デジタルメディスンの開発と健康医療データの利活用 -医療・ヘルスケアの変革期における製薬産業のあり方-

辻井 惇也(医薬産業政策研究所 主任研究員)

(No.84:2024年03月発行)

要旨


 近年の医療・ヘルスケア分野におけるデジタル化の進展は目覚ましく、デジタルソリューションを日常からの健康管理や診断、治療等、広範に用いる動きが活発化している。また、医療機関やデジタルソリューション等を通じ取得される多種多様な健康医療データの利活用は、医療・ヘルスケアのあり方を、従来の「治療中心」から「予防、診断、治療、予後に至るライフコース全体」へ、そして「画一的な介入」から「個別・層別化された介入」へと変化させつつある。さらに、医薬品を含む医療技術の革新や最適な政策決定、医療資源の最適配分等への展開も期待される。

 このような潮流の中、製薬産業はどのように新たな技術と向き合い、どのようにデータを利活用し、どのように他のステークホルダーと連携し、社会に貢献していくべきであろうか。この医療・ヘルスケアのパラダイムシフトとも言うべき変化は、医薬品の創出により価値を提供してきた製薬産業のあり方にも大きな影響を与え、異業種との連携によるデジタルソリューションへの参入や創薬等の革新的イノベーション創出に対する健康医療データの利活用等、様々な変革の必要性を突き付けている。

 本稿は、我が国のより良い医療・ヘルスケアの実現を目指し、デジタルメディスン開発と健康医療データ利活用の観点から、関係するステークホルダーが取り組むべき施策を提言するとともに、医療・ヘルスケアの変革期における製薬産業のあり方に対して一つの方向性を提示する。

ダウンロード

このページをシェア

TOP