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第3回かかりつけの薬剤師を持とう!

くすりマガジン
― 第3回 ―

かかりつけの薬剤師を持とう!
薬剤師さんをどんどん活用して「くすり賢人」になる方法

横浜市薬剤師会副会長/ふたば薬局経営  向井 秀人

あなたは、薬剤師を身近に感じられますか? 実は薬剤師は、街の"物知り科学者"です。その守備範囲は、くすり関係から健康、医療、環境衛生などと幅広く、有能な生活アドバイザーにふさわしい存在なのです。皆さんも、ぜひ「かかりつけの薬剤師」を作って、上手に活用してみませんか。安全・安心なくすりとの付き合い方を知ることもできますし、くすりや健康の悩みごと・困りごとなら、何でも気軽にご相談くださって構いません。

◆ 行きつけの薬局を、"かかりつけの薬剤師"にしよう

 わたしは、横浜市旭区で調剤薬局を経営しています。まわりは住宅団地ですから、馴染みのお客さまも多く、くすりのことはもちろん、健康面や衛生面などさまざまな生活上の相談が持ち込まれます。そんな店内の壁には大きく、「かかりつけの薬剤師を持とう」というメッセージが書かれています。これが薬剤師としてのわたしのモットーだからです。

 皆さんも、"かかりつけの医者"という言葉は聞いたことがあるでしょう。小さなお子さまをお持ちのお母さんなら毎月のように通う小児科があるはずです。持病のある方はそれぞれの専門医に定期的に通っているでしょう。そして、たぶんその医院の近く、駅の近く、ご自宅の近くに、いつもお医者様からの処方せんを持っていく調剤薬局があるはずです。

それは、いわゆる"行きつけの薬局"です。それを一歩進めて、「かかりつけの薬局」に、できれば「かかりつけの薬剤師」を持っていただくことができたら、皆さんの生活は、ずいぶん安心できるものになるのではないでしょうか。

 かかりつけの医師が、これまでの(もしかしたら子供の頃からの)皆さんの病歴や症状を熟知しているように、Aさんという薬剤師に患者個々人がつくようになっていき、これまでにどんな症状でどんなくすりを飲んだか、今どんなくすりを飲んでいるかなどを把握していたら、こんな心強い相棒はありませんよね。

◆ 薬剤師は、身近な"物知り科学者"=健康・医療アドバイザー

 と言われても、多くの方は「そうだけど、でも薬剤師さんが?」と考えるでしょう。皆さんのイメージする薬剤師は、薬局で白衣を着ていて、処方せん通りにくすりを袋に入れ、服用方法などを説明してくれる人、でしょう。「くすりのことは薬剤師に聞けばいいのかな」という程度の認識があれば上々でしょう。

 実は、薬剤師の職務は"くすりのお渡し"だけではありません。もともとは「くすりを作る」仕事をするのが薬剤師だったのです。それがだんだん広範囲になってきて、日常生活における健康、医療、衛生、環境に関わるさまざまな仕事を守備範囲とするようになりました。たとえば学校薬剤師は、学校で発生した虫、ハエ、ゴキブリなど衛生面の対処、プールの水質管理なども仕事のひとつです。本来、街の薬剤師は、毛虫やハチに刺されたときの対処、ねずみが出た時の対処など、日常生活における健康・衛生・医療のアドバイザーとして活躍できる人たちなのです。

 ですから今でも薬剤師は、皆さんの近隣地域でも一、二を争う"物知り科学者"のはずです。くすりのことに限らず、ご自身や家族の健康のこと、住まいの環境のこと、庭の木に付いた虫の駆除に至るまで、「こんなこと聞いてもいいのかなあ」と躊躇する前に、気軽に相談してみてください。

 幸い、医薬分業が進んでいて、薬局はたくさんありますので、きっと皆さんの相談に親切に対応してくれる"薬剤師(薬局)を選ぶ"ことができるでしょう。

◆ かかりつけの薬剤師がいることのメリット

では、"かかりつけの薬剤師"を作っておくことの具体的メリットは何でしょう。皆さんからすると、"常連客"になることの利点をいくつか挙げてみます。 気軽にコミュニケーションができる
 何よりのメリットは、顔を覚えている(覚えられている)気安さから、不必要な遠慮や緊張が取れ、コミュニケーションの垣根が低くなることです。「こんなこと聞くと恥ずかしい」という気持ちは誰にでもありますが、いつもの薬剤師なら「ついでにこれも聞いておこうかな」と思うのではないでしょうか。毎日買い物に行く八百屋さんなら、なにか旬のものが入荷していないか、どんな料理にしたらおいしいか、店先でちょっとした会話も弾みますね。あの調子で構わないのです。ただし、値引きやおまけはないかもしれませんが。

薬歴管理ができる
 薬歴管理とは、複数病院の処方せんをかかりつけの薬局に集約することで、個人の薬歴を管理することです。皆さんの中にも調剤薬局が出す「おくすり手帳」や情報文書などで、くすりの種類や服用方法を確認されている方もいらっしゃるでしょう。このような薬歴管理によって、飲み合わせ対策が可能になります。異なる医療機関からの処方薬を一緒に飲んでいいかなどをチェックできるわけです。かかりつけの薬局ならば、過去の服用薬もわかりますから薬歴管理がかなり確実にできます。もちろん、皆さんのほうからも、「今までこんなくすりを飲んでいた」といった情報提供があればさらに完璧になるわけです。

くすりの間違い防止ができる
 医師も薬剤師も人間ですから「100%ゼッタイ間違わない」ということは言えません。医師が処方せんを書き間違う、医療事務の人が入力ミスする、薬剤師が出し間違う・・・。また、くすり名だけでなく、服用量の間違いも起こりうるのです。もし、かかりつけの薬局であれば、「あれ、Bさんはこの前はこのくすりを(これだけの量)飲んでいたのに・・・」という疑問が薬剤師の頭に浮かびます。「今度は○○が悪いんですか?」とBさんご自身に聞くこともできますし、処方せんを書いた医師に確認することも可能です。普段からの付き合いがあれば、飲むべきくすりの間違いという決定的ミスを防止するチェック機構が働きやすくなるわけです。

くすりの悩み相談ができる
 医師は、この患者にこのくすりを○㎎飲ませたい、と考えます。しかし、患者の中には、飲みにくい、飲み下せないとの悩みを抱えている方もいます。"どうくすりを飲ませるか"を考えるのも薬剤師の仕事なのです。出されたくすりを黙って飲む、という悪習が長く続いてきましたが、どんな悩みであってもまずは薬剤師に相談して欲しいのです。最近では、プライバシー保護のため、「相談室」を設け、他の客の前では相談しにくいことをお聞きできる薬局も増えています。
 たとえば、剤形の変更も薬剤師の仕事のひとつです。錠剤が飲めない患者であれば、粉に切り替えるし、粉が存在しないのなら、砕いても構わない錠剤かどうかを考えるわけです。お子さんやお年寄りに粉薬や錠剤を無理強いする必要は全くありません。くすりは飲んで初めて意義があるのですから。「ちょっと、わがままかな」と思われるような相談事、頼み事も、かかりつけの薬剤師なら大丈夫ですよね。 ◆ 患者の自己責任意識も大切

 しかし、もっとも大切なのは、皆さんご自身の自己責任意識です。かかりつけの薬剤師も万能ではないのですから、皆さんとのコミュニケーションのキャッチボールによって初めて、ご自身や家族が飲むくすりとの安全で効果的な付き合いが可能になるのです。 ご家庭で食べる野菜や惣菜では原材料の産地や賞味期限などを気にする方も、くすりについては結構無頓着なのです。しかし、自分が飲むくすりである以上、どこの製薬会社が作ったくすりなのか、どんな作用があるのか、どんな副作用があるのか、くらいは把握すべきでしょう。少なくとも、処方せんを見れば何のくすりをもらうのかがわかるわけですから、薬局からもらったくすりが同じものかどうか、量は間違いないかは確認すべきでしょう。また、慢性患者であれば、次の来院時までくすりが足りるのかどうかを確認してください。現在は、2週間以上の投薬処方せんも可能になりましたから、たくさんの量と種類のくすりを出す機会も増えています。ですから、薬剤師が出すべきくすりの数や種類を間違えてしまう可能性も相対的に高まっていると考えなければなりません。

◆ 皆さん一人ひとりをサポートできる「顔の見える」薬剤師を目指して

 少なくとも「自分のことは自分で守る」ことが基本になるわけですが、そこで薬剤師を上手に活用すれば、より一層の効果が出るはずです。薬剤師は、くすりの専門家であり、健康生活や環境衛生についても良き相談役です。健康・医療・環境など日常生活の上で何か困ったことがあったら、とにかく一度相談してみる相談窓口、駆け込み寺として役立ててください。 薬剤師も、単なる"くすりを出す仕事"から、患者一人ひとりに対応した「人を見る仕事」に変化しつつあります。もっと皆さんの生活のすぐそばで、「あ、あの薬剤師さんに聞いてみよう」と思いついていただけるよう、地域に溶け込んだ「顔の見える」「存在感のある」薬剤師を目指していきたいと考えています。

こんな時どうすればいい? くすりの飲み方Q&A

Q くすりは水やぬるま湯で飲まなくてはダメですか?

A  薬剤師も、「水かぬるま湯で服用」とよく説明しますが、絶対水でなきゃダメ!というわけではありません。。手元に水がないからくすりを飲まない、では困ります。くすりを飲むことを優先して考えるならば、お茶やジュース、コーヒーで飲んでもよい場合もあるのです。「このくすりは、外出先などでどうしても水が手元にない場合は、ジュースで飲んでも構いませんか」と、薬剤師にシツコク確認してみてください。もちろん、水やぬるま湯を探す努力もしてください。



Q 「一日3回毎食後」って、しっかり守らねばなりませんか?

A  最近では、朝食抜きの人も増えているそうです。多忙な毎日ですから昼食や夕食の時間が不規則な場合も多いでしょう。一般的なくすりでしたら、「一日3回毎食後」という服用方法は比較的ラフに考えて構いません。通常の毎食時間が飲むべき時間の目安となっているからです。朝・昼・晩の適当な時間に忘れずにくすりを飲むようにしてください。ただし、特別な飲み方を指示されたくすりはこの限りではありません。食後に飲むのは胃荒れを防ぐため、空腹時に服用すべきだから食間、など理由がある場合も多いですから、生活が不規則になりがちな人は、特にきちんと薬剤師に確認してみてください。

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