医薬品評価委員会 2020-16 治験依頼者提供のシステム等を用いた治験実施医療機関で保存する文書・記録の保存

関連分類:記録の保存

初回公開年月:2020年07月

質問

治験依頼者が提供するWebポータルにて、治験実施計画書、治験薬概要書、各種マニュアル、治験依頼者発行レター等が治験責任医師/CRCに交付され、受領記録(治験実施計画書合意書含む)もそこで取られています。

治験依頼者からは、治験期間中「治験依頼者が作成した文書に対しての電子ISF(Investigator Site File)」と考えており、アップロード=ISFの保存(それ以上の保存の対応は不要)としていて、治験終了後にCD-R等で実施医療機関へ提供するものを保存してください、と言われていますが、この方法では実施医療機関に保存はされていません。アクセス可能ということで、実施医療機関での保存とみなされるのでしょうか?また、治験依頼者との取り決めのような文書を作成すれば、許容されるのでしょうか?

クラウドを使用する保存も増えてきております。実施医療機関側のクラウド(当院使用中)、治験依頼者側のクラウド、双方に保存が必要と認識していますが、アクセスできればどちらが管理しているクラウドかは問わない、ということになるのでしょうか?

製薬協見解

GCP第41条第1項ガイダンス1では、「実施医療機関の長は、実施医療機関において保存すべき記録(文書を含む。)の保存に際しては、それぞれの記録ごとに記録保存責任者を定めておくこと。」、同条同項ガイダンス3では「治験責任医師及び実施医療機関の長は、治験開始前、実施中及び終了後に、治験責任医師及び実施医療機関が作成した全ての治験に係る文書又は記録の管理権限を保持すること。」が記載されています。また、「治験に係る文書又は記録について(令和元年7月5日:厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課事務連絡)」の別添「「治験に係る文書又は記録」の一覧について」では、「治験関係者は、原資料を含む各文書又は各記録の所在に関する記録を保持するものとする。治験の実施中及び実施後の保管システム(使用する媒体を問わない。)は、文書の識別、更新履歴、探索及び取出しに関する機能を有すべきである。」が記載されています。 したがって、治験責任医師及び実施医療機関の長(又は実施医療機関の記録保存責任者)が治験に係る文書等の所在を明確にし、保管システムの管理権限を保持していれば、保存場所としてセキュリティが確保されたクラウド等システムを使用することは可能です。

クラウド等システムの使用については、「治験関連文書における電磁的記録の活用に関する基本的考え方」の一部改正について(平成26年7月1日:厚生労働省医薬食品局審査管理課事務連絡)の別添3.(2)(2)ⅲ)項に、治験関連文書を電磁的記録として保存する場合の方法及び留意事項として、「クラウド等システムを管理する企業、団体等に委託することも可能である」こと、また「治験終了後に、継続して当該保存業務を委託すること、当該電磁的記録をDVD-R等に別途記録した上で保存業務の委託を継続すること等も可能」であることが記載されています。

さらに、同事務連絡の別添4.(4)には、クラウドコンピューティングの活用等が進められた場合として「「クラウド等システムによる交付」及び「クラウド等システムによる保存」については、交付側及び受領側が同一のサーバーを使用して実施することが可能になると考えられる」こと、またこのような場合には「「当該相手方の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該事項を記録する」ことが明確になるような環境を構築することが重要である。例えば、あらかじめ手順書等において、ログ等を活用し事実経過を検証できるように規定するとともに、法令で定められる保存期間中は、常に受領側の意思で電磁的記録を確認でき、ファイル出力により書面を作成できるようにしておく」ことが記載されています。治験実施医療機関で保存する文書・記録の保存方法について、ご質問のような治験依頼者から提供されるWebポータルを使用した保存や、治験終了後のCD-R等への移行・保存が、所在に関する記録として作成され、上記事務連絡を含む治験関連文書の電子化に係る関連法令・通知等で求められる要件を充足していれば問題ないものと考えられますが、要件についての対応の詳細については治験依頼者にご確認ください。

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