医薬品評価委員会 2010-27 治験責任医師の異動/交代(その6)

関連分類:治験責任医師、治験分担医師等

初回公開年月:2010年10月
改訂公開年月:2021年03月

質問

ある実施医療機関の治験責任医師が急死されました(全く予測不可でした)。被験者対応は終了(最終来院を終え、SDV後全てのCRFを提出済み)しており、数ヵ月後に治験終了報告書が提出されるという状況ですが、実施医療機関側としては治験責任医師が不在である状況は好ましくないことから、早急に治験分担医師の中から治験責任医師を選出するとなりました。

治験責任医師の変更は審議事項である事から、緊急にIRBを開催する準備をしていました。しかし、治験依頼者が治験責任医師の選定と合意、治験計画変更届を提出後に、書式10「治験に関する変更申請書」を実施医療機関の長に提出するので、その後にIRB審議をして欲しいと要請されました。そうすると次のIRBでは間に合わず、結果2ヶ月先に審議ということになってしまいます。

治験依頼者の対応を待っていると空白期間がある為、実施医療機関側としては、まずは、新治験責任医師が治験分担医師・治験協力者リストを作成して病院長に提出、その後すぐに病院長の指名がなされました。治験責任医師の変更については、治験依頼者から変更申請の提出があるまでは審議をしないで欲しいと言われ、審議しておりません。このような対応で良いものなのでしょうか。

製薬協見解

GCP第6条で規定されていますように、治験責任医師を選定する責務は治験依頼者にあります。したがいまして、緊急のケースにおきましても、治験依頼者は適切な治験責任医師を選定した上で、実施医療機関の長に変更を申請する必要があります。

一般に選定手続きは社内SOPで定められ、新しい治験責任医師の履歴書の入手や調査、記録の作成、社内責任者による承認に時間を要します。それらの選定手続きを行ったうえで初めて新治験責任医師との治験実施計画書の合意、その後の実施医療機関への申請が許されます。また医薬品医療機器等法に基づく治験計画変更届は覚書締結前の提出が必要です。もちろん、今回のような緊急のケースにおきましては、これら手続きは速やかに行う必要があります。

治験責任医師変更の審議に関して、定例の会議ではなく貴院が準備された臨時の会議開催で対応するとのお考えは適切であると考えます。しかしながら、治験依頼者では、上述の手続きを踏む必要があることから緊急のIRBに書類の提出が間に合わないこともあります。

また、治験依頼者からの対応のないまま新治験責任医師がリストを作成し、実施医療機関の長の了承を得ることの手続きについては、治験依頼者内での新治験責任医師の選定日と貴院での了承日との間で矛盾を生じるおそれがあります。

GCPには治験依頼者と実施医療機関との間で一連の手続きが求められている部分もあります。手続きを行うにあたっては2005-72009-412009-43の見解を参考に、治験依頼者と十分に協議しながら進めることをお薦め致します。なお、今回のケースでは、既に全ての被験者が最終来院を終え、SDV後全てのCRFを提出済みとのことですので、治験依頼者及び実施医療機関の長と協議の上で、治験責任医師の変更手続きを行わずに治験分担医師より治験終了報告書を提出してもらうことも、ひとつの特例措置かと思われます。

見解改訂理由

薬事法から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」への名称変に伴い、軽微な記載整備を行いました。

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