医薬品評価委員会 2019-40 原資料の特定 - 症例報告書に直接記入されかつ原データと解すべき資料(その2)

関連分類:記録の保存

初回公開年月:2019年12月

質問

アウトカムスタディーにおいて、カルテやワークシートを使用せずに、被験者からの聴取(発言自体)をその場でEDCへ入力することが治験実施計画書に規定されています。また、バイタル測定などの結果も直接EDC入力が求められ、カルテへの記載を不可とされています。この場合、被験者からの聴取内容や検査値を直接CRCがEDCに入力することになり、EDCがファーストレコードとなります。原データがカルテやワークシートに記録されないため、治験の再現性が難しい状況です。原資料が実施医療機関に残らない状況は問題ないでしょうか?

また、有害事象についても、被験者からの聴取に基づきCRCがその場で事象名と因果関係をEDCへ入力するように求められています。後日、治験責任医師等がEDC(被験者からの聴取)を確認することで医学的判断の担保とするようですが、ファーストレコードの段階でCRCが医学的判断を伴うEDC入力を行う当該手順は妥当でしょうか?

製薬協見解

GCP(GCP第7条第1項ガイダンス2/中央薬事審議会答申10-4 9)、ICH-GCP 6.4.9)では、治験実施計画書の規定事項として「症例報告書に直接記入され(すなわち、その記入以前に文書又は電子的に記録されたデータがなく)、かつ原データと解すべき資料の特定」を求めていますので、このような記録形態は現在のGCPでも認められています。しかしながら、本特定は、検査を含むデータの取得方法や記録方法等を勘案し、慎重に検討すべきと考えます。

一方、原データは、帰属性、判読性、同時性、原本性、正確性及び完全性を満たす必要があり、原データを変更した場合には、その過程をさかのぼることができるとともに、変更前の記載内容を不明瞭にすべきではありません。また、必要に応じて、当該変更は説明できるようにしておかなければなりません(GCP第41条第1項ガイダンス4)。さらに、原資料は実施医療機関に保存義務と管理権限のある記録ですので、治験依頼者がこれを独占的に管理すべきではなく、治験責任医師が常にアクセス可能であることを保証すべきものとされています(GCP第47条第1項ガイダンス注1))。また、症例報告書に関しては、治験責任医師等は治験依頼者に提出したものの写しを保存することとされています(GCP第47条第1項ガイダンス1)。

なお、日本において医学的判断は医師のみが実施できる行為ですので、医師ではないCRCが医学的判断を行うことは問題と思われます。過去の見解(2011-46)もご参照ください。

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