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第3回 患者団体アドバイザリーボード」を開催

「製薬協 産業ビジョン2025」などについて意見を交換

2016年6月8日、製薬協にて、患者団体連携推進委員会の主催による「第3回 患者団体アドバイザリーボード」が開催されました。当日は、患者団体アドバイザリーボードメンバー5名(表)が参加し、「製薬協 産業ビジョン2025」および「費用対効果評価の試行的導入」について、率直な意見交換が行われました。

2016/06/08


会場風景


表 アドバイザリーボードメンバー

 「製薬協 産業ビジョン2025 〜世界に届ける創薬イノベーション〜」
 患者団体連携推進委員会の喜島智香子委員長による挨拶の後、製薬協 産業政策委員会 ビジョン推進プロジェクト 百瀬和浩リーダーから、2016年1月に製薬協が策定した「製薬協 産業ビジョン2025」について、以下の通り説明がありました。

背景と目的

 研究開発型製薬企業の団体である製薬協が産業ビジョンを策定した背景には、以下の点が挙げられます。
  1. 製薬産業の重要性、すなわち革新的な医薬品の継続的な研究開発と安定供給を通して世界の人々の健康と福祉の向上に貢献することを、さまざまなステークホルダーに理解いただくこと。
  2. 製薬産業をめぐる環境変化や直面する課題、たとえば社会保障給付費の伸びをいかに適正にするのか、新薬開発の難度が高まり、国際競争が激しくなっている中、私たち研究開発型製薬企業はどういった方向に進んでいけばよいのか等について製薬協の会員会社と共有すること。
  3. これまで完治に至らなかった病気に対して非常に高い有効性を示す新薬の創出は、患者さんの病状のみならず生活の質や寿命までも変えるイノベーションであり、このイノベーションの価値・重要性をすべてのステークホルダーのみなさんに再認識いただきたい。

世界に届ける創薬イノベーション

 「製薬協 産業ビジョン2025」のメインフレーズは、「世界に届ける創薬イノベーション」です(図1)。私たちは、なによりも先進創薬を追求し、創薬イノベーションを実現することによって、次世代医療を牽引していきます(ビジョン1)。そして、世界中の患者さん・ご家族に革新的な新薬を届けます(ビジョン2)。新薬創製を通じて、日本の製薬産業は高付加価値産業として日本経済をリードする存在となることで、そのプレゼンスを高めていきます(ビジョン3)。さらに、これから日本が目指していく「健康先進国」の実現を支援していきます(ビジョン4)。また、すべての活動の前提として、志を高く持ち、ステークホルダーのみなさんに信頼されるための努力を惜しまず、その期待に応えられるよう取り組んでいきます(ビジョン5)。その中で今回はビジョン1とビジョン4について詳しく説明します。


図1 「製薬協 産業ビジョン2025」

先進創薬で次世代医療を牽引する 〜P4+1医療への貢献〜(ビジョン1)

 科学技術の進歩によって、遺伝情報や疫学のデータに基づき、すでに発症している病気の診断や治療だけでなく、発症前の診断や薬の効果と安全性の予測など、予防医療、先制医療の重要性がこれまで以上に高まると考えられます。このような概念はアメリカにおいて2010年頃からP4医療として提唱されています。それは、遺伝要因・環境要因による個別化=Personalized、遺伝子情報・バイオマーカーによる精密な予測=Predictive、精密な予測に基づく予防的介入=Preventive、患者個人による情報の理解と医療への参加=Participatory、この4つの頭文字のPを取ってP4医療です。私たちはこのP4に既存技術の高度化・融合等による医療の質や効率の向上・進歩=Progressiveをプラスし、P4+1(ピーフォープラスワン)医療として次世代医療の概念を定め、この実現に向けて貢献することを、ビジョン1に掲げました。
  その実現に向けた戦略のポイントは4つあります。
  1. 医療データベースの構築と創薬応用に向けて政府、アカデミア、医療機関、そしてデータを提供くださる患者さんなどへの働きかけ。
  2. バイオ医薬品や再生医療などの個別化医療薬創出に向けた先進創薬への取り組み。
  3. 業界内および関連する多業種との連携による技術やノウハウを融合させ、より多くの新薬を創り出せるように創薬生産性を向上させること。
  4. 制度面からの取り組みとして、たとえばアンメット・メディカル・ニーズが高い疾患治療薬の承認制度の充実や、研究開発を促進する税制に関する提言や働きかけを行うこと。

次世代医療(P4+1医療)の実現のために

 しかしながら、その実現には課題もあります。疾患リスクを予測する精度の技術的な課題や先制医療を行うということが社会にどのように受け入れられるのか、また、予防医療の選択、遺伝子情報の提供や治験への参加において、患者さんが自ら考え判断する場面がこれまで以上に増えてくるということが予想されます。しかしながら、その段階で医療者と患者さんが治療に関して十分に意見を交わすレベルには、まだ達していないのではないかとも考えます。
  そのような状況のもとで私たちが行うべきことは、次世代医療に真に有益となる医療情報のデータベース化の実現と、P4+1医療を推進するための議論と意見形成および情報発信を患者団体のみなさんにも協力いただきながら進めることです。
  さらに、患者参加型医療の実現に向けた育薬の推進において、製薬協は患者団体のみなさんや日本医療研究開発機構(AMED)等と連携し、患者ニーズを効率的に創薬研究開発に反映する仕組みを少しでも早く構築したいと考えています。これらの活動を通じて患者さんが主体的に医療へ参加できるように支援することが、私たちの責務ではないかと考えます。

健康先進国の実現を支援する 〜心おきなく健康で長生きできる社会に〜(ビジョン4)

 ビジョン4では、患者参加型医療の推進に寄与し、より質の高い人生を送ることができるようになるとともに、社会保障制度の持続可能性を高めることにも貢献することを意図し、この想いを「心おきなく」という言葉に込めました。
  患者参加型の医療を推進するには、国民のヘルスリテラシー[1]の向上が課題です。また、健康長寿社会を支える医薬品の給付と償還の仕組みに対し、製薬業界としても政策提言する機能を強化していくことが必要です。
  患者さん自ら医療に参加する社会とは、どのような社会でしょうか。個別化医療、予防医療、先制医療が普及し、発症前、ひいては日頃から健康管理への興味・感心が高まる社会ではないでしょうか。そうなれば医療を受ける側の意識として、医療に対してより主体的にかかわることを目指すようになると考えます。たとえば、治療内容の決定に自らも参画する、あるいは新薬開発プロセスに患者さんの立場から参加する、そのようなかかわり方です。そのためには、判断や行動の基礎となる情報収集が重要となります。医療者には病気や治療方法に関する情報をよりわかりやすく説明することが、製薬企業には医薬品を適正に使用するための有効性・安全性に関するより詳しい情報を提供することが求められると考えます。
  昨今、医療情報の収集はICTの進歩で比較的容易になってきましたが、それらを選択するための判断・基準はないに等しい状況であることから、患者さんが意思決定に活かすことはたいへん難しいと思います。その中で公的機関が積極的に発信源の担い手となることが極めて重要になってきます。たとえば、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から、新薬審査情報、副作用情報、添付文書情報などさまざまな医療情報が、国立保健医療科学院等からは治験・臨床研究情報が発信されています。またAMEDでは、未診断・希少疾患患者の診断を確定し、病態解明を進めるための診療体制を構築しようとしています。医療情報がわかりやすい形で発信されていることは、ヘルスリテラシー推進の観点からも大変重要です。医療情報の提供体制の充実は、医療を受ける側が自ら学び、意思疎通を図ることができるようになるための土壌作りと考えます。したがって、製薬協はPMDAやAMEDをはじめとする公的機関に医療情報をより多く発信していただくよう働きかけていきます。また、企業の開発戦略や知的財産権等にも配慮したうえで、難病・希少疾患および小児領域に関する治験情報の提供に自ら努め、国民・患者さんのニーズを満たすための情報提供活動にも取り組んでいきます。
 [1] 
健康面での意思決定に必要な情報・サービスを調べ、理解し、評価し、活用する能力

アドバイザリーボードメンバーのコメントと回答

 ・ 製薬協の目指すところを明確に示してくれたことは、患者、社会にとってありがたい。患者は納得したうえで医療を選択したいので、情報はとても重要と考える。製薬協と患者団体が協力しながらともに進んでいきたい。
  ・ ビジョンの資料は患者会でも共有し、患者団体のビジョン形成に使いたい。現状では法整備など準備不足な点もあると思われるので、テーマごとに患者団体と製薬協とがコラボレーションできる仕組みを作れば、より理解が進むのではないか。
  ・ 希少疾患や難病の情報提供など盛り込んであり、頼もしく思う。疾患をかかえて生まれた子どもたちが成長し、自分の病気を自ら学んでいく段階にきている。情報はとても重要。加えて、最近の課題でもある災害時における対応にも触れていただけると良いと思う。
  ・ 遺伝性の病気の場合、先制医療として早期に遺伝子検査をして確定診断を受け、治療に結び付けたい。社会の中で遺伝子検査のハードルは依然として高い。社会に対し、患者が自ら行動を起こすムーブメント作りをバックアップしてほしい。
  ・ 医療者に対してこのビジョンが伝えていきたいもの、働きかけるものはなにか。

製薬協
「くすりは医療における1つのツールであり、その貢献は、いかにうまく患者さんに適切な薬を副作用少なく有効性高く使っていただくかにかかる。そのための情報提供は私たちの使命である。治験や臨床研究など、創薬の中では医療関係者との協働も重要。個別化医療を進めていくことになると、これまで以上に医薬品に関する情報を医療者側にも質高く提供していかなくてはならない」
  ・ 創薬に関して日本は海外に比べディスカッションの場が少ない。製薬協と患者団体がAMEDを介して、臨床試験などについてディスカッションできないか。希少疾患など、届かなかった患者さんの声を製薬協が拾ってくすり作りに反映する仕組みも考えてほしい。

製薬協
「患者団体連携推進委員会においてもタスクフォースを作り、患者さんの声はなにが多いのか、『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)』のもと、いかに課題を解決していくか、そのためにどのようなプランがありえるかの検討を開始した。産業ビジョンをキーワードに、他の委員会ともコラボレーションし、課題に取り組んでいきたい」

「費用対効果評価の試行的導入について」
製薬協 産業政策委員会 産業振興部会医療技術評価グループの三浦礼恒リーダーより本年4月から試行的に導入された「費用対効果評価」とそれに対する製薬協の考え方について説明がありました。

試行的導入の概要

 医薬品および医療機器における費用対効果評価については、費用の取り扱い、効果の取り扱いなど、考え方や用いる指標についての議論が十分なされたとはいえないものの、2015年12月の中央社会保険医療協議会(中医協)において、平成28年度診療報酬改定時における試行的導入のあり方についてのとりまとめが行われ、そこで示された考え方を基本として2016年4月より試行的に導入されています。そのメインとなっているのが「試行的導入における再算定の流れ」、「新規保険収載時に求める取組」です。すでに薬価収載されている医薬品の一部については、企業が費用対効果評価の資料を提出することによって、次回(2年後)の薬価改定の際に再算定を行うということがルールとして入りました。費用対効果に関する総合的評価については中医協での了承を得られた後に、評価結果に基づく価格調整を実施することになります。その一方で、これから収載される新規の医薬品については、選定基準に合致したものは評価結果の資料を提出することになりますが、薬価の調整には用いないこととされています。
  費用対効果分析の手順としては、まず、評価対象の医療技術、比較対照の医療技術について、それぞれ「効果」と「費用」を計算します。そのうえで、新しい技術を導入することによって効果がどの程度増加するのか、費用がどの程度増加するのかを見るために「増分費用効果比」という数値を算出し、対象となる新薬や医療機器が比較対照に比べて費用対効果が良いか、悪いかを評価します。

対象品目の選定基準の要点

 対象品目となる薬剤の選定基準は、すでに保険収載されている品目のうち「指定難病、血友病」および「HIV感染症の治療薬および未承認薬等検討会議を踏まえた開発要請等」に該当する品目は除外されます。そのうえで、平成24年度から27年度に薬価収載された品目で、類似薬効比較方式によって算定された品目のうち「補正加算の加算率が最高であったもの」、「10%以上の補正加算が認められたものの中で、ピーク時予測売上高が最高であったもの」をそれぞれ選定します。また、原価計算方式によって算定された品目では「営業利益率の加算率が最高であったもの」、「10%以上の加算が認められたものの中で、ピーク時予測売上高が最高であったもの」をそれぞれ選定します。また、これら品目の薬理作用類似薬も対象となります。2016年4月27日の中医協において、今回の試行的導入においてデータ提出を求める対象となる品目が選定され、C型肝炎治療薬5品目(対象1品目と類似品4品目)および抗がん薬2品目が対象品目とされました。

ヨーロッパにおける費用対効果評価の活用法

 ヨーロッパにおいても費用対効果評価を活用している国はあります。イギリスでは、費用対効果は主に財政インパクトの強い医療技術(治療・薬)を対象に償還の可否に利用され、1999年から英国国立医療技術評価機構(NICE)と呼ばれる評価機関が国民医療サービスに推奨を行うか否かの評価決定をしています。
  費用対効果評価が諸外国で導入されたことにより、患者さんにとって医薬品アクセスが問題化した事例もあると聞いています。具体的には、革新的な新薬が償還されないことで、患者さんへのアクセスの制限が生じたケースがあるということです。また、医療保険制度やガイダンス等は各国間で違いがありますが、評価結果についても国ごとの評価機関が異なった結果を出すこともあり、この点についてヨーロッパでは解決に向けた方策が検討されています。
  一方、日本の現行制度は、薬事承認から保険償還までにかかる時間が最も短く、承認後のアクセスは確保されていることが海外でも高い評価を得ています。

費用対効果評価制度に対する製薬協の考え方

 日本では費用対効果分析を実施する際に必須となる医療費や疫学に関するデータベースが整備されておらず、客観的・科学的な評価に使用できる環境にありません。新たな制度の拙速な導入は、患者さんが必要とする医薬品を的確に医療の場に届けることができないという結果を生み、革新的新薬の臨床現場における貢献を著しく阻害することが予想されます。製薬協は、これらの課題が存在したまま、かつ、費用対効果を勘案した医療技術等の評価そのものの共通認識が当事者において醸成されないまま、性急に導入することには反対する立場をとってきました。
  費用対効果評価の試行的導入において、製薬協の考え方は次の2つに示すことができます(図2)。1つは、現行の薬価基準制度において評価されている医薬品の価値が、費用対効果評価の導入によって損なわれないこと、もう1つは、次の点が維持・確保されることです。まず、国民皆保険・保険償還制度および薬価基準制度といった現行制度の基本的考え方・骨格が維持されること、次に3大前提、すなわちイノベーションの阻害、患者のアクセス制限、ドラッグ・ラグの助長が生じないこと、そして本議論に対し当事者のひとりである製薬業界が意見・要望を反映しえる機会を十分確保することです。


図2 試行的導入に係る議論における原則的な考え方

 そのうえで、試行的導入の意義については、現行の薬価基準制度の中ですでに医療技術評価の概念が反映されていることから、最初から本格的な導入を前提とするのではなく、現行薬価基準制度における医療技術評価のあり方を総合的に検討する中で、費用対効果評価を実施する目的と意義を検証すべきというスタンスをとっています。さらに、国内のデータ等の整備状況が不十分であること、また企業側、当局側ともに再分析や総合評価等の基盤整備が不十分な段階にあることから、試行的導入における選定対象の範囲は最小限にとどめるべきであり、客観性、公平性を確保したうえで関係者の納得が得られるものとすべきと考えます。

アドバイザリーボードメンバーのコメントと回答

 ・ 費用対効果の客観性と必要性の中で、子どもの医療をどう守っていくのでしょうか。

製薬協
「とても重要な部分と認識している。子どもという切り口は、総合的評価を検討する際の検討項目の1つとして入ってくる可能性は十分にあるだろう。また、疾患の重篤度についても考慮する必要があるのではないか。どの観点から総合的評価を実施するかは、これから先、課題の1つとして検討されることになろう」

  ・ 日本が保険償還までの期間が短いのは維持してほしい。頑張ってほしい。
  ・ 一見、客観性があるように見えるが、係数、閾値をどうするかで大きく変動する。客観的に管理できるシステムがないと経済性を入れるのは危険ではないでしょうか。

製薬協
「薬価は緻密なルールに基づいて算出されるが、増分費用効果比は係数が動くことによって数値も上下するため、算出された数値は費用対効果評価が良いか悪いか、程度の評価を行うことにしか使えないという点で多くの人々の考えは一致している。今後の議論においては、係数の扱い方によって結果が大きく異なるということを前提としたうえで、出された数値をどのように解釈すべきかを検討する必要があると思う」

  ・ 日本で使われている膵臓がんの薬がイギリスでは保険償還されなかった。イギリスの患者団体の意見は聞かれず、憤っている。真似してはいけない制度と考える。守っていくべき3大前提に賛同するとともに、製薬協と同様に、患者団体も議論への参画を要求していかなくてはならないと強く思う。

最後に

 患者団体連携推進委員会の喜島委員長が今秋、大阪と東京で開催予定の患者団体セミナーの演題候補を紹介し、「アドバイザーからの意見を参考にセミナーの構成を検討していく」と述べました。
  結びとして、製薬協の田中徳雄常務理事が「患者団体連携推進委員会は患者団体のお声で成り立っている。引き続き委員会活動へのご意見をいただきたい」と締めくくり、「第3回 患者団体アドバイザリーボード」は閉会しました。


(文:患者団体連携推進委員会 濱田 一子)

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