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「第25回政策セミナー」を開催

2013年9月13日(金)、経団連会館(経団連ホール)において、「医薬品産業の今後の展望」をテーマとして「第25回製薬協政策セミナー」が開催されました。政府が進める「日本再興戦略」ならびに「健康・医療戦略」、さらに「医薬品産業ビジョン2013」に示された中長期ビジョンを踏まえて、「創薬立国 日本」の実現へ向けての課題が幅広い視点から討議されました。患者団体、政治家、行政、医療関係者、メディア関係者、会員各社などから、サテライト会場も満員となるほど多数の参加者があり、熱心に議論に耳を傾けました。

2013/11/08

 伍藤理事長の開会挨拶の後、厚生労働省医政局経済課長の城克文氏より「適者生存の環境下で創薬立国を目指すために」と題して基調講演がありました。続いて、京都大学iPS細胞研究所顧問の阿曽沼慎司氏、独立行政法人 医薬基盤研究所理事・創薬支援戦略室室長の榑林(くればやし)陽一氏、製薬協の手代木功会長がそれぞれの立場から創薬をめぐる現状や課題に関してパネリスト講演を行い、その後、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(経営管理研究科)教授の中村洋氏をコーディネーターとし、登壇者5名によるパネル・ディスカッションが行われました。最後に、藤井広報委員長が閉会挨拶を行いました。
 以下、当日の講演の概要を紹介します。

会場風景
会場風景

基調講演
適者生存の環境下で創薬立国を目指すために
厚生労働省 医政局 経済課長 城 克文 氏


■第3の矢は改革と成長戦略の一体化

 ご承知の通り、現在、アベノミクスの「3本の矢」の政策が推進されています。第1の矢として、大胆な金融政策を進め、企業・家計に定着したデフレマインドを払拭し、2%の物価安定目標を2年程度の期間を念頭にできるだけ早く実現、マネタリーベースを2年間で2倍にするなどの目標を立てました。第2の矢は、機動的な財政政策として、10兆円以上の景気対策を打ち出しました。これにより、デフレ脱却をスムーズに実現し、有効需要の創出を狙っています。また、持続的成長に貢献する分野に重点を置き、第3の矢の成長戦略に橋渡しするものです。
  そして、第3の矢である民間投資を喚起する成長戦略として、「経済財政運営と改革の基本方針」、「日本再興戦略」、「規制改革実施計画」を6月に閣議決定し、政府は前例にないスピードでこれらの政策を実行していく所存です。
  「経済財政運営と改革の基本方針」では、「再生の10年」に向けた経済財政運営として、2%の物価上昇とそれを上回る賃金上昇を達成し、消費の拡大を実現、所得と支出、生産の好循環を生み出します。また、名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%を目指し、2010年代後半にはより高い成長を実現。経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の一段の進展に寄与する好循環を目指します。「日本再興戦略」は民間活力を引き出し、持続的成長を実現するための成長戦略で、日本産業再興プラン、戦略市場創造プラン、国際展開戦略の3本立てとなっています。
  「経済財政運営と改革の基本方針」は、「骨太の改革」の2013年バージョンで、経済の再生を目指しつつ財政再建目標を再確認するものです。すなわち、第3の矢は改革と成長戦略が一体化した政策となっています。


■「 医薬品産業ビジョン2013」を策定

 本日のセミナーのキーワードである「創薬」は、この日本再興戦略の中の戦略市場創造プランの1つである「国民の『健康寿命』の延伸」に含まれます。2030年の在るべき姿として、効果的な予防サービスや健康管理の充実、医薬品や医療機器など医療関連産業の活性化による世界最先端の医療、病気やけがをしても良質な医療・介護により早く復帰できる、そのような社会を目指しています。その実現に向けて、以下のような7つの取り組みを設定しています。
1) 医療分野の研究開発の司令塔機能(「日本版NIH」注1の創設)
2) 先進医療の大幅拡大
3) 医薬品・医療機器開発、再生医療研究を加速させる規制・制度改革
4) 革新的な研究開発の推進
5) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の強化
6) 難病患者等の全国規模のデータベースの構築
7) 医療の国際展開
  また同日に、関係閣僚申し合わせとして「健康・医療戦略」が策定されました。健康長寿社会の実現、経済成長への寄与、世界への貢献を基本理念に新規参入や投資を促進し、新技術の創出につなげ、市場拡大の期待感を高めて、さらに新規参入・投資に結びつける循環を形成したいと願っています(図1)。

図1 健康・医療戦略の概要
図1 健康・医療戦略の概要



■健康長寿産業は日本再興戦略の重要な戦略分野

 これらを受けて厚生労働省では「医薬品産業ビジョン2013」を策定しました。この背景には、わが国における医薬品産業の重要性があります。資源の乏しい日本にとって、知恵と知識、もの作り力を活かした産業の活性化は不可欠であり、日本再興戦略でも健康長寿産業は戦略分野の1つです。健康長寿社会の実現は国家のセーフティネットとしての役割もあります。
  もう1つの背景として、創薬環境の変化と、それに伴う国家レベルでの対応の必要性が高まってきたことが挙げられます。海外市場を主戦場とした競争が熾烈化しており、各国とも国策として医薬品開発や医薬品産業を支援する動きが活発化しています。
  医薬品市場は日本、世界ともに順調に拡大していますが、特に日本を除くアジア、中南米など新興国の市場規模が大きく拡大しています。日本は世界第3位、アジアでNo.1の新薬創出国ですが、外資系企業の日本における研究開発拠点が閉鎖されるなど、研究開発基盤を含む創薬環境整備は遅れを取っているとの指摘もあります。また、外国企業からの導入品が半数以上もあるなど、国内製薬企業の創薬力に対する厳しい見方もあります。


■新薬メーカーへの期待と将来像

新薬メーカーには以下のような4つの役割が期待されています(図2)。
1) 革新的な医薬品の開発…保健衛生の向上への貢献や、アンメット・メディカル・ニーズ(必要なのにまだ有効な治療法がない医療ニーズ)、個別化医療への対応など
2) 医薬品の安定供給…医薬品は生命関連商品、公的医療保険制度の円滑な運営など
3) 経済成長への貢献…高付加価値産業、高い担税力、知識集約型産業
4) 日本発のイノベーションの発信…高度な研究開発活動がもたらす科学技術の発展と波及効果、国策としての支援の動きが加速、研究開発拠点・製造拠点の流出懸念
  新薬メーカーは、こうした役割を担いながら、将来的には以下のような4つの患者ニーズへの対応が求められています。
1) 創薬力の強化…自社開発だけにこだわらず、ネットワークとしての研究開発の推進
2) 研究開発の対象…アンメット・メディカル・ニーズの高い領域に拡大、細分化する中で、対象領域を絞って得意分野に注力
3) 研究開発の手法…革新的な新薬の開発だけでなく、既存の医薬品のライフサイクルマネジメントも念頭に置く
4) 研究開発の観点…予防医療や先制医療に対応した研究開発
  もう1つの将来像としては、海外市場への展開が望まれます。海外市場では画期的な新薬だけが求められているわけではありません。場合によっては自社で販売網を持ち、後発医薬品やOTC医薬品(薬局・ドラッグストアなどで販売される一般用医薬品)の販売など分野の拡大も考えられます。また、現在、日本で使われている医薬品が、将来的に新興国で必要になる可能性は高く、日本市場の先行性を活かした新興国への進出も期待されます。

図2 新薬メーカーの4つの役割
図2 新薬メーカーの4つの役割


■人材への投資が重要

 こうした目標を実現するために、新薬メーカーは人材への投資と、いかに人を集めるかが重要になってきます。長期間を要する研究開発の中で、さまざまなチャネルやネットワークを幅広く持った人材を適材適所に配置し、個々の能力を発揮する多様性が求められます。また、新薬メーカーだけでなく、基礎的医薬品メーカー、後発医薬品メーカー、一般用医薬品メーカー、医薬品卸売業者、医薬品小売業者も、現状の課題を把握して、それぞれの将来像を設定してほしいと思っています。
  基本的な医薬品産業政策の考え方としては、基礎研究から、応用研究、非臨床研究、臨床研究・治験、審査・薬事承認、そして保険適用に至るまで、切れ目のない支援を検討、実行していきます。
  2014年度医療分野の研究開発関連予算は、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の予算を集めて一元化し、その対象経費は1,382億円に達します。インハウスの研究機関経費は878億円です。これらの予算は、主に疾病領域ごとの取り組み、臨床研究・治験への取り組み、世界最先端の医療の実現に向けた取り組み、医薬品・医療機器開発の取り組みなどに振り分けられます。
  医薬品分野の中で「医薬品創出の基盤強化」がテーマとなっており、創薬支援ネットワークの構築に予算が付いています。また、日本の大学などの基礎研究の成果を医薬品などの実用化につなげるために「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」も予算化されました。


■研究開発を支援する税制改正

 さて、研究開発税制では、本体部分において試験研究費の8~10%(中小企業では一律12%)が控除として認められています。控除額は法人税額の20%を上限としていますが、2014年度末までは時限措置として30%に引き上げられています。この本体部分(総額型)に加えて2013年度末までの時限措置として「高水準型」と「増加型」が、さらに控除額の上乗せ部分として認められています。
  厚生労働省としては、この上乗せ措置の恒久化と、増加型における控除率を2016年度末まで5%から30%へ引き上げることなどを要望しています。
  このように医薬品・医療機器産業は日本再生の重要な要素として位置づけられ、業界にとって追い風ではありますが、政府として医薬品関連の企業であれば護送船団方式で何でも支援するわけではありません。担税力があり、付加価値の高い分野など、可能性の高い芽に対して政府が「投資」するという意味です。さまざまに努力する企業は投資対象として魅力的ですが、守りに入った組織には投資意欲は湧かないでしょう。
  やはり新薬メーカーは、攻める組織であってほしいと思います。これからはEUや北米だけでなく、新興国への対策も考えた戦略が必要です。日本の新薬メーカーは従来、主に自社開発に力を入れており、かなり効率的だったと思いますが、今後の創薬を考えた場合、バイオベンチャーとの組み合わせなども考えるべきでしょう。前述した税制改正は自社開発型企業へのサポートですが、今後はバイオベンチャーへの企業型エンジェル税制などの支援もあり得ると思います。
  財政健全化やさまざまな制約はありますが、成長には、高いハードルをイノベーションで超える努力が不可欠です。製薬産業には、新たな成長分野として、そこにチャレンジしていくことが期待されています。日本の医療制度の枠組みの中で創薬立国を目指す道を皆様と一緒に考えていきたいと思っています。


注1 日本版NIH:米国の国立衛生研究所(NIH)は、医学研究の拠点
機関。医学・生命科学の基礎研究から臨床試験までカバーし、
巨額な予算の配分を行う。このNIHをモデルに日本でも司令塔
となる機関を作る構想が推進されている。

 

パネリスト講演1
研究開発型医薬品産業への期待
京都大学 iPS 細胞研究所 顧問  阿曽沼 慎司 氏


■基礎研究は強いが臨床研究に課題

 世界市場における日本企業のポジションを見ると、国内企業大手4社の売上高の合計は世界第2位の規模になります。ドイツ企業は大手2社を足しても世界第8位の規模にしかなりません。つまり、日本企業は米国、英国、スイスの次に位置し、フランスやドイツを凌駕しています。日本企業は国民皆保険の市場をバックにした強さを持っており、決して負けていないということをわかってほしいと思います。
  権威ある海外雑誌に掲載される基礎研究の論文数でも日本は米国、ドイツ、英国に次いで世界4位で、英国とほぼ肩を並べ、フランスよりも多くなっています。日本のアカデミアの基礎研究力は捨てたものではありません。ところが、臨床研究論文となると中国よりも少ない25位に甘んじています(図3)。
  これには日本の医学教育の問題があるのでしょう。臨床研究で論文を書いても教授選考であまり評価されないのか、あるいは臨床研究自体、日本の大学はうまく適応できていないかもしれません。臨床研究を強化し、基礎から臨床にどうつなぐのかはアカデミアの課題であり、政府も企業も連携してこれを克服しなければなりません。それができなければ、日本発のシーズであっても臨床試験・開発を米国など海外で行って日本に輸入するケースがもっと増えるでしょう。

図3 基礎研究に強く、臨床研究に弱い日本(2008~2011年)(出典:政策研ニュースNo35 p49 2012)
図3 基礎研究に強く、臨床研究に弱い日本 (2008~2011年)
(出典:政策研ニュースNo35 p49 2012)


■iPS細胞は創薬への活用が本命

 日本では企業治験が圧倒的に多く、医師主導治験は少ない。米国ではNIHが資金を出し、医師主導で臨床開発が進んでいます。そこで、日本版NIH構想が出てきました。企業はリスクをすべては負えないので、大学病院の医師が臨床研究にもっと力を入れるべきです。そのためには公的なファンディングなど研究・治験を行いやすい環境を作ることが大切です。企業は大学病院とどう連携するかがカギでしょう。また、医学部だけでなく、薬学部はもちろん、農学部、工学部、理学部など大学のリソースをもっと活用すべきです。
  さて、iPS細胞について触れておきます。現在、さまざまな組織の細胞に分化させたiPS細胞を人体に移植する再生医療に注目が集まっています。しかし、再生医療を実用化するには、注意深く安全性を確保していかなければなりません。実は、iPS細胞の活用の本命は創薬だと考えています。せっかく京都大学の山中伸弥教授が発見したのに、創薬への応用では日本は世界に遅れを取っています。
  患者から採取した細胞を初期化し、病態のメカニズムを解明し、薬剤候補物質を探索したり、研究中の薬剤候補物質の有効性を確認したり、さらには毒性試験に使うことも有望です。個人ごとに適切な薬を処方する個別化医療にも利用されていくでしょう。
  もちろんわれわれも再生医療の研究を行っています。パーキンソン病や血液疾患の領域が最も進んでいます。血小板をiPS細胞から作り、血液製剤として海外にも販売するスキームを検討しています。壁はあるかもしれませんが何とか成果を出せるように検討しています。日本のメーカーにも飛躍を期待しています。



パネリスト講演2
創薬支援ネットワーク  オールジャパンでのアカデミア創薬支援に向けて
独立行政法人 医薬基盤研究所 理事  創薬支援戦略室 室長 榑林 陽一 氏


■創薬支援ネットワークはインキュベーター

 医療ニーズの急激な変化や新薬開発の国際競争激化など日本の医薬品業界は大嵐の中にあります。特にアカデミア発の創薬の停滞による創薬力の伸び悩みが問題となっています。
  最近のレポートによれば創薬の勝ち組である米国では、FDA(食品医薬品局)で1998年から2007年の間に承認された252個の新薬のうち、117個が優先審査の対象となる革新的医薬品で、そのうちアカデミア発の創薬が72個と6割以上を占めています。これに対して日本の新薬23個のうちアカデミア発はたった4個と2割以下です。これを米国並みの水準に持っていくことが最重要課題です。
  なぜ、米国ではうまくいっているのか。それは大学などで生み出される基礎研究の成果を新薬創出につなげるインキュベーターともいうべきバイオベンチャーがよく発達しており、その優れた目利き力で死の谷と呼ばれるプロセスを乗り越え、治験・申請を行う大手製薬メーカーに橋渡ししているからです。また、NIHも実用化支援に力を発揮しています。
  ところが、日本にはこのインキュベーターが存在しません。そのため、日本再興戦略の中で、オールジャパンの力を結集し、死の谷を克服するために「創薬支援ネットワーク」が日本版NIHの創設に先行して設置されたのです(図4)。
  今、アカデミアに足りないものは何か。プロでも失敗するのが当たり前の応用研究のステージでは、研究費だけを助成する従来のスキームでは不十分です。応用研究の成功に欠かせないものは、実用化を目指した研究戦略や1,000項目以上の失敗要因があるといわれるリスクの回避能力、創薬に必要な特殊技術や設備、そしてリソースをまとめ上げる卓越した進行管理です。

図4 創薬支援ネットワーク
図4 創薬支援ネットワーク

■創薬シーズの評価事業が100件を突破

 創薬支援ネットワークは、成功に必要なこうした戦略、技術、経費、進行管理などをワンストップで総合支援し、足りない技術は民間研究開発機関などで調達し、医薬品シーズあるいは医薬品の創出を成果目標としています。
  同ネットワークは、厚生労働省・医薬基盤研究所、文部科学省・理化学研究所、経済産業省・産業総合研究所の3省・3独法連携で、医薬基盤研究所の創薬支援戦略室がネットワークの本部として機能します。
  創薬支援戦略室の特徴は、グローバル製薬企業に匹敵する国際標準の目利き能力、実用化を目指した研究戦略策定能力、失敗要因に的確に対処するリスク予測管理能力を持った創薬のエキスパートをそろえていることです。製薬大手から優れた人材を登用し、コーディネーターの7割が創薬エキスパートです。創薬に必要な多様な専門性を確保し、専門家チームによる総合支援を可能にしました。
  2013年度の創薬戦略室の事業としては、5月に創薬シーズの情報収集・評価事業を開始し、6月にはコーディネーターによる無料相談事業「創薬ナビ」を開始、7月からは優れた創薬技術の登録事業「創薬アーカイブ」を始め、9月から実際に創薬支援ネットワークによる技術支援を行う予定です。
  現在、100件を超えるシーズ評価等が実施され、関連各機関の期待の大きさを感じます。2014年度の創薬支援ネットワーク事業費の合計は94.6億円を要求し、創薬プロジェクトの推進と、支援に必要な創薬技術の高度化、人材育成などを進めていく計画です。

 

パネリスト講演3
「創薬立国」実現に向けて
日本製薬工業協会 会長 手代木 功 氏


■研究開発費は増大し、成功確率は下がる

 本日は製薬業界から見た創薬立国に向けての課題をお話しします。創薬の変遷は1900年代から始まり、最近では個別化医療、遺伝子治療、再生医療と、その技術革新は猛スピードで進んでいます。
  安全性試験の技術も進み、これまでわからなかった副作用が明らかになり、より多様な角度からの安全性やより高い有効性などを求める声が強まっています。その結果、研究開発費が増大し、新薬開発の成功確率は下がっています。
  それに対応するため、企業においてはM&Aや業務提携による研究開発費の確保、アカデミアの中にある知識・知恵を活用するための産官学連携による新薬創出力の強化、ワクチン事業や新興国市場などへの戦略的投資による新たな収益源の確保など、ビジネスモデルの多様化が進んでいます。
  企業が今後も高いリスクを抱えて革新的新薬を開発するには、高いハードルを越えた新薬に対してやはり一定以上のリワードが必要でしょう。政府には新薬創出等加算の恒久化、研究開発税制における増加型・高水準型を含めた税額控除の上乗せ措置の継続と恒久化、さらには企業版エンジェル税制、パテントボックス税制の導入などを強くお願いしているところです。法人実効税率の引き下げも必要ですが、それ以上に何かを進めた際の前向きなリワードのほうが理にかなっているだろうと考えています。
  日本版NIHや創薬支援ネットワーク、臨床研究中核病院などの整備も進んでいますが、日本において新薬を作っていく環境整備としてどのように実効性を上げていくかが問われています。

■創薬には多彩な人材が必要

 創薬活動における産官学連携では、シーズの発見から製造販売までアカデミアも製薬企業も日本全体として持っている資源を無駄のないように使っていかなければなりません。これらの力をどう合わせていくかを考える時期に来ていると思います。どうしたら実効性を上げることができるかがカギであり、われわれの課題でもあります。
  さて、創薬といっても基盤研究から特許に至るまで実に多彩な要素が必要であり、多様な人材が揃っていないと創薬はできません。これこそわが国の強みです。アカデミアも企業も自分たちにどの要素、人材が足りないのかをもっと認識することが重要だと思います。
  医師の治験への取り組みに対する現状も2013年のアンケートで見ると、日本の医師が治験業務にかかわる時間は米国や韓国に比べて非常に少なく、1週間のうち1時間以上5時間未満が8割を占めています。また、医師たちが受講した治験関連トレーニングでは、統計解析や薬事法規、生命倫理などの受講者の割合は米韓に比べて圧倒的に少ないのが実態です。こうした状況を改善しないと、いくら臨床研究中核病院を作ったところで問題は解決しないと思います。医療の仕組みと創薬の仕組みのマッチアップをもっと考えるべきです。
  創薬はさまざまな機能が複雑に連関しあう極めて高度なビジネスモデルです。日本の競争力は非常に高いと思います。しかし、創薬立国を目指すには、これをさらに進化させなければなりません。人口減少期にあってリソースも限られている中で、日本全体としてどのように効果的な仕組みを作るのか、製薬会社が将来を見据えてどのような人材をアカデミアに求めるのか、また、サイエンス的な要素、ビジネス的な要素を併せて、創薬に求められる機能は刻々と進化しており、これをどのように強化していくべきか、産官学でフランクに議論する必要があると考えています(図5)。

図5 創薬立国へ向けた課題
図5 創薬立国へ向けた課題

 

パネル・ディスカッション

◆コーディネーター
慶應義塾大学大学院 ビジネススクール(経営管理研究科)教授 中村 洋 氏
◆パネリスト
厚生労働省 医政局 経済課長 城 克文 氏
京都大学iPS細胞研究所 顧問 阿曽沼 慎司 氏
独立行政法人 医薬基盤研究所 理事/創薬支援戦略室 室長 榑林 陽一 氏
日本製薬工業協会 会長 手代木 功 氏



■大学と企業の人的交流を進め、共同研究を活性化できる仕組みを

中村 本日のご発表内容を踏まえながら、日本における創薬の実効性を高めるためにはどのような課題があるのか、そのためには何が必要なのかについて、パネリストの皆さんそれぞれから意見を聞きたいと思います。初めに、日本の新たな知的財産であるiPS細胞の創薬への応用に尽力されている阿曽沼先生にお願いします。

阿曽沼 アカデミアの立場としては、基礎研究をより充実させることが重要だと思います。そこでの課題は、基礎研究と臨床研究の間をどのようにつなぐかです。その点では、榑林先生がお話しになった創薬支援ネットワークの役割にも大いに期待していますが、さらに踏み込めば、企業が大学の敷地内に進出し、共同研究を行える仕組みをもっと活性化する必要があると思います。私ども京都大学では、企業との共同研究の拠点となるメディカルイノベーションセンターを立ち上げました。経済産業省の補助金で建物を建て、研究費は国と企業から半々で助成を受けています。この取り組みにはすでに複数の大手企業が参加しており、5年から10年の単位での共同研究を行う仕組みが動き出しています。近年は、企業の基礎研究力が多少落ちつつあるのではないかとの声も聞かれますので、大学が企業の基礎研究の部分を補っていくことが、日本全体で必要ではないかと思います。そのためにも大学と企業が密に連携し、人的交流を積極的に進め、定期的な対話を維持しながら共同研究を活性化できる仕組みを、もっと増やしていく必要があると考えています。

中村 人的交流は確かに必要だと思います。ただ、実際に何かを作り出していくためには資金も必要です。その点についてはいかがですか。

壇上のパネリスト
壇上のパネリスト

阿曽沼 日本の公の仕組みとしては、2009年に設立された官民出資のファンドである株式会社産業革新機構のような組織の整備も、解決の糸口の1つになると思います。この産業革新機構は創薬に特化しているわけではありませんが、ベンチャー企業に対する資金援助も行っています。先頃、米国のベンチャーファンドの関係者と話をする機会があったのですが、彼らはベンチャーへの投資において、100件のうち98件は失敗しても2件成功すればよいのだと懐の深い考え方を示していました。残念ながら日本では、それほどハイリスクなファンディングはなかなか難しいと思いますが、日本は日本なりの方法で、資金援助を促せるようなきめ細やかなリスクプレミアムを提示できれば、資金調達することも不可能ではないと思っています。たとえば、すでに議論が始まっている日本版NIHのような組織が整備され、医師主導の臨床研究に手厚く資金が拠出され、企業のリスク負担が軽減される仕組みが構築されれば、より円滑に基礎研究が臨床研究につながっていくのではないかと思っています。

中村 創薬支援ネットワークについては、私の想像以上に進展しているという印象があります。その取り組みの課題も含め、日本における創薬の実効性を高めるためには何が必要か、榑林先生の意見を聞かせてください。

榑林 創薬支援戦略室はまだ8~9割の完成度です。それでも世界で類を見ないほど、スケールとノウハウの両面で充実したアカデミア創薬支援の戦略組織になりつつあると自負しています。しかしその一方で、この戦略室の機能およびわれわれの目指すところが、アカデミアや各研究機関の研究者たちにまだ十分に理解されていないという現実もあります。そこで本年8月
から、全国の大学や国立教育政策研究所(国研)などの研究者を対象に説明会を開き、われわれの取り組みを皆さんに共有してもらう活動を展開しています。戦略組織としての機能を維持するだけでなく、より発展させていくためにも、研究者や製薬企業の皆さんとの情報共有をこれまで以上に発展させていくことは重要です。そのうえで、創薬のファーストランナーである大学、セカンドランナーである創薬支援ネットワーク、そしてサードランナー、アンカーとしての製薬企業というリニアモデルをしっかりと築き上げることが、中核となる創薬支援戦略室の最大かつ喫緊の課題であると考えています。

中村 創薬支援戦略室の目指すところや機能が、まだ十分に理解されていないとのことですが、良い機会ですので、アカデミアや製薬業界に説明しておきたいことがあればお話しください。

榑林 これまでの研究支援制度、創薬支援制度は、研究費を助成し、研究が終わればリポートを提出し、それに基づいて評価をするという流れで、アウトカムは多くの場合、研究成果として論文や学会発表といった形で示されることが多かったと思います。そうなる理由は、アカデミアの中で研究者がキャリアを築き、プロモーションを実現していくためには、研究成果が一番の価値判断基準になるという現状があるからだと思います。一方、われわれが提供する支援は現物支給に近く、たとえばGMPバルクが必要であればそのための必要経費を負担するといった形です。また研究の開始当初に、どのように研究を進めていったらよいのかといった、出口を見据えた戦略を立案することもサポートします。さらにプロジェクトマネジメントという観点では、私どものネットワークだけでも3独法(理化学研究所、医薬基盤研究所、産業技術総合研究所)が絡みますし、シーズを提案した研究者も絡むということで、非常に複雑な進行管理が必要になります。そうしたマネジメントについても支援します。すなわち総合支援であって、これまでの研究助成のような資金だけの支援ではないところが、創薬支援戦略室の取り組みの大きな特徴です。そのため、全国を回るキャラバン活動の中で研究者と話をしますと、「そういう支援こそ待ち望んでいた」という方が結構多い一方で、「研究費をくれないのか」とがっかりする研究者もいます。そういう状況ですので、基本的にはわれわれが目指しているものをまだ十分には理解していただけていないと考え、私たちが取り組んでいる事業の価値を誤解のないようにしっかりと説明することに力を入れています。

中村 産業界に伝えたいことはありますか。

榑林 私も30年間、製薬産業で創薬研究に携わってきた中で、アカデミアからいろいろな創薬シーズ、研究テーマを紹介してもらった経験がありますが、コラボレーションをお断りすることが多かったのが実情でした。それは多くの場合、そもそも研究の入り口から方向性が違っていたからです。そうした経験を私だけでなく、製薬企業の多くの方たちも持っているため、大学側から提案されるシーズに対して、製薬企業は初めから警戒感を示す傾向があります。そこでわれわれとしては、技術支援を通してその警戒感を払拭し、最初から信頼していただけるような創薬シーズ、研究テーマを育て上げ、紹介していこうと考えています。われわれが提示する創薬シーズは、創薬のプロが目利きをして育て上げたものであることを理解して、先入観なしに、われわれのイコールパートナーとして一緒に評価してほしい。さらに、プロジェクトを進める過程でさまざまなニーズや工夫も提案してもらい、文字通り産官学でシーズを育て上げるという形を受け入れてほしいと強く望んでおります。


■創薬立国を目指すのであればリワードが期待できる仕組みも必要

中村 それでは、製薬産業の立場から、手代木会長の意見を聞かせてください。

手代木 われわれ製薬会社のように応用研究、応用開発に軸足を置いている組織では、以前に比べ基礎研究にかける比重が少なくなっていると思います。ですから、「企業の基礎研究能力が落ちているのかもしれない」との阿曽沼先生の指摘はおそらく当たっています。ただそれは、世の必然であるかもしれません。医薬品の開発作業そのものがかなり高度化、専門化していく中で、それでも企業の研究者は有限の資源の中で戦わなければなりません。勢い、企業としては開発の出口に近いほうの研究により特化するようになります。言葉を換えれば、わが国からものを出していくためには、基礎研究の部分はアカデミアにカバーしていただき、会社側、産業側はもっと別のところに資源を投下していかなければならないのです。つまり、役割分担が必要なのだと思います。アカデミアの方たちから、HTS(high-throughputscreening)を行うという話を時々聞くことがありますが、企業側からすればHTSはわれわれのほうが熟達しています。コンパウンド・ライブラリーのバラエティーから保管状況に至るまでわれわれのほうに強みがあるだろうと思います。ただ、「それにただ乗りさせてください」という申し出を企業が断るものですから、アカデミアの方たちは「それなら自分たちでやるしかない」というわけです。そこで、何か一工夫が必要です。たとえば、エクスクルーシブであることがしっかり担保されたリレーションシップを構築したうえで、ヒット化合物やリード化合物を抽出できたときはそこから先は企業が引き継ぐということを合意できれば、企業が持っている現存のエクスパティーズを利用してもらうことは可能だと思います。一方、臨床試験という観点では、国民皆保険のもとで臨床の現場にいる先生方は本当に忙しく、その中で臨床試験に携わるだけでもかなりの負担なのに、統計学やデータマネジメント、倫理規定など、すべてを医師の方々が処理しなければならないのは非現実的だと思います。そこで、製薬業界の共同支援でも国の支援でもよいと思いますが、医学部の中に医学統計やデータマネジメント、医学倫理を教える講座を全国的に拡充する必要があります。そうした基礎的な教育を強化し、人材を増やさない限り、日本で行われる臨床試験が、『The New England Journal of Medicine』誌や『The Lancet』誌に掲載されるレベルにはなかなか届かないだろうと思います。阿曽沼先生のご指摘のように、日本で生まれたシーズをもとにアメリカで治験を行い、そこで良い結果が得られたものを日本に持って帰るということが現実に起きています。なぜそういうことが起きるのか、日本での臨床試験は時間がかかり過ぎ、適正な報酬を得られないからです。ですから、医師主導の臨床試験の枠組みを再構築する必要もあります。日本で生まれたシーズの治験を日本で行い、日本で最初に承認を取得できれば、価格のうえでも大きなプレミアムが付き、大きなインセンティブになるという仕組みが必要です。たとえば、日本のアカデミアが研究成果によってロイヤルティーを得られ、大きな報酬が期待できるようになれば、みんなこぞって積極的に創薬に取り組むのではないでしょうか。国を挙げて創薬立国を目指すのであれば、そういう枠組みを作ることです。暴論かもしれませんが、5年10年の単位で実効性を求めていくのであれば、それぐらいの新しいインセンティブを設ける必要があるのだろうと、われわれ企業としては思っています。

中村 それでは、ただいまの3人のパネリストのご発言を受けて、行政のお考えを城経済課長に聞きたいと思います。

 日本発のシーズを、日本で臨床研究をして、日本で最初に上市していくためにはより大きなプレミアムが必要との話が手代木会長からありましたが、日本で最初に承認を取得し、日本で最初に収載した製品が優遇される仕組みは、医療機器に関してはすでに導入されています。従って、医薬品についてもそういった仕組みが必要ではないかという議論はすでにされているものと思います。ただし、そうした仕組みができたからといって、すぐに世界がそれに注目し、新たな開発が日本に飛び込んでくるというところまでは考えていないかもしれません。新薬創出加算もそうでしたが、日本で思っている以上に外資の本社は緻密に吟味しますので、日本の仕組みを変えるならば、それを理解していただくための努力も必要になると思います。


■iPS細胞の創薬への応用はまずインフラ部分から始める

中村 阿曽沼先生の講演の中で、iPS細胞のアイデアそのものは日本で生まれたものだが、iPS細胞を創薬に活かそうという取り組みでは日本は少し遅れているのではないのかという指摘がありました。それは、人や資金を大量に投入するという点で、海外が先んじているためと思われますが、そうした現状の中で日本はiPS細胞の創薬への応用をどのように進めるべきと考えますか。

阿曽沼 iPS細胞の臨床応用についていえば、メディアの報道ではどうしても再生医療に傾きがちですが、体内への投入はリスクが高いので、まず体外でのiPS細胞の活用を考えるのが王道だろうと思います。たとえば、薬の開発の過程で、毒性のチェックや薬の効果判定、あるいは個々人の特性に応じた薬の探索などのスクリーニングに、iPS細胞を使うという試みが考えられます。つまり創薬のインフラとしてiPSを活用していくことがまず可能だろうと思います。ヨーロッパでは、ロシュ(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ)を中心に研究所、大学、企業が共同で、iPS細胞を活用した創薬をすでに開始しているようです。私ども京都大学のiPS細胞研究所(CiRA)が主導して研究を進めるべきなのかもしれませんが、いずれにしても、まず疾患特異的iPSを用いて疾病のメカニズムを解析し、それに対応できる薬を開発することから始めるべきだと思います。また、薬の開発過程での活用を想定すると、廉価なiPS細胞を作製する必要もあります。大量生産や省力化によってコストを下げていくことも産業化、事業化という観点では非常に大事なのではないかと思います。そういう意味では培地や細胞培養装置、あるいはそれを操作するロボットについても、企業をCiRAの中に呼び込み、共同研究を行えるスキームを構築することが理想ですが、残念ながらまだそこまでの環境は整っていません。われわれとしても、いろいろな知恵を絞っていかなければならないと思っています。

中村 安価に、しかも大量に作ることができれば、創薬の幅も広がりますし、日本の技術力をより活かせるようになりますね。


■製薬業界が見落としている画期的なシーズを集めてほしい

中村 榑林先生にお聞きします。製薬産業は低分子化合物の時代からバイオ医薬品に、ブロックバスター志向からアンメット・メディカル・ニーズへと創薬の方向性が変わりつつあるように思います。そのように創薬のパラダイムが変化していく中で、新たに必要になる知見、知識、あるいはノウハウを、創薬ネットワークで支援できるのでしょうか。

榑林 創薬ネットワークでは、低分子化合物や天然物といったこれまで日本が強みを発揮してきた領域のエキスパートだけでなく、バイオにも通じた人材を複数名採用しております。また、核酸医薬などの研究者も一流の方を採用することになっています。今後の製薬業界のニーズにおおむね応えられるような、多様性を持った組織が作り上げられていると考えてください。ただ創薬支援ネットワークと非常に類似した事業を米国NIHはかなり以前から始めており、そういう意味ではわれわれは後を追いかける部分もあります。制度的にも諸外国に学ばなければならないことはまだありますので、海外にもネットワークを広げ、良いものはどんどん採り入れていこうという心構えでやっています。

中村 創薬支援ネットワークは産と学のつなぎ役を担うとのことですが、産業界としては具体的にどのようなことを創薬支援ネットワークに期待しますか。手代木会長、お願いします。

手代木 私どもが創薬支援ネットワークに期待をしていることの1つは、われわれ製薬業界が見落としている優れたアイデアや画期的なシーズを集めてほしいということです。われわれも一所懸命目配りをしているつもりですが、それでも見逃している知的財産があるのだろうと思います。「やはりわれわれには見る目がなかった」と思えるような、優れたシーズを創薬支援ネットワークで抽出していただければ、わが国にとっても大きなメリットになります。基礎研究とわれわれとのマッチアップの仕組みは、すでに東京や大阪をはじめ、全国にあります。それらはいわゆるバイオクラスター的な機能で、これまでもそうした機能を介して、かなりさまざまなマッチアップの取り組みが日本全国ばらばらに、少しずつ行われてきました。ただ、わが国のバイオクラスターの規模は欧米のそれと比べると非常に小さいため、今後は、マッチアップの場も全国を1つにまとめるぐらいの仕組みをぜひ考えてほしいと思います。創薬支援ネットワークがシーズを集め、そこに企業が集まって一緒に検討できれば、とても効率的に創薬に取り組めるのではないかと思います。



■産官学の連携の進化が日本の創薬力を高める

中村 それでは最後に、本日のパネリストの先生方と城経済課長に、ご意見の補足やディスカッションの感想など一言ずつお願いしたいと思います。

手代木 今までとは明らかに流れが変わってきており、日本発の医薬品を作っていこうという機運が産官学の間で盛り上がっているのは間違いないと思います。そこからさらに1歩踏み込み、真の実績、実効性をどのように上げていくかが次の課題です。本日の議論を通して、われわれが腹を据えて日本発の医薬品にこだわること、誰が作るかではなくて、日本で作るということにこだわるという心構えが今こそ必要だと、改めて考えさせられました。

榑林 私ども創薬支援ネットワーク創薬支援戦略室は、産官学の連携をより進化させることを目指していますが、それは国が目指すものでもあります。それが成功するかどうかは、やはり産官学の皆さん自身の理解と支援にかかっています。本日ご出席の皆さん、またその周囲の皆さんに、ぜひその点をお願いしたいと思っています。

阿曽沼 大学には基礎研究にしっかり専念してもらうことを前提に、そこで生まれた技術や成果を融合できるような環境を構築することが1つ目の課題だと思います。2つ目は、臨床研究を充実させることです。特に、基礎研究を担う大学医学部に隣接する大学附属病院には、臨床研究をしっかり行ってほしいと思います。3つ目は製薬企業の皆さんへのお願いです。日本の臨床研究、臨床試験で開発した日本発の医薬品を、PMDAの承認を取得するだけでなく、FDAやEMAの承認も取得して、海外でも製造販売できるような事業化プランを具体的に考えてほしいと思います。

 創薬関連の助成金は3省で拠出しておりますので、3省の連携を密に取るよう努めていきたいと思います。行政として助成以外に行うべきことは、創薬のイノベーションに対する評価です。それは上市に際しての薬価も含め、単に製品の良し悪しを判定するという意味ではなく、それがいかに良い製品であるのかということを適切に評価し、世に送り出すための支援を考えていくことです。そうした役割を求められていることを、本日改めて感じました。

中村 日本で抽出したシーズ、日本で開発した医薬品を日本から出していくことが何よりも大切なことで、まさにそれが日本の創薬力を高めることになると思っています。また、それを実現するためには人材と資金が非常に重要になりますが、どちらも限りがあることを踏まえれば、産官学で知恵を絞っていくことがより重要になります。本日の講演と討論を通じて、産官学で日本の創薬力を高めていこうという機運が、非常に盛り上がってきているように感じました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

(広報委員会)

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