くすりの情報Q&A Q12.薬物アレルギーとは、どういうものですか。

回答

体内に入ったくすりが、血液中のたんぱく質と結合して、それに対する抗体(こうたい)が体内にできると、次に同じくすりがやって来た時、特異(とくい)な反応を起こすことがあります。それが薬物アレルギーで、薬物過敏症(やくぶつかびんしょう)の1つです。

解説

人間には、自分の細胞と外から侵入した異物とを区別し、異物を排除(はいじょ)しようとする免疫(めんえき)機能が備わっています。

しかし、この免疫機能が過度に反応すると、時には人体にとって有害な症状を起こします。これをアレルギーといいます。原因となる物質(アレルゲン)はダニ、花粉、ペットの毛、食物などさまざまですが、くすりも人によってはアレルゲンとなる場合があります。

現在、日本では花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーが大きな問題となっています。

いまや国民の3割が花粉症といわれ、これにダニやハウスダストによる喘息(ぜんそく)、食べ物・化学物質による皮膚疾患(しっかん)なども加えると、アレルギー疾患の患者は2人に1人にものぼるとか。現代はまさに「アレルギー時代」と呼べるほどです。

アレルギーは、アレルゲンが体に入った時に起こる免疫反応(中和しようとする作用)で、体にとって不利に働くものの総称です。くすりも、人(体質)によっては、アレルゲンとなります。

くすりによるアレルギーの典型的なものとして過去に注目されたのは、ペニシリン・ショックでした。細菌による感染症に対して奇跡(きせき)ともいえる効果を示したペニシリンがアレルギー反応の原因となり、死亡例まで出たことから、大きな問題となりました。その後、ペニシリン製剤の純度の向上により、ショックの発生頻度(ひんど)は低下していますが、現在でも抗菌薬や解熱鎮痛薬(げねつちんつうやく)などは、アレルギーを起こす可能性があるくすりとして知られています。

くすりによるアレルギーには、注射によって突然ショック状態を起こす例もありますが、その多くはくすりを続けて使ううちに起こる湿疹(しっしん)やかゆみ、めまい、耳鳴りといった軽症から始まります。初めは軽症に見えても重症化するものもありますので、すぐに医師・薬剤師に相談することが大切です。その時点でくすりの使用をやめると、ほとんどの場合、アレルギーも治(おさ)まります。

もう一つ大切なことは、たとえ軽症であってもアレルギーを起こしたくすりの名前をおくすり手帳に記録しておき、次に病院にかかった時に、かならず医師に伝え、そのくすりが再び処方されないように注意することです。

また、アレルギーは、同じ体質の人にも起こりやすいので、自分だけでなく、家族にアレルギーがある場合にも、医師に話をするようにしましょう。

図表・コラム

12|おくすり手帳・アレルギー歴(有・無)などに関する記入欄の例

医師・薬剤師は、くすりを処方する際に、「おくすり手帳」のアレルギー歴(有・無)欄に記入されている情報を参考にします。忘れないように、かならず記入する習慣をつけましょう。

おくすり手帳・アレルギー歴(有・無)などに関する記入欄の例

MINIコラム ペニシリン・ショック

ペニシリンは感染症に対する効果が高く、魔法のくすりといわれていましたが、そのペニシリンも過信してはいけないことを学んだのが「ペニシリン・ショック」事件です。

昭和31年、東京大学法学部・尾高朝雄教授が、虫歯の治療中に、ペニシリン注射によるアナフィラキシー・ショックで亡くなりました。重症なショックを伴うアレルギー反応が原因です。当時の名士が想像もしなかった原因で亡くなったことで、社会問題に発展しました。

尾高教授の死亡事件が発生した頃のペニシリン製剤は、純度の最も高いものでも75%程度で、多くの不純物が含まれていたと考えられ、尾高教授のアナフィラキシー・ショックも、ペニシリン以外の物質が原因であったのかもしれません。現在製造されているペニシリン製剤の純度は99%以上になっており、ショックの発生頻度は低くなっています。しかし、アレルギー反応は個人の体質によって異なるので、過去のくすりに対する特別な反応は、自分で書き残しておくことが大切です。

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