕生、また、強力な悪玉コレステロールの低下作用をもつロスバスタチンが国内で2005年に登場しました。

免疫抑制薬

  • タクロリムス

タクロリムスは、筑波山麓(さんろく)の放線菌から発見され、臓器(肝臓)移植における拒絶反応を効果的かつ安全に抑(おさ)える免疫抑制薬として1993年に発売されました。このくすりは、臓器移植の盛んな欧米でまず高い評価を受けました。そして腎(じん)移植、骨髄(こつずい)移植など適応範囲も広がり、本格化しつつある日本の臓器移植にも大きな役割を果たしています。

過活動膀胱(ぼうこう)治療薬

  • ソリフェナシン

過活動膀胱は尿意切迫(せっぱく)感、頻尿(ひんにょう)、切迫性尿失禁などの症状を示す病気です。中高年に多く、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。ソリフェナシンは、膀胱平滑筋のムスカリン受容体をブロックすることで膀胱の過剰な収縮を抑(おさ)え、過活動膀胱に伴う症状を改善します。2004年の欧州での発売以来、すでに約80の国や地域で販売されています。

抗菌薬

  • レボフロキサシン

1985年に日本で開発された抗菌薬であるオフロキサシンからさらなる研究を重ね、1993年に誕生したのが幅広い抗菌活性をもつレボフロキサシンです。抗菌力はオフロキサシンの2 倍、適応菌種は24、適応疾患は43です。この2 つのくすりは、どちらも世界的に歴史に残る抗菌薬となっています。

アルツハイマー型認知症(AD)治療薬

  • 塩酸ドネペジル

高齢化にともないADの患者数は全世界で増加し、社会問題となっています。塩酸ドネペジルはアセチルコリン分解酵素を阻害することにより、脳内のアセチルコリン量を増加させ、AD の症状の進行を抑制します。1996年に米国で承認を取得して以来、90か国以上で承認され、ADの薬物療法の礎を築いた薬剤として高い評価を受けています。

抗精神病薬

  • アリピプラゾール

アリピプラゾールは、1987年に日本で合成され、2002年に世界初のドパミン神経の伝達を安定化する作用をもつ抗精神病薬として米国で発売されました。その独特の作用機序を生かした開発が進められ、現在は統合失調症、双極性障害における躁(そう)症状の改善および、うつ病・うつ状態など世界で13の適応症を取得し、60か国・地域で発売しています。

2型糖尿病治療薬

  • ピオグリタゾン

ピオグリタゾンは、2型糖尿病に特徴的なインスリン抵抗性を改善し、膵臓(すいぞう)に負担をかけずに血糖値を下げる画期的新薬として1999年に米国、日本で発売されました。肥満やそれに関連する疾患の研究の過程でインスリン抵抗性を改善する世界初の化合物シグリタゾンが発見され、その後さらに研究を重ねた結果、ピオグリタゾンが生まれました。現在、世界約90か国で販売されています。

関節リウマチ治療薬

  • トシリズマブ

トシリズマブは2005年に希少(きしょう)疾患であるキャッスルマン病の治療薬として、世界で初めて承認された国産初の抗体医薬品です。製薬企業と大学の産学連携で進められた研究により生まれたくすりです。その後、関節リウマチ、若年性突発性関節炎など、さまざまな自己免疫疾患の治療薬としても有効なことが認められ、現在では90か国以上で販売されています。

成人T 細胞白血病リンパ腫(しゅ)(ATL)治療薬

  • モガムリズマブ

希少疾患であるATL はT 細胞リンパ腫の中でも悪性度が高く、有効な治療法が確立していませんでした。2012年にATL治療薬として抗体医薬品モガムリズマブが世界に先駆けて日本で発売され、 治療に貢献しています。

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