医薬品の価格算定と薬剤経済学 応用への道筋

慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室 専任講師 池田 俊也
医薬産業政策研究所 主任研究員 小野塚 修二

(No.19:2004年05月発行)

薬剤経済学研究は、薬物療法の費用と効果の両面を検討し、その経済的効率性を定量的に評価する方法論である。諸外国においては、保険償還の可否の判断等、政策決定における利用が進展している。一方、わが国においては、政策決定における薬剤経済学の活用可能性はしばしば指摘されているものの、具体的な利用は立ち後れている。

薬価基準制度のもとでは、類似薬効比較方式において種々の加算が導入されており、新薬の価値を考慮した価格算定が行われているといってよい。しかし、その加算率については必ずしも科学的根拠に基づいて設定されているわけではない。加算率の決定など、薬価算定の場面において薬剤経済学研究の結果を参考にすることにより、薬剤の臨床的・経済的価値を適切に反映した、科学的根拠に基づいた価格算定が行える可能性がある。但し、研究を誰がいつどのように実施し、結果をどのように評価するのか、また、研究の質をどのように確保するのか、など、薬剤経済学の研究結果を薬価算定の場面で利用するためには、いくつかの課題に対応する必要がある。

本リサーチペーパーでは、薬剤経済学研究の手法についての概説、諸外国における政策決定への活用状況、製薬企業へのアンケート調査の結果に基づいたわが国における新薬の薬価交渉における薬剤経済学研究資料の提出状況と分析手法等についての検討、新薬を対象とした薬剤経済学研究の公表論文のレビューを実施した。最後に、これらを踏まえて、わが国において薬剤経済学研究を薬価算定に用いる場合の条件整備等の課題と展望について考察した。

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