医薬品評価委員会 2011-02 治験協力者の包括指名

関連分類:治験責任医師、治験分担医師等

初回公開年月:2011年07月
改訂公開年月:2013年04月

質問

質問は、治験協力者の包括指名が可能か否かです。

ペンタイプのインスリン投与で使用するような注射器を用いた他疾患治験において、注射をする看護師全てを治験協力者とするようにとの要求があります。連日投与のため、特定の看護師を指名することが出来ず、全ての看護師が関わる可能性があり、とすると所属看護師全員を「治験分担医師・治験協力者リスト」に記載することになります。

しかし、看護師は退職等変わることが非常に多く、その都度、院長印が必要な当該リストの変更再指名は非常に煩雑となります。そこで、「治験分担医師・治験協力者リスト」上では「○○病棟看護師」と記載し、包括指名をすることは問題でしょうか?治験協力者(の適格性)は治験審査委員会での審査対象ではありませんし、必要があれば後から当該リストとは別に看護師リストを作成することは可能ですので、問題はないと考えるのですが、いかがでしょうか。

製薬協見解

GCP第43条第1項ガイダンス1には、治験責任医師は治験関連の「重要な業務」の一部を治験分担医師又は治験協力者に分担させる場合には、分担させる業務と分担させる者のリストを作成し、予め実施医療機関の長に提出し、その了承を受けることとあります。

分担させる業務と分担させる者のリストを作成する目的は、治験の重要な業務を任せる者をあらかじめ特定し、担当する業務を明確にし、責任の所在を明らかにしておくことと考えられますので、ご質問にあるような包括的な記載形式は適切でないと考えます。

また、GCP第36条第2項ガイダンス2には、治験が適性かつ円滑に行われるよう実施医療機関の長が講じなければならない「必要な措置」の一つとして、治験分担医師及び治験協力者の了承が挙げられており、事後の記録では実施医療機関の長の責務を達成できません。

なお、2012年3月27日以降の「治験の依頼等に係る統一書式」におきましては、治験分担医師・治験協力者リストへの院長押印等は必ずしも必要ではありません。院内の手順を整備していただいたうえで、押印を省略されることで、了承をいただく際のご負担が軽減されると考えます。

一方、GCP第43条第2項において、「治験責任医師は、治験分担医師及び治験協力者に治験の内容について十分に説明するとともに、・・・」と規定されています。このようなことから、治験特有の特別な手順や手技が定められていて、事前の教育が必要な業務を上記の「重要な業務」とし、当該業務を治験責任医師から分担される者が治験分担医師又は治験協力者に該当すると考えることができます。つまり、事前の教育が必要とされる特別な投与(注射)手順や手技が定められておらず、投与(注射)後の被験者の安全は、治験責任医師又は治験分担医師による経過観察等により確保される場合には、投与(注射)だけを行う者を治験協力者とする必要は必ずしもないと思われます。

したがいまして、ご質問のケースが治験の重要な業務の一部であるかどうかを、もう一度治験責任医師及び治験依頼者で検討することをお勧め致します。

見解改訂理由

「『治験の依頼等に係る統一書式』について」(平成24年3月7日 薬食審査発0307第2号・医政研発0307第1号)発出に伴い、押印が省略できる旨の説明を追加しました。

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