製薬協について 製薬協について

第1章 コンプライアンスへの取り組み

Ⅰ.ガイドラインの目的

 企業には、ガバナンスの構築(内部統制システムを含む)、経営の透明性確保、消費者保護や環境・社会への配慮を含む社会的責任、などとともに、それらの前提としてのコンプライアンス(法令・企業倫理遵守)が求められます。企業が法治国家の経済主体であるうえで、法令を守ることは当然の前提であります。違法・不当な行為による利益の追求は、企業に取り返しのつかないダメージを与え、ステークホルダーのための経営に反することになります。

 このガイドライン作成の目的は、社会から高度な倫理観を求められる製薬企業として、確固とした企業倫理を確立・実践するとともに、各社がコンプライアンス・プログラムを策定のうえ、これを厳格に実施し、企業およびその構成員による違法行為を未然に防止することにあります。

 製薬企業は、医薬品という生命にかかわる製品を扱っていることからより高い倫理観が求められますが、その医薬品を介して、創薬研究、臨床試験、製造販売、製品情報提供という様々な場面で、厚生労働省等の省庁職員や独立行政法人上の医療機関の医師・教官等の公務員等と接点をもっており、これらの接点は、許認可の申請者と発行者、創薬研究・臨床試験の委託者と受託者、医薬品の製造者と購入者という関係に基づくものであるため、刑法(贈収賄罪)、国家公務員倫理法、公正競争規約等に反するような不公正な関係となり得る潜在的リスクを有しております。実際、過去、製薬業界においては、公務員への不当な利益供与として世間を騒がせた問題が発生し、贈収賄事件に発展する例もありました。
 また、最近においては、製品の品質にかかわるGMP違反や、製造販売承認申請に用いられるデータの不適切な取り扱いといった、生命関連商品を扱う製薬企業にとって、あってはならない事件が発生しています。
 各社において、このような製薬企業特有のリスクを除去するための仕組みを構築することも、コンプライアンス・プログラムで検討されるべき課題の一つです。

 コンプライアンス・プログラムとは、「法令、ルール等を遵守し、企業倫理に沿った行動をとるためのプログラムやシステム」をいい、コンプライアンス推進のための組織体制および行動規準等の社内指針から成ります。法令遵守という場合、様々な法令が想定されます。たとえば、刑法(贈収賄罪ほか)、会社法(利益供与ほか)、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(「独占禁止法」)(カルテル、再販売価格維持行為、優越的地位の濫用ほか)、金融商品取引法(インサイダー取引、相場操縦ほか)、薬事法をはじめとした薬事関係法令、個人情報保護法、労働関係法令、環境関係法令等があげられますが、これらに限定されるものではありません。

 なお、各社における法令遵守・企業倫理のためのプログラムや守るべきスタンダードの名称は、各社各様ですが、本稿においては、法令遵守体制・仕組みを「コンプライアンス・プログラム」(あるいは、単に「プログラム」)と称し、一般に倫理綱領、行動指針、行動規範などと呼ばれる、コンプライアンス上各社およびその構成員が遵守すべき行動規準を「コンプライアンス・スタンダード」(あるいは、単に「スタンダード」)と称することとします。


Ⅱ.コンプライアンスの動向

 大和銀行株主代表訴訟に関する2000年9月20日の大阪地裁判決では、取締役は、自ら法令を遵守するだけでは十分でなく、従業員が会社の業務を遂行する際に違法な行為に及ぶことを未然に防止し、会社全体として法令遵守経営を実現しなければならず、法令遵守体制の確立は、取締役の職務上の義務、善管注意義務および忠実義務の内容をなす旨を判示し、取締役による法令遵守体制の構築を法的な義務であると認定しました。これによりコンプライアンス体制構築義務の考え方が明確化され、その後の指針になりました。
 国民生活審議会消費者政策部会 消費者政策部会 自主行動基準検討委員会において、2002年12月17日に「消費者に信頼される事業者となるために―自主行動基準の指針―」が報告され、公表されました。また2004年には公益通報者保護法が成立し、その趣旨に鑑み、各社では内部通報制度の構築が課題となりました。
 さらに、2005年に成立した会社法において、上述の大阪地裁判決の考え方を取り込んで、大会社の取締役会に対して「内部統制システム」の整備を行うことを義務付けました。この内部統制システムには、取締役や使用人の職務が法令・定款に適合することを確保するための体制も含まれています。
 したがって、現在、コンプライアンス体制を整備していない会社、また、実施していたとしても、違法行為を未然に防止するためには十分でないような会社は、各取締役がその義務を果たしていないとして責任を問われかねないことを意味します。

 コンプライアンス先進国の米国においては、「米国連邦量刑ガイドライン」(最新版は2007年11月1日施行)が組織による犯罪における量刑判断の要素(軽減要素)として効果的なコンプライアンス・プログラム構築を挙げ、その具体的な要件を規定しています。
 また、近年、米国では、外国公務員への贈賄を規制する連邦海外腐敗行為防止法(FCPAと略称されます)の執行を強化しており、特に2009年末頃から医薬品業界が次のターゲットであることを明言しております。また英国では、2010年、非常に広範に適用されるおそれのある英国贈収賄法(Bribery Act)が制定され、2011年、政府のガイダンス作成を待って、施行される予定です。

 日本経団連は、企業活動のさらなるグローバル化、企業の社会的責任にかかわる国際規格ISO26000の策定など企業をめぐる国内外の環境変化を反映するため、「企業行動憲章―社会の信頼と共感を得るために―」を2010年9月14日に改定しました。
 2010年改定においては、企業行動憲章の前文において、法令や国際ルールの遵守に留まらず、「高い倫理観をもって」社会的責任を果たしていくことが強調されました。

 製薬協は、1997年11月19日に「製薬協企業行動憲章」を制定し、会員企業にこの憲章の遵守とともに、「各社の具体的な実践要綱や社内体制の整備」を呼びかけました。そして、2001年4月1日に「製薬協コンプライアンス・プログラム・ガイドライン」を策定し、それに基づき会員企業が、それぞれの仕組みとしてのプログラムを策定していただくことが必要であると考えました。このガイドラインは、各社においてコンプライアンス・プログラムを継続的に運営いただき、違法事件や企業倫理スキャンダルの発生を防止し、各社における倫理観・遵法精神の醸成・確立・推進を図り、国民の医薬品業界に対する信頼に応え、業界の持続的発展に貢献できるようにすることを目指しています。
 今回、製薬協企業行動憲章の改定とともに、このガイドラインも改定いたしました。前回のガイドライン策定以後の法律制定・改正、コンプライアンスに関する社会の動き等を反映しています。
 各社におかれては、法律制定・改正、判例や各種の基準等を参考とし、各社の事業内容や経営体制に適したコンプライアンス・プログラムを構築し、また、定期的に、さらに、随時、見直し、実効性のあるプログラムとなるよう、改善していくことが必要です。また、各社の国内外子会社等のグループ会社においても、同様に、各社の事業内容や関連法規、各国の法制を勘案し、各グループ会社において、それぞれのプログラムを構築し、的確に運営することが必要になります。


Ⅲ.製薬協としてのコンプライアンスに関する取り組み

 製薬協は、2001年4月にガイドライン制定し、会員各社に「コンプライアンス・プログラム」の策定と法令遵守の徹底を要請しました。2001年5月と10月の2度にわたり、各社の取り組み状況について調査を行い、積極的な会員企業の取り組みを確認しました。製薬協は企業不祥事の発生を未然に防止するために、企業倫理と法令遵守の一層の徹底に取り組むことを毎年度の事業方針に掲げ活動を続けてまいりました。
 厚生労働科学研究班(主任研究員 日本大学薬学部 白神誠教授)に協力して、2003年10月には会員会社のその後の取り組み状況を、さらに、2004年2月には、会員各社の協力を得て、「会員会社従業員のコンプライアンスに関する意識調査」を実施しました。これらの結果を踏まえ、2005年1月ガイドラインの改定を行いました。
 2010年にはいり、常任理事会社の法務担当者を中心に、医薬品企業法務研究会および日本大学薬学部白神誠教授のご協力も得て、ガイドラインの全面的な見直しを行うとともに、2010年12月には会員会社に対しコンプライアンスに関する取り組み状況について調査を行いました。これらの結果を踏まえ、2回目の改定を行い、2011年4月から実施することとなりました。

 今回のガイドラインの改定にあたりましては、会員各社の協力を得て、以下の方策を講じます。ご協力方、よろしく、お願いいたします。

  1. 会員各社におけるコンプライアンス・プログラムの見直し
    会員各社においては、2011年9月末日までに、自社のコンプライアンス・プログラムについて今回のガイドライン改定に沿った見直しをお願いします(最近、プログラムを策定したり、見直しを終え、特に今回、見直し等を要しない場合は、その旨を報告ください)。
    各社において、プログラムや従業員向け冊子を作成または改定されたときには、これまでと同様、製薬協へ冊子等のご提出をお願いします。以後、改定等を行い、新たに作成した場合も提出ください。
  2. 経営トップから役員・従業員への法令遵守、コンプライアンス徹底のメッセージ発信のお願い
    経営トップから、役員や従業員に対し、あらためて、法令遵守の徹底を訴え、不当な行為によって利益を追求することのないよう、メッセージを伝えることをお願いします。方法は、各社におまかせしますが、企業の姿勢として例えばホームページに掲載する等社外に発信することもご検討ください。
  3. 会員各社のコンプライアンス担当役員との連携
    会員各社において、法令遵守、コンプライアンス担当役員等を任命された際には、これまでと同様、製薬協企業倫理委員会へ書面によるご連絡をお願いします。製薬協としては、今後すくなくとも年に一度は「コンプライアンス遵守についての研修会」を開催する等各社の担当役員との連携を進めてまいります。
  4. 製薬協としての継続的な法令遵守、コンプライアンスに関する取り組み
    企業倫理委員会を中心に、企業倫理や法令遵守を徹底するための取り組みを継続します。PRAISE-NETや製薬協ホームページにより、「製薬協コンプライアンス・プログラム・ガイドライン」について、周知徹底を図ります。
    また、企業倫理委員会において、医薬品企業法務研究会の協力のもと、製薬協本体および各委員会におけるコンプライアンスをはじめとする法令上の問題点についての解決を図って参ります。
    なお、製薬協コンプライアンス・プログラム・ガイドラインについては、今後も、3~4年ごとに見直し、アップデートしていきます。

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