医薬品評価委員会 2012-46 治験薬の温度管理の記録方法

関連分類:その他

初回公開年月:2013年03月

質問

当院では、治験依頼者毎の温度管理に対する様々な要求に対応するため、以下の要件を満たす治験温度ロガーを導入しました。

  • 1年に1回の機器の校正と、校正証明書の発行
  • 温度測定だけでなく、記録できるデータロガー
  • 停電に備え、バックアップ機能付き
  • 10分間隔での測定
  • 温度逸脱や機器故障の際、即座にアラーム発報
  • 数分経ってもアラーム解除されない場合のメール送信(夜間・土日祝日の対応のため)
  • ログは画面上でも確認出来るが、CRAの確認・写し提供のため月1回のプリントアウト
  • 月に数回、機器が正常に作動していることを確認

導入後、いくつかの治験依頼者より、治験薬取扱手順書に記載があるということから、以下を要求されました。

  • ログのプリントアウトを1ヵ月毎よりも頻度を上げる
  • 1日に1回は、人による温度逸脱の確認が必要
  • 毎日確認した担保として確認日時とサインで記録が必要
  • 1日の最低値・最高値が一目で分からず、取扱手順書の要件を満たさないため、手順書に記載の様式しか認めない
  • 取扱手順書に温度記録書(様式○)とあり、それ以外の様式は認めない

GCPのガイダンス(旧:運用通知)の第39条に「手順書に従い」とありますが、当院としては治験薬管理の原理原則を大きく超えての過剰な対応と考えております。製薬協医薬品評価委員会として、上記の要求に対するご意見をお聞かせください。また今後、施設側の温度管理に対する、製薬協の見解の統一は考えていらっしゃいますでしょうか。

製薬協見解

治験薬保管場所の温度チェック及びその記録の方法については、GCPにおいて明確な基準は示されていません。しかし、その目的が、治験薬管理手順書に記載された保存条件に従って適切に治験薬を管理すること及びその事実を第三者にも説明できることであることを考えますと、重要なポイントは以下のような点※であると思われます。

  • 保存条件からの逸脱が生じた場合に、それを感知できること
  • 逸脱の程度(最大温度差)と期間(時間、日数)が把握できること
  • 逸脱の発生を治験薬管理者が速やかに知り、対応できること
  • アラーム及び電子メールシステムを利用している場合には、当該機器・システムが定期的にテスト・メンテナンスされていること

一般論としましては、貴院に導入されている温度管理システムは上記ポイントをカバーしているものと考えますが、逸脱感知の精度をどの程度に設定するか等の詳細な管理方法につきましては、治験実施計画書の規定(投与スケジュール等)及び治験薬の特性に依存するところが大きいものと思われます。したがいまして、貴院での温度チェック及びその記録で不十分とされた点につきましては、治験依頼者にその理由を確認したうえで、対応を協議されることをお勧めします。

なお、上記のような理由により、製薬協としての治験薬保管場所の温度チェック及びその記録の方法についての統一基準は示せませんが、回答のような考え方を示していくことで、加盟会社が過剰な対応を要求することがないよう、啓発をしていきたいと考えます。

  • 治験薬保存場所の温度管理と記録方法の留意点(重要なポイント)を述べていますが、温度管理記録がいかなるケースにおいても必須であるとの考えではありません。例えば、室温保存の治験薬を保存する場合において、週末・夜間を含め24時間温度管理されている(エアコンが稼働している)等、治験薬の品質に及ぼすリスクが著しく低い場所に保存する場合には、温度記録は必須ではないとする治験依頼者もあるかと思います。

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