医薬品評価委員会 2018-52 再同意取得のタイミング(その4)

関連分類:同意の取得

初回公開年月:2019年03月

質問

背景

副作用情報の更新による被験者への説明文書の変更点について、被験者Aから口頭同意を取得し、それを記録した(以下、上記の説明文書を「ICF改訂版」とする)。その後、ICF改訂版が治験審査委員会にて承認されたため、被験者Aが実施医療機関を訪問した際に、治験責任医師又は治験分担医師(以下、「治験責任医師等」とする)はICF改訂版を用いて再同意を取得しようとした。しかし、被験者Aは急遽入院が必要な状態で、文書に自分で署名できる身体状態ではなかった。その結果、被験者Aが署名可能な身体状態となった、入院から約1か月後にICF改訂版による再同意を取得した。

質問

  1. (1)
    GCP第54条では文書による再同意取得のタイミングについて規定がないかと思いますが、一時的な署名困難な状況を理由に、文書同意の取得が遅延することはGCP違反に該当するのでしょうか?
  2. (2)

    上記のように、文書を用いた再同意を取得できない状況において、通常診療の範囲を超えて、治験のための検査(治験実施計画書で定められた検査)を実施する場合、次のi)- iii)のうちどの解釈が正しいのでしょうか?なお、ここで言う「治験のための検査(治験実施計画書で定められた検査)」とは、治験開始前に同意を取得した範囲内の検査であり、今回の説明文書の改訂には治験実施計画書の変更に伴う変更は含まれません。

    1. i)

      ICF改訂版を用いて文書同意を取得していなくても、治験の検査は実施可能である。

      理由 ICF改訂版について口頭同意を取得しており、変更点は治験の検査と関連がないものであるため。また、実施する治験の検査については、被験者Aが治験参加を決めた最初のICFにおいて既に同意取得済みであるため。

    2. ii)

      ICF改訂版を用いた文書による再同意を取得しないかぎり、いかなる状況であっても、治験のための検査は実施すべきでない。

      理由 治験のための検査を実施する時点で、最新版のICF(ICF改訂版)で文書同意を取得している必要があるため。入院前に、ICF改訂版について口頭同意を取得していることや、被験者Aが治験参加を決めた最初のICFにおいて検査に同意していることは、過去の一時点における「意思の担保」にしかならないから。

    3. iii)
      上記以外

製薬協見解

回答1

ご質問のケースにおきましては、文書に自分で署名できる容態ではないため、文書での再同意取得が遅れてもやむを得ないと思われます。重要なことは一律に再同意の取得期限を設定するのではなく、被験者の不利益にならないよう、適切なタイミングで再同意を取得することであると考えます。

なお、文書での再同意取得が遅れた理由を第三者に説明できるよう、記録を作成しておくことをお勧めします。

回答2

ご質問のケースにおきましては、実施する検査が既に被験者から同意を取得している範囲内であることから、原則としてi)の運用で問題ないと思われます。ただし、その前提として、治験責任医師等は、「被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上に対する配慮が最も重要」(GCP第1条ガイダンス2(3))であることを踏まえ、被験者の容態を考慮の上、当該検査の実施(又は治験の継続)を慎重に判断する必要があります。

なお、治験途中に被験者が同意能力を失った場合の対応については、過去の見解(2015-39)をご参照ください。

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