健康医療データの用語集

健康被害

健康被害は、広くいえば、ある物事が原因で健康が損なわれることです。原因は、医薬品・医療機器のほか、健康食品・サプリメント、大気汚染や騒音などにも及びます。医薬品・医療機器による場合、健康被害は副作用とも呼ばれます。健康被害は、再び起こさないように、対策を行う必要があります。そのためにも原因特定が必要です。原因特定のためには、一人の患者さんの情報だけでなく、たくさんの患者さんの情報が必要です。近年では、健康被害情報の分析にリアルワールドデータが活用され始めています。

医薬品・医療機器の健康被害について、詳しく説明します。

医薬品・医療機器は、体にいい効果が期待されている反面、害になることもあります。その一つとして、医薬品・医療機器の効果が強く出過ぎる場合があります。例えば、血糖を下げる薬は、血糖を下げて血管を守り、心筋梗塞や脳梗塞、人工透析や眼底出血を予防する効果などがありますが、場合によっては効果が出過ぎて血糖が下がりすぎると低血糖を引き起こすことがあります。低血糖になると、冷や汗がでて、意識がなくなることもあります。

また、期待している効果からは想像できない反応が出ることがあります。例えば、じんましんは、想像できない反応の一つで、原因を特定できるのは1~3割ほどにすぎません。さらに、まったく予期していない事態が起きてしまうこともあります。過去の事例では、入っていないはずの成分が医薬品に含まれていて、その成分の作用が出てしまったことがありました。

このように医薬品・医療機器は、体に対してよい効果が期待される反面、害にもなる可能性を完全に排除することはできません。

健康被害の原因特定は難しい

健康被害は、再び起こさないために、原因を突き止めて、使わないようにする、使い方に気を付ける、または、起きたときのために予め患者さんに説明しておくなど、対策を講じる必要があります。しかし、原因の特定は、そう簡単ではありません。

もし、自分が医薬品・医療機器を使った後に、健康被害が出た場合、使った医薬品・医療機器を使ったことが原因と思うでしょう。一方で、同じ医薬品・医療機器を使った人が、必ずしも同じ健康被害にあっていないことも見聞きすると思います。また、同じ症状に対して同じ分量の医薬品を使用しても、必ずしも同じ健康被害は起きません。それは、個人の体質や持病、体調など、個人差や日によっての差があるからです。誰かが良く効くと言った薬が効かなかったり、同じ痛み止めが良く効く日とあまり効かない日があることを感じたりしたことがあると思います。人によって、また、その日の体調によっても、体の反応は異なります。

このように医薬品・医療機器への反応が、完全に一定ではないため、健康被害が起きた場合に、一人ひとりの事例では、たまたま起きたことかどうかがわかりません。医薬品・医療機器が原因であることを突き止める方法は、もう一度使ってみて、同じことが起きるかどうか確かめることです。しかし、健康被害が起きるかもしれない医薬品・医療機器をもう一度使うことはできませんので、この方法は使えません。

健康被害の可能性は、国が認可する前にわかっているはずではないのか、と思うかもしれません。実際は、市販後でないと、わからないことが大半です。医薬品・医療機器を認可する前の治験では、必要最小限の人数を対象にすることが求められますので、起きる可能性がとても低い重大な健康被害は、治験では起きていないことが多いのです。

このように、健康被害の原因特定は、そう簡単ではありません。

たくさんの人の情報を用いた原因特定

健康被害の原因特定の一つの方法として、市販後のたくさんの人の健康被害情報を分析する方法があります。これは、医薬品・医療機器を使った人と使わなかった人の比較によって、原因を突き止めようとする方法です。使った人と使わなかった人のそれぞれで、何割の人が同じ健康被害の症状が出ているのかを計算します。その差が大きければ大きいほど、医薬品・医療機器の使用が原因である確証が強まります。このようにして、原因特定に近づくことができます。

このような分析は、医薬品・医療機器を使っていない人の情報が必要になるため、個々の医薬品・医療機器会社が把握できる範囲を超えた、広い範囲の患者さんのリアルワールドデータが必要です。リアルワールドデータを活用することで、健康被害の原因特定が迅速に行われることが期待されています。

さらに詳しく知りたい人はこちら

用語集のトップへ戻る