くすりの情報Q&A Q7.くすりはどのようにして効くのですか。

回答

くすりが効く仕組みにはいくつかありますが、多くのくすりは血液とともに患部まで運ばれ、病気と関連する細胞や生体物質に働きかけて、病気の進行を止めたり、症状を緩和(かんわ)したりします。

解説

のみ薬の場合、食べ物と同じように、くすりは食道から胃を経由し、やがて小腸に届き、吸収されます。吸収されたくすりは、小腸を取り囲む血管に入り、肝臓を通り、血流にのって体内を循環(全身循環血)しながら、15~30分ほどで患部に届きます。

患部までたどり着いたくすりの多くは、細胞の表面にあるたんぱく質である「受容体(じゅようたい)(レセプター)」と結合して細胞の反応を引き起こし、それが効き目となって現れます。

1つの細胞は非常にたくさんの受容体をもっていて、くすりは、その中から必要な受容体を選択して結合します。受容体と結合して神経伝達物質やホルモンと同様の作用を起こす(細胞を活性化させる)物質をアゴニスト(作動薬・刺激薬)といいます。一方、受容体と結合しても作用を現さず(活性化しない)、本来結合するはずの神経伝達物質やホルモンの働きを阻害(そがい)する物質をアンタゴニスト(拮抗薬(きっこうやく)・遮断薬(しゃだんやく))といいます。たとえば気管支喘ぜんそく息の発作を抑おさえるくすり「β(ベータ)作動薬(刺激薬)」は、交感神経のβ2受容体と結合し、アゴニストとして神経細胞に働きかけることで気管支を拡張させ、それにより空気を通りやすくすることで効果を現わします。

一方、生理活性物質であるヒスタミンがH1受容体に結合すると血管が拡張し、アレルギー症状である鼻汁やくしゃみが出ますが、「抗ヒスタミン薬」はアンタゴニストとしてヒスタミン同様の情報伝達を起こさずに、H1受容体を占領してヒスタミンの結合を邪魔(じゃま)するため、アレルギー症状を抑制することができます。

ただし、病気はくすりをのみさえすればすぐに治(なお)るものばかりではありません。くすりは、病気を治す手助けをするものです。人間には病気やけがを自分で治そうとする力、自然治癒力(しぜんちゆりょく)(Q8参照)がもともと備わっています。たとえば、かぜ薬は、のどの痛みや発熱などの症状を抑えますが、それでかぜが治ったとはいえません。かぜの諸症状をくすりによって抑えながら、自然治癒力によって、かぜを治していくのです。くすりばかりに頼りすぎて、健康の三原則(運動、食事、睡眠)を守らないと、くすりの効き目をきちんと得ることはできません。

Q8

図表・コラム

くすりが作用する仕組み

  • アゴニスト(作動薬)

    受容体に結合して化学物質と同様な反応を起こさせる

  • アンタゴニスト(拮抗薬(きっこうやく))

    受容体に結合し、本来結合するはずの化学物質やホルモンの働きを遮断する

くすりが作用する仕組みイメージ

7|くすりの流れ

くすりの流れイメージ
  1. 吸収

    口から入ったくすりが、胃で分解され、大部分はその先の小腸で吸収され、血液中に取り込まれ、門脈(肝臓につながっている静脈)に入ります。

  2. 代謝(たいしゃ)

    門脈から肝臓に入ったくすりは、分解されたり、毒性を弱められたりします。

  3. 分布

    肝臓を通過したあと、血液によって全身を巡る過程で患部に到着し、作用します。

  4. 排泄(はいせつ)

    くすりとして作用したあとは、腎臓を通過して尿として体外に排泄されるほか、肝臓から胆汁の中に排泄されて便になったり、汗や唾液と一緒に体外に出ていきます。

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