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第5回飲み合わせを知りましょう

くすりマガジン
― 第5回 ―

飲み合わせを知りましょう
どんどん薬剤師さんに相談してください!

医薬情報研究所/ 株式会社 エス・アイ・シー
医薬情報部門 責任者 堀 美智子氏
「薬の飲み合わせ」は、薬どうしはもちろん食べ物や飲み物との組み合わせにも注意を払う必要があります。含まれる成分によっては、薬の効き目を必要以上に強めてしまい思わぬ副作用を発症させてしまったり、逆に弱めてしまうことであまり薬が効かなくなってしまったりすることがあります。

◆ 直接患部に届くわけではありません

薬に限らず口から食べたり飲んだりしたものは、基本的にはみな同じ経路を辿って体に吸収されます。胃に送られたあと腸に移動する間に溶かされ、その後おもに十二指腸から小腸の間で吸収され、血液に乗って体内の色々なところに分布されていきます。

例えば、胃のために飲んだ薬の場合、その薬は服用されて胃に届けられたら即座に効果を発揮するものではなく、吸収されて血流に乗りそれが再度胃に戻って作用するといった仕組みになっています。頭痛薬でも、口とアタマが近いからといって直接口の中から頭に運ばれて効くわけではなく、胃や腸、肝臓などを通過してから血液に乗って頭で作用するというわけです。薬や食べ物・飲み物の飲み合わせによっては、その道中で思わぬ相互作用を起こしてしまう可能性があるのです。

◆ 腸で吸収されたあとは肝臓で解毒されます

多くの薬は、食道・胃・十二指腸を経て、小腸で血液に吸収され肝臓に運ばれます。肝臓は自分の体にとって不必要なものを分解して解毒する働きがあり、運ばれた薬もこの働きを受けて解毒されます。これを「代謝」といい、薬によっては一度にすべてを代謝しきれないので、血液の循環にのって何度も肝臓を通り徐々に代謝されるものもあります。この「代謝」では薬物代謝酵素(主にチトクロームP-450)が働いているのですが、食べ合わせ・飲み合わせによりこの酵素の働きをコントロールしてしまうものがあると、結果として薬がうまく代謝されず効き目が強くなりすぎたり、弱くなってしまったりしてしまうことがあります。

※代謝は肝臓だけではなく、消化管や腎臓などその他の部位でも行われていますが、特に重要なのは肝臓です。

◆ 牛乳と薬の飲み合わせも注意が必要です

毎日必ず牛乳を飲むという人は多いと思います。この牛乳と薬の組み合わせでも、注意をしなければならないケースがあります。

腸で溶けるタイプの下剤などは牛乳との飲み合わせが良くありません。そういった下剤は胃を通過して腸で溶け、腸壁を刺激するように作られています。牛乳は胃の中のpHを上昇させアルカリ度を高めてしまうため、腸で溶けるべき下剤が胃で溶け、吐き気などの副作用を起こしてしまうことがあります。

また、「1日に2回飲めばOK」といった類の風邪薬も牛乳との飲み合わせに気をつけなければなりません。
そういった薬は、2/3が胃、残りの1/3が腸で溶けるように工夫されています。胃で先に溶けたものが腸から吸収され作用し、胃で溶けなかった残りの部分は腸まで届けられ、そこで生まれる時間差によって長く効くというような仕組みになっているわけですが、やはり牛乳と飲み合わせることによって腸で溶けるべき部分も胃でとけてしまい、作用が弱くなったり下剤と同じように吐き気をもよおしたりすることがあります。

それから、胃内のpHを上げるという意味では、逆流性食道炎や胃潰瘍などの治療薬(胃酸を出しにくくする薬)も牛乳と同じようなことが言えます。そういった薬を飲み胃内のphが上げられたところへ先ほどのような下剤や風邪薬を飲んでしまうと、牛乳のときと同じような事態が起きかねません。これは、二日酔いの時に飲む胃薬についても同様で、「なんか二日酔いで胃が辛いなぁ…。それに風邪もひいているみたいだし…。どうせだから胃薬と風邪薬、両方飲んでしまおう」なんてことは、避けたほうが賢明です。

関係ないように思うものでも、そういった製剤的な工夫がされていることにより、思わぬところで飲み合わせによる副作用が発症するということがあるのです。

ちなみに、胃薬などの制酸剤(胃酸をコントロールする薬)をコーラのような炭酸飲料で飲んでしまうという人もいるようですが、その場合胃薬は炭酸飲料の酸を中和してしまい体の中では作用しなくなってしまうので、これは絶対に止めたほうが良いです。

◆ 食品の成分と薬が重なり過剰摂取になることがあります

身体に異常をきたしてしまうほど特定の成分を摂ってしまうことを過剰摂取と言いますが、薬の成分と食べ物・飲み物の成分が同じもので、知らない間にその成分を過剰摂取してしまうというケースもあるので気をつける必要があります。

図うがい薬や、喉がイガイガするときに噴霧するスプレーなどには、「ヨード」という成分が含まれています。この「ヨード」を過剰摂取してしまうと甲状腺機能異常になり、そうなると、倦怠感や浮腫等が発症し場合によっては高脂血症を引き起こしてしまうこともあるのです。

薬のパッケージには使用限度量が書かれているのでそれを守るということはもちろん大切ですが、同時に自分の食生活を振り返って過剰摂取になっていないかどうかを確かめてみる必要もあります。

「ヨード」を含む代表的な食品は昆布です。昆布だしや昆布茶も同様です。また「ヨード卵」にも含まれており、そう考えてみると日頃からヨードを多く摂取しているなぁ…と感じる人も多いかと思います。うがい薬を使う時にはある程度気をつかっているつもりでも、結果的に食べ物から摂取している量と合わさると過剰摂取になってしまい、甲状腺機能異常を引き起こしてしまうということもあり得るのです。

医薬品でも食品でも口から摂取する化学物質という意味では同じであり、ヨードのようにどちらも身近にあるものに含まれている成分については気をつける必要があります。

カラオケが好きでのど用のスプレーをよく使う人や、昆布だしや昆布茶が好きな人は、それぞれヨードの過剰摂取に気をつけたほうが良いですね。

◆ 特定保健用食品は普通の食品以上に注意が必要です

生活習慣病を防ぐ機能をもつ食品を「特定保健用食品」といいます。最近では体脂肪が気になる人のためのお茶や虫歯になりにくいガムなど、沢山の商品が出まわっています。特定保健用食品は普通の食品と比べて体に作用する機能が高いということで区別されていますが、これはつまり、普通の食品以上に薬との飲み合わせを気をつけなくてはいけないということでもあります。

例えば血圧が高めの人に勧められる特定保健用食品がありますが、これは血圧を下げる薬剤である「ACE阻害薬」と同じメカニズムを持っています。その二つを飲み合わせることによって相互作用が重なり血圧低下作用が強まってしまったり、咳、高カリウム血症などの副作用が発現しやすくなったりする可能性があります。

特に処方薬を飲んでいる人は、特定保健用食品を摂る際には必ず医師や薬剤師に相談してください。

さきほど「ヨード」の過剰摂取について説明しましたが、この特定保健用食品も過剰摂取により副作用を発症させるものがあるので気をつけなければなりません。

最近、虫歯になりにくいガムや甘いノンシュガー飲料など、「糖アルコール」という成分を含む食品が人気です。糖アルコールというのは難消化性の成分であり、甘みを感じていながらも、消化されないので体内にエネルギーとして摂取されないという仕組みになっているものです。これは虫歯菌でも同じで、エネルギーとして摂取される成分ではないので虫歯菌が動き出さず、糖アルコールは結果として虫歯の原因にはならないということになっています。ただ、この糖アルコールは大量に摂取すると下痢や軟便を発症させることがあるので注意が必要です。大量に摂取した糖アルコールが大腸に留まると水が大腸に吸収されるのを抑えてしまい、それが下痢や軟便の原因になってしまうのです。

スポーツ飲料などのニアウォーターには、この糖アルコールを含むものが沢山あります。普通に飲むのであれば問題ないのですが、運動のあとに喉が渇きついついペットボトルを一気飲み…なんて飲み方をしてしまうと下痢になってしまうわけですね。

この糖アルコールは、その他にもパンやキャンディーなど色々な食品に含まれています。最近下痢気味という人は、もしかしたら実は気がつかないうちに糖アルコールを沢山摂取していることが原因になっている可能性もあるので、自分が食べているものを一度チェックしてみたほうが良いかもしれません。

◆ お酒と薬は絶対に飲み合わせてはいけません

お酒と薬を一緒に飲むのは非常に危険です。ふつう薬は肝臓で解毒されますが、アルコールと一緒に飲んでしまうと肝臓はアルコールの方を解毒してしまい、そこで解毒作用を受けない薬は普通よりずっと高い濃度で体に分布されてしまいます。また、アルコールを分解する酵素が肝臓にはありますが、この酵素は薬の成分を有害な物質に変化させてしまう場合もあります。命にかかわる重篤な事態を引き起こすこともありますので、絶対に薬とお酒を一緒に飲んではいけません。

では、お酒を飲む前と飲んだ後では、薬を飲むのにどれくらいの間隔をおいたらよいのかというと、これは一概にはなんとも言えません。お酒も薬も肝臓で分解されるまでに大体2時間程度という目安があるので、それくらい経てば…ということは聞くことがあります。しかし、薬の種類や飲んだお酒の量、また個人のお酒への強さによってケースはまったく違ってきます。薬を飲んでいる人で、お酒の席に出席する人は医師や薬剤師に必ず相談するようにしてください。

それから、診察を受ける時や薬を処方してもらう時に、「お酒はどれくらい飲みますか?」といった質問をされることがあると思います。これは患者さんがアルコールを分解する酵素を沢山もっているか、ということを調べるためのもので、薬の服用にとって重要な情報になります。 アルコール分解酵素は、アルコールだけでなく薬の代謝・分解にも働きます。したがってアルコール分解酵素をたくさん持つ人の場合、薬が通常想定されている以上に分解されてしまい効きにくくなってしまうということもあります。

そういったことをふまえながら診察や薬の処方は行われるので、自分のためにも、医師や薬剤師から飲酒アルコール量を訊かれた際は、包み隠さず正確にこたえるようしましょう。

◆ ライフスタイルの相談をしてください

薬の服用は「就寝前」や「食前」「食間」「食後」といったように、個人のライフスタイルと密接に関係してくるケースが殆どです。しかし、誰もがみなが同じリズムで生活をしているわけではありません。「夕食後と就寝前にそれぞれくすりを処方されたけど、食べてすぐ寝る自分はどうしたら良いのだろう?」とか、「食事をとったりとらなかったりするけど、食べないときは薬を飲まないほうがよいだろうか?」などといった、自分のライフスタイルと薬の服用について疑問を持つ人も少なくないでしょう。

そういった疑問を感じた場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。たとえば1日3回食後に飲む薬を2回のものに換えてくれたり、薬を飲む時間をその人にあった形でアドバイスしてくれたりします。"指示されたとおりに薬が飲めないから飲まない"では本末転倒になってしまいます。

飲み合わせを中心に、いくつかの例を交えながら薬を飲むときの注意を紹介してきましたが、すべてに共通する大切なことは、自分の口にするものは薬であろうが食べ物・飲み物であろうが、それがどんなものであるかをきちんと知るということです。

そして、薬を飲むことになった場合は、食生活を含め自分のライフスタイルを医師や薬剤師にきちんと伝え、もしわからないことや不安なことがあればどんどん質問してください。その中には、薬の効き方を作用する重要な情報が紛れ込んでいるかもしれません。

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