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三大感染症および顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases, NTDs)

世界149の国と地域の10億人を超える患者さんのために:新たなパートナーシップにより貧困と感染症の負の連鎖を断ち切る

WHOによると、三大感染症であるHIV/エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases, NTDs)は世界で10億人を超える患者さんがいると推測されており、その多くが発展途上国あるいは貧困層に集中しています。これらの感染症は貧困層で蔓延し、さらに多くの国や地域で貧困の原因ともなっています。この貧困と感染症の負の連鎖を断ち切ることは、感染流行国の経済成長と世界情勢の安定化に必要です。

これらのグローバルヘルス課題解決のためには、感染流行国における保健医療システムや医療保険制度などの医療基盤の強化、必要な医薬品・ワクチンを確実に患者さんに届けるための流通システムの整備、さらにはこれらの疾患を対象とする新薬・ワクチンの創出を加速させる環境整備など、様々な対策が求められます。これらを推進するにあたり、製薬産業を含めた官民パートナーシップをはじめ、世界の保健医療の改善に携わるあらゆるステークホルダーの協働を通じた柔軟な対応が求められています。

※顧みられない熱帯病
熱帯地域を中心に蔓延している寄生虫や細菌による感染症は、これまで先進国から主要な疾患と考えられてこなかったことから、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases, NTDs)と呼ばれています。WHOによると、デング熱、狂犬病、トラコーマ、ブルーリ潰瘍、トレポネーマ感染症、ハンセン病、シャーガス病、睡眠病、リーシュマニア症、嚢尾虫症、ギニア虫感染症、包虫症、食物媒介吸虫類感染症、リンパ系フィラリア症、河盲症、住血吸虫症、土壌伝播寄生虫症がNTDsと定義されています。

 日本においても、発展途上国が抱えているこのような問題を官民の連携により主導的に解決していこうと動き出しています。従来、グローバルヘルス分野における研究開発は、各国政府、国連機関、慈善団体等がその重要な資金提供者でした。2013年に設立された日本発の官民パートナーシップ、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund, GHIT Fund)は、民間企業がイニシアティブを取り、資金拠出パートナーとして参画している非常に画期的な取り組みです。

 GHIT Fundは、官・企業・市民がセクターの垣根を越えてパートナーシップを組み、共同で資金を拠出して設立した世界初のグローバルヘルス研究開発に特化した基金です。途上国の最貧困層が必要とする医薬品・ワクチン・診断薬の研究開発・製品化に向けて、三大感染症と顧みられない熱帯病に関する日本と海外の共同研究開発プロジェクトに対して助成しています。GHIT Fundにパートナーとして参画している企業は以下の通りです(2016年6月現在)。

フル・パートナー:アステラス製薬株式会社、中外製薬、第一三共株式会社、エーザイ株式会社、富士フイルム株式会社、塩野義製薬株式会社、武田薬品工業株式会社

アソシエイト・パートナー:大塚製薬株式会社、シスメックス株式会社

アフィリエイト・パートナー:グラクソ・スミスクライン株式会社、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社、協和発酵キリン株式会社、メルク株式会社、田辺三菱製薬株式会社、ニプロ株式会社、大日本住友製薬株式会社

日本製薬工業協会では、我々が保有する高い科学技術に基づく新薬開発の強みを活かし、開発途上国の感染症に対する新薬創出を通じて、日本のグローバルヘルス分野における国際貢献を強化することを目指しています。

会員企業の取り組み事例
リンパ系フィラリア症治療薬の無償提供および診断キット提供 エーザイは、2010年11月に世界保健機関(WHO)に対してリンパ系フィラリア症治療薬「ジエチルカルバマジン」(DEC)22億錠を2020年まで無償提供することに同意しました。それに基づき、インド自社工場でDEC錠を製造し、2013年10月よりリンパ系フィラリア症が蔓延している国々に向けてDEC錠の提供を開始しました。またフィラリア症薬の集団投薬(MDA)によるLF制圧の達成度を評価し、MDAを終了する判断に用いるための診断キットを無償提供する官民パートナーシップが2016年2月より開始され、エーザイもこの新しいパートナーシップに参画しております。エーザイは、DEC錠と診断キットの供給を通じてグローバルなリンパ系フィラリア症制圧プログラムに貢献しております。
HIV感染症治療薬の開発 塩野義製薬とViiV Healthcare Ltd.(以下、ViiV社)は、共同で新規HIVインテグラーゼ阻害薬ドルテグラビルの研究開発を行ってきました。2012年12月以降、日米欧を含む各国の審査機関に対してViiV社がドルテグラビルの新薬承認申請を行い、現在、Tivicay®(製品名)としてグローバルに販売されております。また、ドルテグラビルを含む3剤配合剤についても、2013年10月以降、日米欧を含む各国の審査機関に対してViiV社が新薬承認申請を行い、現在、Triumeq®(製品名)としてグローバルに販売されております。
結核治療薬の開発 大塚製薬は、過去30年以上にわたり結核の撲滅を目指した治療薬の研究開発を行っています。多剤耐性肺結核を対象とした新規抗結核薬デラマニドは、世界9カ国、約500名を対象とした臨床試験を実施し、2014年に欧州、日本で承認されました。現在は、米国での第Ⅲ相試験、欧州での小児を対象とした第Ⅱ相試験を実施中です。
デング熱治療薬の開発 武田薬品は、デング熱に対するワクチンを開発しています。デング熱ワクチン“DENVax”は、デング熱の原因となる4つのウイルス型すべてを含む4価ワクチンで、現在、第Ⅱ相試験を実施中です。
シャーガス病治療薬の開発 エーザイは、国際的な独立非営利団体であるDNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative)と共にシャーガス病の病原体に対する新薬候補化合物E1224のPhase Ⅱ臨床試験を実施しています。エーザイは、臨床開発に必要なE1224の情報並びに臨床試験に必要な製剤を提供し、DNDiは、シャーガス病の蔓延地域において臨床開発を行っています。
マラリア治療薬の開発 武田薬品は、Medicines for Malaria Venture (MMV)の抗マラリア薬DSM265の開発及びELQ300の製剤化について、MMVと共同研究開発を行っています。
DSM265は現在第I相試験にて良好な安全性プロファイルが示されています。
ELQ300は、低用量でマラリア予防及び治療を可能にする次世代の薬剤として期待されており、現在現臨床試験段階です。
住血吸虫症に対する小児用製剤開発 アステラス製薬は、Merck KGaA、Lygature、Swiss Tropical and Public Health Institute、FarmanguinhosならびにSimcypとともに、住血吸虫症治療薬プラジカンテル錠の小児用製剤開発を進めています。アステラス製薬は、自社の製剤技術を供与して新たな小児用製剤を創製し、Farmanguinhosに技術移転しました。コンソーシアムでは現在、第Ⅱ相臨床試験を実施中です。アステラス製薬は、製剤開発に引き続き臨床開発においてもノウハウや技術を提供しています。
マラリアとNTDsに対する治療薬/ワクチンの共同開発研究 エーザイは、ブラジルのオズワルドクルス財団と、マラリアおよびNTDsに対する治療薬やワクチンの包括的な共同開発研究契約を締結しています。最初のプロジェクトとして、活性型TLR9アンタゴニストである「E6446」およびその類縁化合物を、脳マラリアの治療薬として共同研究開発を行っております。
抗寄生原虫創薬(シャーガス病)に関する国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)との共同研究 アステラス製薬は、産総研と抗寄生原虫創薬(シャーガス病)に関する共同研究を行っています。本共同研究では、まずはゲノム編集技術により、シャーガス病の原因となる寄生原虫クルーズトリパノソーマの生存に必須な遺伝子を短期間で正確に見出せるか検証することを目的としています。アステラス製薬は、主に検証に相応しい遺伝子を選択し、産総研はゲノム編集を担当します。本共同研究での検証完了後には、産総研を中心に更に大きな枠組みの中でシャーガス病の治療薬創出を目指す共同研究体制の構築も計画されています。
熱帯病治療薬開発のための「WIPOリサーチコンソーシアム」に参画 エーザイは、世界知的所有権機関(WIPO)が主催する熱帯病治療薬開発のための国際共同事業「WIPOリサーチコンソーシアム」に加盟し、公開データベース上に7つの化合物の情報を提供しています。このデータベースに登録された知的財産は、熱帯病治療薬開発における利用、そして最終的には後発開発途上国における製品の販売においても、ロイヤルティー・フリーで提供されます。
シャーガス病、リーシュマニア症のワクチンの開発 エーザイは、セービンワクチン研究所、ベイラー医科大学、アエラス社と、シャーガス病に対するワクチン開発のための共同研究を進めています。本研究は、エーザイとセービンワクチン研究所との連携による、シャーガス病及びリーシュマニア症をターゲットとしたワクチン開発に関する共同研究が発展したもので、エーザイが創製したTLR4アゴニストである新規のアジュバント(ワクチンの免疫効果を高める物質)「E6020」を含む新しいワクチン製剤の開発を目指しています。
抗結核薬の開発のためのグローバルパートナーシップに参画 エーザイは、結核に対する革新的な創薬をめざすパートナーシップ(Tuberculosis Drug Accelerator」、以下TBDA)に参画しております。TBDAは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の支援を得て、グローバル製薬企業7社および6つの研究機関によって共同設立されたパートナーシップであり、既存の6カ月間の治療法に対して、1カ月間の服用で結核が完治しうる新しい治療薬の開発をめざしています。
結核とNTDsに対する新薬開発に向けた共同開発研究 エーザイは、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学の共同研究施設である Broad Instituteと、顧みられない熱帯病(NTDs)および結核に対する新薬開発に向けた共同研究を行っています。
開発途上国における感染症制圧に向けたスクリーニング・Hit-to-Leadプログラム(GHITファンドプログラム)
  • エーザイはGHITファンドによるマラリア治療薬、リーシュマニア症、シャーガス病のための候補物探索のためのプログラムに参画しています。
  • 塩野義製薬はGHITファンドによる結核治療薬の候補物探索のためのプログラムに参画し、現在自社ライブラリーから見出した有望化合物をもとにリード化合物を創製する共同研究を進めています。またリーシュマニア症やシャーガス病の候補物探索のためのプログラムにも参画しています。
  • 武田薬品工業はGHITファンドによる結核やマラリア治療薬、リーシュマニア症、シャーガス病、アフリカ睡眠病の候補物探索のためのプログラムに参画しています。
  • 第一三共はGHITファンドによる結核、マラリアおよびNTDs(リーシュマニア症・シャーガス病)の候補物探索のためのスクリーニングプログラムに自社ライブラリー(低分子・天然物)を用いて参画しています。更に、それらから見出した有望化合物をもとに結核とマラリアにおいてはリード化合物を創製する共同研究を進めています。
  • 大日本住友製薬は、GHITファンドによる結核治療薬、マラリア治療薬のための候補物探索のためのプログラムに参画しています。
  • 協和発酵キリン株式会社は、GHIT Fundの設立趣旨ならびにその活動内容に賛同したことからAffiliate Partnerとして参画し、その活動をサポートしていきます。
  • 田辺三菱製薬はGHITファンドによる結核やマラリア治療薬のための候補物探索のためのプログラムに参画しています。
顧みられない熱帯病に対するロンドン宣言への参画 エーザイは、世界の大手製薬企業12社とともに、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、世界保健機関(WHO)、米英政府、世界銀行、およびNTDs蔓延国政府と国際官民パートナーシップを構築し、2020年までにNTDs10疾患の制圧に向けて共闘していくという共同声明「ロンドン宣言」を発表しました。
「顧みられない熱帯病」創薬研究データベースの開発 アステラス製薬は、東京工業大学と東京大学とともに創薬研究向け統合型データベース“iNTRODB”(Integrated Neglected TROpical disease DataBase)を開発しました。iNTRODBは、リーシュマニア症、シャーガス病、アフリカ睡眠病を引き起こす3種類のトリパノソーマ原虫を対象として、それぞれのゲノム配列にコードされた全てのタンパク質を網羅し、それらの創薬ターゲット候補としての良さを判定するための各種情報(タンパク質立体構造、関連化合物、阻害実験結果)を統合的に提示するシステムです。iNTRODBは、世界中の研究者が自由にアクセスできるデータベースであり、世界のNTDs研究の加速が期待されます。
新規結核ワクチンの研究開発 大日本住友製薬は、日本ビーシージー製造株式会社とともに、株式会社クリエイトワクチンを設立しました。クリエイトワクチンは、独立行政法人医薬基盤研究所とNPO法人Aerasとともに、GHITファンドより助成を受け、ヒトパラインフルエンザ2型ウイルスベクター技術を用いた新規結核ワクチンについての共同開発を実施中です。本ワクチンは、結核菌の肺への侵入を防ぐために粘膜を標的とした粘膜免疫誘導型ワクチンであり、既存のワクチンにおいて感染予防効果の乏しい成人の肺結核に対する効果が期待されています。
マイセトーマ治療薬の開発 エーザイは独立非営利財団Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDi、本部:スイス・ジュネーブ)と、エーザイが創製した抗真菌剤E1224(ホスラブコナゾール)について、世界で最も顧みられない病気の一つであり、2016年に新たなNTDとして認められたマイセトーマ(菌腫)の内、特にアンメットメディカルニーズの高い真菌性菌腫(eumycetoma)に対する新規治療薬として共同開発を行う契約を締結しました。本剤を用いた臨床試験がDNDiおよびスーダンのハルツーム大学菌腫研究センター(MRC)により開始される予定です。
「内臓リーシュマニア症の治療薬開発に向けた取り組み」 武田薬品はDrugs for Neglected Diseases initiative (DNDi)と協働して、内臓リーシュマニア症(visceral leishmaniasis)の革新的な治療薬開発に向け、アミノピラゾール系化合物群の中から最適な化合物を特定することを目的とした「誘導体最適化プログラム」(Lead Optimization)に取り組んでいます。
マラリア治療薬の開発 エーザイは、セント・ジュード小児研究病院、Medicines for Malaria Venture(MMV)と共同研究契約を締結し、マラリア蔓延地域での治療に適した、即効性と安全性に優れ、1度の服薬で持続的な治癒と再発防止も併せて期待できる新規薬剤「SJ-733」の臨床試験(Phase 1)を実施しております。
マラリア治療薬の開発 エーザイは, リバプール熱帯医学校とリバプール大学との、新規抗マラリア薬の候補化合物であるE209に関する共同研究に参加いたしました。E209は、耐性が問題となっているアルテミシニン系の抗マラリア薬で効果がみられない患者様に対しても有効性を示すことが期待されています。
マラリア治療薬の開発 エーザイは、マラリア原虫に対する新規薬剤のターゲット分子GWT-1を見出し、それに対する阻害活性を持つ化合物を探索する初期研究を自社で行っております。この研究から見出された化合物は、現在、非営利団体Medicines for Malaria Venture(MMV)との連携により更に詳しい評価を行っています。
フィラリア症治療薬の開発 エーザイは、Liverpool School of Tropical MedicineおよびUniversity of Liverpoolと、主なフィラリア症であるリンパ系フィラリア症および河川盲目症に有効な新規フィラリア駆虫薬創出に向けた共同研究を行っています。フィラリア症を引き起こすフィラリア成虫の体内に存在するボルバキア菌は、フィラリア成虫の成長、増殖や生存に必須であり、ボルバキア菌を除菌することで成虫を効果的に駆虫する治療薬を創出することを目指しています。

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