製薬協

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交流会

「バイエル薬品株式会社 三田 直侑さん(マーケットアクセス、アウトカム研究 )」

司会:バイエル薬品株式会社 木戸口 結子さん

医学生が医療の前線に立ったときは
まず医薬品の適正使用を徹底してほしい

司会司会をさせていただきますバイエル薬品の木戸口と申します。よろしくお願いします。
早速、質問を受け付けたいと思います。初めの方、どうぞ。

学生先日、別の企業の方とお話ししているときに、「周囲の医学部生で製薬関連の分野に進む人はいないのでしょうか」と何度も聞かれました。
私は、なぜそういうことを聞かれるのだろうと疑問に思っていたのですが、今回の講演で貴重なお話を聞かせていただき、その疑問がある程度解消されました。
ただ、もう少し理解を深めたいと思いますので、製薬企業のお立場から、これから医療の前線に立つわれわれ学生に何を求めるのかをお聞きしたいと思います。

三田ご質問ありがとうございます。
まず患者さんの治療という観点では、医薬品の適正使用の徹底を心がけていただくことが何よりも重要だと思います。
私たちの製品、すなわち医薬品は使い方によっては患者さんの生命、健康にかかわるリスクがあります。
ですから私たちが薬に関する情報を正確にお伝えしてご理解いただくことももちろん重要ですが、それを実際の医療でそのとおりに、使用ルールの範囲内で使っていただくことをお願いしたいと思います。
治療へのアクセスに関しては、患者さんが医療にアクセスするためのサポートをしていただきたいです。
私たちは、患者さんが必要な医療にたどり着ける環境が確立されてほしいと願っています。
たとえば、まだ診断されていない患者さんや、診断されて医師の治療を受けていてもまだ必要な治療が開始されていない患者さん、あるいは治療が開始されたあとも治療を続けるためのサポートが必要な患者さんなど、いろいろなケースが考えられます。
そうした患者さんの手助けをする一番近いところにいらっしゃるのが医師、看護師、薬剤師という医療従事者の方々だと思います。
そのような手助けを通じて、私たちの製品である医薬品が患者さんの役に立てるような機会が確保されることを願っています。
あとはもし可能であれば、臨床でのご経験を通じて、私たちが次にどのような薬剤を開発したらよいのか、また開発した薬剤を使うための情報提供などのサポートをどのようにしたらよいのか、そのためのヒント、気づきを与えていただくこともお願いしたいと思います。

学生ありがとうございます。
今のお話で、医療者と製薬企業のつながりが重要だとあらためて実感しました。

司会適切な治療の継続を図るためには、患者さんのアドヒアランスの維持・向上も大切な要素です。
それについても医師の先生方の支援が非常に重要だと思っています。

社会人としての経験を重ねることで
コミュニケーション能力も磨かれる

司会この交流会の前に行われた講演会の内容に関連して、何か質問はありませんか。

学生先ほどコミュニケーション能力に関するお話があったと思います。
そのとき三田さんは「今もコミュニケーション能力に苦手意識を持っている」とおっしゃっていました。
私自身もコミュニケーション能力を上げたいと常に思っていますが、なかなかそれが上達しないまま学生生活も残り半分になってしまい、すごくあせりを感じています。
民間の会社に入ってから求められるコミュニケーション能力は、大学生活で必要なコミュニケーション能力とは異なり、組織の中でのコミュニケーション能力が必要になってくると思っていますが、それは会社に入ってから身に着くものでしょうか。
学生のうちからそのための能力を伸ばしておければよいと思うのですが、いかがでしょうか。

三田会社に入ると違う部署の方と話す機会が多いので、自分とまったく違う立場にある方の話の意図を理解することや、その方が受け入れやすいような発言をすることが常々求められます。
それが会社に入ってから必要なコミュニケーション能力の一つだと思います。
もちろん学生時代にもそういう状況はあると思いますが、企業に入ると部署の違いということがより明確に出てきますので、仕事のときはより繊細なコミュニケーション能力が必要と感じています。
それでは、学生時代にできることは何でしょうか。
けんかをしながらでも友だちと仲良くやっていくということは、学生時代ならではのことかもしれません。
会社に入ると衝突しそうになったら、ぶつかっていくというより、折り合いをつけるよう働きかけることが多いと思います。
そういう意味では、学生時代に相手がどう思っているかを聞いてみたり、自分の意見をぶつけてみて相手からどう評価されるかを試してみたりすることは、就職前の貴重な経験になるかもしれません。

学生いまお話を伺っていてとても驚きました。
私は今RIKEJO CAFEさんではないですが、別の学生団体で活動していて、その際によくけんかをします。
立場の違いもあまり意識しないことが多く、何度もぶつかって険悪なムードになることも少なくありません。
そのため、このままでコミュニケーション能力は本当に大丈夫かと不安に思っていました。
今おっしゃったように、学生時代の意見のぶつかり合いは、その一つひとつがたしかに貴重な体験だなと、あらためて感じることができました。
ありがとうございます。

三田社会人になると意見が違うように見えるときに何が問題なのかを見極め、それを切り抜けるスキルが高い方が多いので、けんかをするようなことが減っていくのかもしれないと思います。

司会私は三田さんの元上司でしたが、三田さんを見ていて、コミュニケーション能力は社会人としての経験を積みながらどんどん磨かれていくものだということを実感しています。
就職してから、つまり社会人になってからもコミュニケーション能力は経験とともに、どんどん積み上げられていくものだと思っています。

立場に関係なく意見を言い合えることや
女性が働きやすいことも外資系企業の特徴

司会製薬企業ついて何か質問はありませんか。

学生私は4月から医学部に転部する予定です。
製薬企業にとても興味を持っています。
知りたいことはたくさんありますが、よい機会ですので、バイエル薬品様について質問させてください。
まず、御社の社風はどのような感じでしょうか。
また、意識されている競合会社があれば教えて下さい。

三田まず社風については、外資系なのに日本の企業のようなところもあるとよく言われます。
人々のつながりを重視するような社風ではないかと思います。
一緒に働きやすい方が多いともよく言われます。
複数の部門が関わって仕事をしていると、それぞれの部署でプライオリティが違うので、そこをどのように調整していけばよいのか道筋が見えづらいことがあります。
そうしたときでも、弊社では皆、相手の意見を尊重することをいつも一番大事にしています。
そういう意味で、働いているときに同僚を含め、相手を大事にすることが期待されていますし、実際に自分もそう接してもらっていると思える職場だと思います。
他方で、経営方針に関してはドイツの本社、および本社機能の一部があるアメリカやスイスの支社が立てた方針をうまく日本に合わせつつ運用していています。
効率性を求めるような経営方針が立てられていて、実際に現場でもそれに合った効率的なオペレーションが求められるところも特徴だと思います。
2点目の競合会社については、製薬産業では製品単位で他社と競合しますが、会社の間で全面的に競合するということがあまりなく、他社でも協力しやすいということがあると思います。
たとえば添付文書をご覧になり、同じ効能効果 の製品を持っている会社があればその会社とは競合しますが、同じものがなければ意外にフランクに話せます。
つまり、同じ疾患領域の製品があるかないかで変わってくると思います。

学生社風についてのお話では、相手の意見を尊重するとおっしゃっていたと思います。
日本では一般的に、新卒の人などの立場的に地位が下の人の意見はなかなか通りにくいと思います。
そうした立場の人でも意見の根拠が明確であったり、論理的に説得力があったりすれば、意見が通りやすいということはありますか。

三田今のご質問で思い出したことがあります。
司会をされている木戸口さんのグループに配属されていたときのことです。
木戸口さんに話しに行くと、いつもこちらに体を向けて聞いてくださったことを覚えています。
そうした場面を思い出しながらご質問を伺っていたのですが、新卒でもまずは話を聞いていただける機会はあるし、それがビジネスの観点で本当に妥当なものであれば、新規のプロジェクトとして採用される機会もあると思います。

司会外資系のよさと日本の会社のよさと両方があると思います。
具体的には他者の意見を尊重し、誠実であること、そして人を大切にすることがよいところだと思います。
それから、外資系らしい特徴といえるかもしれませんが、あまり年齢や立場に関係なく意見が言い合えることも挙げられます。
もう一つは、女性が働きやすい環境であることです。
もちろん日本の会社もどんどん変わっていると思いますが、女性が活躍しやすい環境が数多くあって、柔軟性が高いこともよいところだと思っています。

立場が違う組織の協力と目標の共有を
図ることがマーケットアクセスの仕事

司会それでは次の方、ご質問をお願いします。

学生先ほど「マーケットアクセスのお仕事では、立場を越えていろいろな人と協力できる」とおっしゃっていましたが、具体的にどのようなかたちで、どのような状況で立場を越えて協力されているのかを伺いたいと思います。

三田立場を越えることの一つの例としては、たとえばある疾患で未診断の患者さんに診断を受けることを促すために、疾患に関する情報を多くの方にお届けするプロジェクトを立ち上げることがあります。
そうしたとき、自社だけ、一つの会社だけでそうしたプロジェクトを展開しても、情報をお届けできる範囲は限られてしまいます。
そこで、患者団体の方とかその治療にかかわる医師、看護師の方々の協力を仰ぐことを考えます。
立場が異なるというのは組織、領域が異なるという意味で、製薬会社、患者団体、病院、学会はまさに立場が異なる組織です。
組織が違っても、未診断の患者さんが治療を受けることなく悪化しないでほしいとか、その患者さんが必要な治療にたどり着いて、アクセスできて、早くよくなってほしいという思いは、立場を越えて共有できることです。
そうした大きなビジョンを共有したうえで、それぞれの立場に応じてできること、たとえば製薬会社であれば情報提供のためのリーフレットをつくるとかイベントを開くことが得意です。
医師であれば医学的な知識を患者さんにわかりやすく説明するとか、講演でお話しいただくことが考えられます。
また患者団体であれば経験談を通して、実際にどういうときに未診断で困ったかを振り返り、いろいろなエピソードも含め、問題点を教えていただくことがよくあります。
立場の違いに応じて得意分野も違ってくるので、そういうところを見極めてうまく協力関係をつくっていくことも私どもの仕事になるかと思います。

学生それぞれの領域の強みを生かしてみんなで協力していく姿勢は、とても素敵だと思いました。
ありがとうございました。

司会製薬会社にもいろいろな部署があり、どの部署もいろいろな人と協力・協働することが少なからずあります。
マーケットアクセスの職種は特にいろいろな立場の人と連携することが多くあります。
先ほどのご質問にもありましたが、立場の異なる人同士で折り合いをつけるというか、共通の目的・目標を見つけて、共に一つの目標に向かってそれぞれが協力し、貢献できるように働きかけることが、マーケットアクセスの仕事の面白さの一つだと私は思っています。

医薬品のリスクを最小限にとどめ
ベネフィットに傾けるサポートをしたい

司会皆さんが感じておられる製薬産業に関する疑問点などにもお答えしたいと思います。何かありますか。

学生製薬産業にかかわらず、いろいろなものづくりの仕事にはメリットもデメリットもあると思っています。
特に医薬品は副作用のリスクがあるということで、最近副作用について個人的に興味を持ちました。
そこで、製薬業界の方たちが副作用に関してどのように思われているのかを知りたいと思い、今回参加させていただきました。
医薬品は副作用があったとしても、何とかして使ってもらわないといけないといった課題があると思います。
また治療薬ではありませんが、新型コロナウイルスのワクチンでも、体調を崩すといったデメリットが広く認識されています。
もちろん、副作用をなくすための研究は進めていただきたいと思いますが、そこは一つ置いておいて、副作用があるとしてもどう使ってもらうようにするのか、どうマーケットにアピールしていくのか、そこで意識されていることを教えて下さい。

三田ご質問された方も同じかと思いますが、副作用のない薬ができることを私も願っています。
しかし、副作用がまったくない医薬品は手に入らないので、今ある最善の薬を使っているのが現状だと思います。
そもそも副作用があるといっても、体質や使い方がその原因であったり、薬物間相互作用によるものであったり、あるいはその方に合わない用量だったとか、いろいろな可能性が想定されます。
つまりそうしたことに配慮することで副作用を防いだり軽減したりできる可能性があります。
さらに患者さんに目を移せば、患者さんが副作用の兆候に気づき、副作用が重症化する前に主治医に申し出て対策を打つことも重要だと思います。
副作用に着目するとうしろめたい気持ちにもなりますが、リスクとベネフィットのバランスを考え、その患者さんの人生にとってベネフィットのほうが大きければ、使っていただくことが一つの方向性だと思います。
副作用対策により、リスクとベネフィットのバランスをベネフィットにいかに傾けるかが重要です。
そのためには、主治医の工夫、患者さん自身の工夫に加え、私たちもサポートすることができると思います。
そうしたことを意識して、私たちは日々頑張っています。

司会より副作用の少ない医薬品を開発することも製薬会社の使命です。
ただ、体に薬という異物を入れる以上、副作用がまったくない医薬品を開発することは難しいと思います。
ですから、大切なことはベネフィット・アンド・リスクを念頭に置くことです。
そして患者さんにとって、ベネフィットがリスクを上回ると考えれば、その薬を使うことになると思います。
製薬会社の立場としてはもちろんよりリスクの少ない、副作用の少ない医薬品の開発を目指すわけですが、ベネフィットとリスクについてきちんと説明し、それを患者さんにご理解いただくことも製薬会社の努めだと思っています。
その際、リスクの話ばかりが先行してしまうと、どうしても誤解が生じるので、そこを丁寧に説明することが大切だと思っています。
リスクや副作用の情報を集めてコミュニケーションや啓発に役立てる、あるいは集めた情報からさらによりよい医薬品の開発につなげるということを、製薬会社として心がけていきたいと考えています。
本日は貴重なご質問を数多くいただきました。そろそろ終了の時間となりました。皆さん、ありがとうございました。

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