日本の医薬品の輸入超過と創薬の基盤整備の課題

長澤 優(医薬産業政策研究所 統括研究員)

(No.58:2013年04月発行)

昨今、日本の医薬品の輸入超過問題が大きく取り上げられている。医薬品の輸入超過をもって日本の国内製薬産業を赤字産業と断じ、その国際競争力の乏しさを指摘する論調が大半を占めているが、実際には日本の医薬品における輸入超過という現象は海外製造の拡大によって引き起こされている。しかも、この海外製造の拡大は製薬企業の医薬品製造立地選択の結果であり、日本の抱える構造的な要因に起因している。

医薬品製造は創薬に不可欠のバリュー・チェーンであり、医療分野におけるイノベーションを実現し、国内製薬産業が日本の医療、経済、科学技術に貢献するために重要な役割を果たしている。しかし、残念なことに日本では医薬品製造に対してその重要性に見合った政策が講じられていない。立地選択に係わる構造的な要因を解消することなく放置すれば、将来的には日本国内の製造基盤自体が海外に移転して国内製造が空洞化することが危惧される。

本稿では、このような認識から医薬品の輸入超過の実態を明らかにし、その背後に日本国内の医薬品製造の空洞化の懸念があることを示す。その上で空洞化に向けた流れを止めて競争力のある製薬産業を日本に根付かせるための創薬基盤整備の課題について論じる。

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