くすりの情報Q&A Q6.日本人が開発したくすりには、古くはどのようなものがありますか。

回答

江戸時代の華岡青洲(はなおかせいしゅう)が開発した麻酔(ますい)薬、明治時代の北里柴三郎(きたさとしばさぶろう)が発明した血清療法、高峰譲吉(たかみねじょうきち)が発明した消化酵素「タカヂアスターゼ」、鈴木梅太郎(すずきうめたろう)が発見したビタミンB1などがあります。

解説

華岡青洲・麻酔薬「通仙散(つうせんさん)」

華岡青洲は、さまざまな植物を採集して研究に取り組み、麻酔薬「通仙散」を開発しました。

開発の最終段階では、人に効くのか、害はないのかを確かめるために、その役をみずから買って出た青洲の母と妻に試してもらい完成にこぎつけましたが、麻酔薬を何度も試した妻は失明。画期的なくすりの誕生の陰には、大きな犠牲(ぎせい)も存在していたのです。

青洲は、1804年、通仙散を使って、60歳の乳がんの女性患者に手術をおこない成功しました。これは全身麻酔による世界初の手術とされています。

北里柴三郎・血清療法

北里柴三郎は、破傷風菌(はしょうふう)の純粋培養(ばいよう)に世界で初めて成功しました。これにより破傷風菌が出す毒素を薄めて動物に注射すると、毒素を退治する成分が血清(血液が固まったときの上澄み液)の中にできることを発見し、破傷風を予防・治療する新しい方法「血清療法」を発明しました。

現在、血清療法はさまざまな病気に利用されています。

高峰譲吉・消化酵素「タカヂアスターゼ」

私たちが食事をする時、栄養素を分解して、栄養素が体内に吸収されやすくする役割を担うのが消化酵素です。消化酵素がうまく働かないと消化不良になり、栄養分がきちんと吸収されません。高峰譲吉は、でんぷん(炭水化物の主成分)を分解する消化酵素「タカヂアスターゼ」を発明しました。

食べ過ぎた時や胃腸が弱っている時にタカヂアスターゼをのむと、消化が促され、消化不良が解消されます。その強力な効き目から、タカヂアスターゼは世界中で爆発的に大ヒット。日本においては「家庭の常備薬(じょうびやく)」といわれるほど、どの家庭にもあるくすりとして広まりました。

鈴木梅太郎・ビタミンB1

鈴木梅太郎は、1910年(明治43年)に、米の糠(ぬか)に含まれる「ビタミンB1」を発見しました。これは、世界最初のビタミンの発見でした。

さらに、当時の日本で恐おそれられていた「脚気(かっけ)」という病気の原因がビタミンB1の不足にあることも明らかにしました。当時は「ビタミン」という栄養素があることは、世界中の誰もが知らなかったことで、鈴木梅太郎はこれを「オリザニン」と命名したのです。

しかし翌年、ポーランドの化学者がまったく同じ栄養成分を発見し、「ビタミン」と名づけて発表したところ、こちらの名前のほうが早く世界中で有名になりました。

  • Q36で、近年、日本の製薬企業が開発し、世界で注目されているくすりを紹介しています。

図表・コラム

6|近代初期の日本人研究者による主な功績(抜粋)

長井 長義(ながい ながよし)(薬学者) 1887年 麻黄からエフェドリンの抽出に成功
北里 柴三郎(きたさと しばさぶろう)(医学者・細菌学者) 1889年 破傷風菌の純粋培養法を確立
高峰 譲吉(たかみね じょうきち)(工学博士・薬学博士) 1894年 消化酵素「タカヂアスターゼ」の発明
志賀 潔(しが きよし)(医学者・細菌学者) 1897年 赤痢菌の発見
鈴木 梅太郎(すずき うめたろう)(農芸化学者) 1910年 最初のビタミン(B1)の発見

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