健康医療データの用語集

リアルワールドデータ

リアルワールドデータ(Real-world data)は日常生活で得られる人の健康に関わるデータです。例えば、診療録(カルテ)や処方箋、ウェアラブルデバイスのデータがリアルワールドデータと呼ばれており、医薬品などの研究・開発、公衆衛生、医療経済など幅広い分野で利用されています。

リアルワールドデータには以下のようなものがあります。

電子カルテ 医師が診療の経過などの医療データを、電子的に記録したものです 健康診断 健康の維持や疾患の予防・早期発見を目的とした診察及び各種の検査結果です 疾患レジストリ 特定の疾患、治療経過などの医療データの登録システムです レセプト 医療機関が保険者に診療費を請求するために発行する明細書です ウェラブルデバイス スマートウォッチのように手首や腕など身に着けたまま使えるコンピュータ端末です

一方で、無作為化臨床試験から得られるデータはリアルワールドデータではありません。無作為化臨床試験は例えば新薬と標準的に使われている薬を比較してどちらの有効性や安全性が高いかを調べるときに、バイアスを除いて比較できる有用な方法です。ただし、臨床試験では一定の制限のある条件下でしか評価できません。例えば、臨床試験は参加者の安全性が最優先ですので、高齢者や合併症のある患者さんは対象外となったり、薬の効果を高い精度で評価するために重症の患者さんのみを対象としたりします。
現実の治療は様々な医療環境で、様々な特性を持った患者さんに行われます。例えば、臨床試験に90歳以上の高齢者はいなくても、実際には90歳以上の患者さんは大勢います。そのような場合に、日常の診療で薬を使用している患者さんのリアルワールドデータを分析することにより、より現実に近い評価ができるようになります。ただし、リアルワールドデータでは無作為化臨床試験のように無作為に薬を割り当てることでバイアスなく公平に効果を比較することができません。そのため、疫学や統計学といわれる試験の計画やデータ解析の方法でバイアスをできるだけ除いて薬の比較を行います。
また、治療薬のない希少な病気や難病を患っている患者さんを対象に、画期的な新薬とプラセボ(見た目や味は薬と同じで有効成分を含まないもの)を比較する無作為化臨床試験を行う場合、多くの患者さんは新薬を希望されることから、プラセボに割り当てられることは倫理的に許容されない場合もあります。このような場合に、リアルワールドデータをプラセボの情報の代わりとして利用することで、患者さんにプラセボを投与することなく新薬を評価できる可能性が生まれます。
さらに、リアルワールドデータは薬の効果と副作用の比較以外にも活用されています。例えば、日々の生活のデータをウェアラブルデバイスから収集・分析することで、患者さんの活動の質が向上しているかを調べたり、治療の実態や医療費の負担を調べるなど、様々な目的で役立っています。

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