薬物治療における個別化医療の現状と展望 基礎研究の進展が医薬品開発に与えるインパクト

南雲 明(医薬産業政策研究所 主任研究員)

(No.56:2013年03月発行)

個別化医療とは、患者の遺伝的背景・生理的状態・疾患の状態などを考慮して、患者個々に最適な治療法を設定する医療と定義される。個別化医療の適用分野として最も進んでいるのは薬物療法への応用であり、その目的は個々の患者に対する治療効果の最大化と副作用の最小化、すなわち「適切な患者に、適切な薬を、適切なタイミングで、適切な量だけ提供する」ことにある。個別化医療の進展は、有効性・安全性・有効率の高い医薬品の入手、試行錯誤的医療選択の回避による効率的医療の提供、新薬開発促進・医薬品開発効率化による産業競争力の強化、疾患からの早期回復・予防医療の推進による医療費削減など、患者・医療関係者・製薬産業・国などに様々なベネフィットをもたらすと考えられる。近年、生命科学分野における研究の著しい進展により、個別化医療が一部実現されつつある。本稿では、次世代医療の1つとして期待される個別化医療について、目的・意義・方法論を明確にするとともに、アカデミアや産業界における動向を調査し、個別化医療実現に向けた課題と展望を考察する。

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