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「第23回製薬協 政策セミナー」を開催
今、医薬品の価値を問う

2011年12月、東京コンファレンスセンター品川において、「第23回製薬協 政策セミナー」が開催されました。今回は「今、医薬品の価値を問う」のテーマで開催され、患者団体、政治家、行政、医療関係者、メディア関係者、会員各社などから、300名を超える参加者があり、熱心に耳を傾けました。

2011/12/28

基調講演

伍藤理事長の開会挨拶に続いて、基調講演として学習院大学経済学部教授 遠藤久夫氏より「医療のイノベーションと医療保険制度」をテーマとして講演が行われました。遠藤氏の講演要旨は次の通りです。
医療費負担の問題では、厚生労働省の長期推計によると2025年には医療費が57%増えます。また、高齢者も増えるので公費も現在の36.1%から2025年には40.5%に高まる見通しです。さらに財政負担が大きくなるとき、公的負担をどう考えるかを見ると、公的医療保険の範囲の方向性は3つのモデルが想定されます。

  1. 「大きな政府型」で、公的医療保険は維持して、増加する医療費は増税や保険料引き上げで対応する。
  2. 「小さな政府型」で、公的医療保険の範囲を縮小して、不足分は民間保険などで代替させる。
  3. 公的医療保険の枠組みは原則変更せず、効率化を進めることにより医療費の増加をできるだけ抑制する。

次に医薬品のイノベーションと医療保険制度の関係について述べたいと思います。具体的には、医薬品が開発されるまでの段階(サプライサイド)と医薬品が販売された以降(デマンドサイド)の展開が想定され、私たちの身近で影響を受ける公的制度としては医療保険制度(価格)や診療報酬制度が挙げられます。
製薬企業に対しての影響は「追い風」と「向い風」があります。「追い風」としては、ドラッグ・ラグの解消とライフイノベーションです。一方「向い風」としては、医療費の増加を抑制していることと後発品の推進、後発品のある新薬の薬価引き下げ、診療報酬の包括化の拡大です。
新薬創出加算によりドラッグ・ラグの短縮を図ることが可能になりましたが、開発努力と加算が一致しないことと、必ずしも革新性が高い製品の価格が維持される保障はないことなどの課題もあります。重要なのは、薬剤費と医療費の割合が増えているのかどうかであり、包括払い制度※1が拡大しているので、この比率の真の値がわからなくなっています。
厚生労働省の推計によると、包括病棟※2における包括部分の薬剤費の推計は合計約8,900億円で、薬剤費比率は23.6%(推計値)となっています。
まとめとして、以下の4点が挙げられ、医薬品のイノベーションと薬価基準制度は、以下について検討するべきと考えています。

  1. 医薬品産業の振興策としての薬価政策は非効率である。
  2. 薬剤費比率は一定とすべきである。
  3. 財政的観点から、メリハリの付いた薬価制度にすべきである。
  4. 費用対効果に着目する。


会場風景

各パネリストによるプレゼンテーション

基調講演に続いて、医薬品の価値に関係するさまざまな立場のパネリストから現状認識と意見交換が行われました。
最初に、がん研究会有明病院副院長 門田守人氏から、「がん治療に求められるもの」について説明がありました。がん治療は5年生存率が上がってきており、日本のがん治療は海外に比べ劣るようなことはなく、外科の進歩とともに新しい薬の開発によって大きく延命治療ができるようになりました。しかし、高額の抗がん剤で生存率が伸びたことをどう考えるかが課題であり、治療費用の増大に対し、医療を行う側、受ける側、そして製薬企業、行政も含め皆で考えていく必要があります、と述べました。
厚生労働省大臣官房審議官 唐澤 剛氏からは、「革新的医薬品の創出にむけて」について説明がありました。ドラッグ・ラグを解消し同時に医薬品産業を振興していく立場であり、内容全体として「ライフイノベーションによる健康大国戦略」を進めています。革新的なイノベーションが実現されれば、健康関連産業が成長産業に押し上げられることも想定され、わが国の産業の中で極めて大きな存在感を示す可能性があると考えています。ライフイノベーションの一体的な推進として388億円を要望し、日本初の革新的な医薬品・医療機器の創出によって健康長寿社会を実現していきます。また、「平成24年薬価制度改革」は現在試行的に実施されている状況ですが、評価を行い、その評価を踏まえて次回以降の取り扱いを決めていくことになります、と述べました。
続いて、製薬協 野木森雅郁副会長より「新薬創出に対する製薬産業の取り組み」について説明がありました。
製薬企業の特徴として医薬品開発はますます難しくなってきています。一定の効果・安全性を充足するレベルに達している医薬品の開発が行われてきましたが、今後はそれを上回るものを創るという難しさが出てきています。また、毎年の納税額を検証すると、電気や自動車など、日本の主力産業の売上高が大きく落ち込んだリーマンショックのときでも、製薬企業の納税額の落ち込みはわずかでした。すなわち製薬企業は安定して納税している産業であることを強調しました。
製薬産業の貢献は、第1に「人々の健康に貢献する」、第2は「科学技術発展に貢献する」、第3は「経済成長に貢献する」です。国が研究開発にどれだけ投資しているか日米を比較すると、米国は科学技術予算全体の約半分がNIH(米国国立衛生研究所)に向けられていることに対し、日本は科学技術予算の9%がライフサイエンスに向けられているのみです。さらに、製薬産業の研究開発費と対比すると米国の66%に対し日本は27%と低迷しています。製薬企業として、イノベーションに対して適切な評価、臨床試験のスタートと質の向上、新薬承認審査制度の整備・充実、知的財産の保護を働きかけていきたい。まとめとして、国民の健康の維持・向上、科学技術レベルの発展、強い日本の復活に寄与することを製薬産業の決意として述べました。

パネル・ディスカッション

その後、東京女子医科大学 渡辺俊介氏をコーディネーターとして、パネル・ディスカッションを行いました。治験体制の問題・製薬業界の抱える課題などについて活発に議論され、最後に野木森副会長より、「製薬協の集まりは研究開発をベースとした新しい薬を創っていく会社の集まりであり、良い薬を創れば社会に貢献できるという恵まれた環境にある。本業を追求することによって社会に貢献していくことをもっと貫いていく」と述べて、本セミナーの締めくくりとなりました。


パネル・ディスカッション

※1) 包括払い制度(DPC)…診療報酬の支払い方法のひとつ。実際に行った医療行為とは関係なく、たとえば特定の疾患に定額の報酬が支払われる方式である。
※2)包括病棟…DPC対象の疾病患者のいる病棟。

(文:広報委員会 政策PR部会 千葉 公)

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